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細川成也(ドラゴンズ)
夏の高校野球地方大会が各地で始まっている。読者の中には自分の母校や推し選手の母校の結果が気になる方もいるかもしれない。かく言う筆者も母校の結果に一喜一憂し、近所の球場へ足を運んだりしている。
井上一樹監督率いる中日ドラゴンズは若いチームゆえ、毎試合が高校野球のような「全員野球」で対戦相手に挑んでいる。本稿では全員野球で挑んだ7月2週目の振り返り、ならびに次週の展望を綴っていきたい。
◆先週は大ダメージの負けから4連勝
まずは先週の振り返りから。前半は東北で巨人、後半は本拠地で広島と戦った。
・7月8日(火):●4-5x 巨人
・7月9日(水):◯3-2 巨人
山形で行われた巨人との第1戦は金丸夢斗が先発。7度目の「初勝利チャレンジ」となったドラ1左腕は、7回2失点の力投を披露。すると、8回表に上林誠知の勝ち越しソロが飛び出し、勝利投手の権利が舞い込んできた。
村松開人の犠飛でリードを2点に広げた9回裏、マウンドには清水達也が上がる。ここまではチャレンジ成功の道筋ができていた。だが、簡単にはうまくいかず、1死から4連打を喰らって逆転サヨナラ負け。金丸の初勝利はまたも次回以降に持ち越された。
チームもファンも大きなダメージを負ったまま、翌日は福島・あづま球場に移しての第2戦。この日は序盤から相手にリードを奪われ、8回まで0-2のビハインド。9回表は、昨季までチームメイトだったライデル・マルティネスを向こうに回しての攻撃だった。
連敗は不可避か――。誰もが覚悟していたが、ここで竜ナインが奮起する。1死から岡林勇希と辻本倫太郎が連打。上林は三振に倒れるも、4番の細川成也が逆転3ラン!
R・マルティネスの決め球・スプリットを捉えた打球は青く染まったレフトスタンドに飛び込んだ。ドラゴンズファンは狂喜乱舞、ベンチも「すげえ!」と大興奮の一撃だった。そして、9回裏は清水が前夜のリベンジを果たし、無失点リリーフ。伊藤茉央が移籍後初勝利をマークしている。
・7月11日(金):◯2-1 広島
・7月12日(土):◯7-1 広島
・7月13日(土):◯3-2 広島
本拠地に戻っても、福島での激勝からの流れは続いていた。広島をスイープし、連勝を「4」まで伸ばしている。
金曜の第1戦は5回にジェイソン・ボスラーのソロで先制。その後、追いつかれるも、7回に代打・板山祐太郎の適時打で勝ち越し。そのままリードを守り切った。投げては先発のカイル・マラーが勝ち星こそつかなかったものの、7回途中1失点の好投。2番手の齋藤綱記が今季初勝利をつかんでいる。
土曜の第2戦は大野雄大が先発。前回登板は足がつった関係で、あと2アウトで完投を逃すも、今回は見事に9回を投げきり、1失点完投勝利を果たした。大野が完投を記録するのは2022年以来、3シーズンぶり。かつての沢村賞左腕が意地を見せ続けている。
なお、この日は打線も好調で、初回に2本の適時打と内野ゴロで3点を先制。2回にはブライト健太の適時三塁打、3回には石伊雄太の適時打が飛び出し、序盤で試合の主導権をガッチリと握った。
日曜の第3戦は、初回にブライトと細川の適時打で2点を先制するも、後が続かず。6回に追いつかれて、そのまま延長にもつれ込んだ。
決着がついたのは10回裏。先頭の田中幹也が安打を放つと、ブライトのバスターエンドランが相手の失策を誘い、細川は申告敬遠。こうして出来上がった無死満塁の好機、ボスラーは逃さずライト前にサヨナラ打を放った。
◆4番・細川がいよいよ本領発揮
いよいよ、細川成也が本領発揮をし始めたようだ。先週は19打数8安打(打率.421)、2本塁打6打点と大当たり。紛れもなく週間MVP級の働きを見せた。
特筆すべきはもちろん、9日の逆転3ランだ。2点ビハインドの9回2死、フルカウントでR・マルティネスから本塁打を打てるバッターはどれだけいるのか。
それだけの価値がある本塁打だったし、ましてや前夜は金丸の初勝利が、直前でスルリといかれている。揺り戻しと言ってはなんだが、野球の素晴らしさと怖さを同時に味わわせてくれたのは間違いない。
広島戦でも土曜と日曜の試合で初回に適時打。最初の打席から結果を残し、4番としての責務を十分に果たしている。
今季は開幕から波に乗れず、5月上旬には右太もも裏を痛めて離脱。交流戦の終盤に復帰してからは少しずつ打撃の状態を上げていった。
筆者が「これで大丈夫だろう」と感じたのは、7月1日のビジターの横浜DeNA戦。東克樹からバックスクリーン直撃弾を放った打席だ。低めの誘い球に対して、途中まで打ちに行く形を作りつつ、最後はきっちりと見送る。そうして有利なカウントを作り、甘く入ったチェンジアップを仕留めた。
調子が悪い時はボール球を追いかけたり、低めを引っ掛けたりするシーンが散見された。この打席は悪い時の傾向から外れたため、「底は脱した」と感じたのだ。
7月は2週目終了時点で打率.359、3本塁打10打点、OPS1.137を記録。見立てが当たったかはさておき、チームの上昇には細川のバットが欠かせない。
◆球宴前最後の1週間
今週の予定は以下の通り。前半は敵地で阪神、後半は本拠地で横浜DeNAと戦う。なお、横浜DeNA戦が終わったらオールスターブレークに入る予定だ。
・7月15日(火)~17日(木):vs.阪神(甲子園球場)
・7月19日(土)~21日(祝):vs.横浜DeNA(バンテリンドームナゴヤ)
甲子園で戦うのは5月10~11日以来、約2カ月ぶり。阪神は首位を独走しており、今回の3連戦も一筋縄ではいかないだろう。それでも4連勝の勢いを持って、全力でぶつかっていきたい。
火曜の初戦は、柳裕也がおよそ3カ月ぶりの一軍復帰となる先発マウンド。打線も序盤から援護していきたい。水・木はおそらく金丸と高橋宏斗が投げると見られる。
横浜DeNAとの3連戦はぜひ勝ち越したい。というのも、現在5位の中日にとって2.5ゲーム差の3位・横浜DeNAは射程圏内であり、倒すべき相手。敵地でなかなか勝てない分、本拠地では白星を確実に拾っていきたいのだ。
先発は松葉貴大の抹消に伴い、マラーと大野に次ぐ3番手が誰になるか不透明。ベテラン・涌井秀章が上がってくると見るが、果たして。
文:加賀一輝
加賀 一輝
1988年3月6日、愛知県生まれ。2016年~23年まで『スポーツナビ』にて編集・編成を担当。在職中に五輪・パラリンピックへの派遣、『Number』『文春オンライン』等への寄稿を経験。24年より独立。スポーツに関するライティング、編集、MCなど幅広く活動する。趣味は草野球で、1週間で20イニング投げることも。Xアカウント
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