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さらなる成長が期待される岡本
プロ野球のペナントレースは折り返しを過ぎた9日、広島新人の岡本駿が出場選手登録を抹消された。チーム内で森浦、島内、栗林、中崎、ハーンといった勝ちパターンの5投手に次ぐ登板数を記録していた。
「すごくいい経験になっていますし、得るものも多い。自分でも成長を実感しています」
1勝1敗、1ホールド。個人成績にならない貢献度は、同点の延長12回の登板が4度あることからもうかがえる。初勝利も、初黒星も12回のマウンドだった。
今季チームの4引き分けのうち、敵地での2試合は岡本が"最終回"を投げたものだった。ホームの延長12回ならば味方の攻撃が残っておりサヨナラ勝利の可能性もあるが、敵地では勝利の目が消えている中での登板。打たれればサヨナラ負け、抑えても引き分けという状況での登板だ。
7月5日、東京ドームでの巨人戦ではブルペンから戦況を見つめながら、岡本は心のどこかで12回のマウンドを待っていた。
「前回、東京ドームでサヨナラを食らったので、今日は絶対に抑えてやろうと思っていました」
5月1日の東京ドームでプロ初黒星を喫した。3―3の延長12回裏。無死一塁から併殺で2死までこぎつけたが、キャベッジを2球で追い込みながら5球目を左前に運ばれ、出塁を許す。続く吉川に右翼越えのサヨナラ三塁打を浴びた。
当初は育成型とみられていた岡本だが、開幕から一軍に抜てきされた。開幕直後は怖いもの知らずで腕を振れたが、今はその「怖さ」も知った。それでも、腕を振らなければ打たれるという現実も肌で感じている。
「甘いところに投げれば一発でやられるのは毎回感じています。ミスしないように慎重に投げていますけど、全球全力でいっています」
競争激しい一軍ブルペンで生き残るためには結果を残し続けるしかない。二軍降格する前から胸に刻んで投げてきた。4月20日の阪神戦、抜けたカットボールが坂本の頭部に当たり危険球退場となる直前。6番前川に中前打を浴びた場面では、岡本が右手を伸ばして打球を止めようとした。
打たれたくない。出塁させたくない…。そんな投手としての本能が、体を突き動かした。「絶対に抑えようという気持ちで自然と動いたんです。でも、あれはケガにつながるプレーなので、次からは注意しないと」。その姿は、現役時代の黒田球団アドバイザーを思わせたが、岡本は冷静に反省の弁を口にした。
オールスターブレークを前に二軍降格となった。打たれた悔しさだけでなく、二軍で過ごす日々もまた、岡本をひと回り強くするはずだ。
文:前原淳
前原淳
カープ取材歴18年。03年に地元福岡の大学を卒業後、上京。編集プロダクションで4年間の下積みをへて、07年に広島の出版社に入社。14年12月にフリー転身。現在は日刊スポーツの契約ライターとして広島担当。日刊スポーツだけでなく、NumberWebにて「一筆入魂」を隔週連載するなど幅広いメディアに原稿を執筆するカープライター。X → @mae_junjun
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