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今季初勝利、ぺトコパークに祝福のメッセージ
204勝。日米通算で野茂英雄の201勝、黒田博樹の203勝を超え、日本プロ野球とメジャーリーグで投げた投手として最も多い勝ち星を積み重ねた。
パドレスのダルビッシュ有投手(38)は、7月30日(日本時間31日)のメッツ戦で7イニングを投げ、長打を許さず2安打、無失点の好投で今季初勝利。右肘の炎症で開幕から負傷者リスト(IL)入り。復帰して5登板目、チームの109試合目で手にした1勝だった。
偉大な記録はダルビッシュが長く第一線で活躍してきたからこそ成し遂げられた。メジャー14年で挙げた111勝、メジャー実働13シーズン(2015年はトミー・ジョン手術を受け、リハビリで全休)、287登板はすべて先発でマウンドに立った。
さらにポストシーズンでの通算13登板も先発だ。日本投手として世界のトップランナーとして走り続けてきた。一方で後輩選手たち、日本球界の成長と発展を願ってきた。
「若い選手たちにどういうときでも何か困ったときとか、何か(自分がアドバイスなどをして)戦力になれるようにとずっと思っています。みんな(後輩たちのことを)見ていますし、ずっと成功してほしいとは思っている」。
「ただ、言えるのはやっぱり、みんなすごいので、今の選手たちは。自分が一番良かったときよりも、若い選手たちの方が上だなって、思うことも多々あるので、そこが本当に刺激になっています」
ダルビッシュは常に日本選手をチェックしている。チームメートでロッカーが隣の松井裕樹(29)の登板のみならず、他球団の日本選手の映像を見ている。それはライバルとして研究する、という側面もあるが、それよりもダルビッシュ自身が後輩たちの調子、現状を気にかけているから。
チームの垣根を越えて、求められれば自らの考え、経験から助言を送ることができるように努めている。それが可能なのは、ダルビッシュが抱く理想と現実を直視し、己の現在地を理解しているから。若かいころに理想を求め、ベストを追求したからこそ、8月16日に39歳を迎えるベテランは、メジャーの中で『自分がどこにいるか』を分かっている。
8月1日カージナルス戦前、日米通算204勝セレモニー
「(目指した投手像には)全然なってないですね。やっぱり、僕が求めたのは完璧なピッチャーですし、そう考えると、やっぱり見ていても自分より速い球を投げるピッチャーは一杯いますし、自分よりコントロールのいいピッチャーも一杯います」。
「いろんな球種を投げられるのは(自分の)強みではありましたけど、1個1個の球種を取ったときに、僕よりすごいピッチャーは一杯いるので、まだ(自らの理想には)程遠いですね」
現役である限り、日々向上を目指している。ただ、ダルビッシュのように一流であり続けても、世界の才能が集まるメジャーリーグの「すごさ」は身に沁みて実感してきた。ハイレベルな投手にどう対抗するか。勝つために技を磨き、工夫をこらす。それが1人の投手としての生きがいや、充実感にもつながる。
「でも、同時に『もう無理だよ』と思うこともあります。あまりにもみんなすごいですからね、あの人たちは。でも、その狭間(はざま)にいるって感じですね」
今、持っている技術、打者との駆け引き、相手の分析。あらゆる手を尽くして、マウンドに臨む。
文/写真:山田結軌(MLBジャーナリスト)
山田 結軌
1983年3月生まれ、新潟県出身。立教大時代にJ SPORTSの野球班でプロ野球中継の現場でスコアブックを書くアルバイトを経験した。サンケイスポーツに2007年4月入社、阪神、広島、楽天などを担当し、2016年2月より大学時代から夢みたMLB取材を続けている。2025年2月に18年間務めたサンケイスポーツを退社しフリーに転身。
X(旧:Twitter)
@YamadaMLB
Instagram
yukiyamada_mlb
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