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新たなステージを目指す矢野
開幕が近づき、開幕スタメンの輪郭が徐々に見えてきた。昨季遊撃のレギュラーに定着した矢野雅哉は、19日西武戦から最終戦となった23日ソフトバンク戦まで4戦連続で「2番・遊撃」で先発起用されている。28日の阪神との開幕戦も「2番・遊撃」でのスタメンが濃厚だ。
飛躍の1年となった昨季から今季は主力への足場を固めるシーズンとなる。攻撃面では2番打者としてつなぎの役割が求められる。また、守備面でも当然、レベルアップが求められる。
矢野は強肩や球際の強さを発揮して、レギュラー1年目の昨季にゴールデングラブ賞を受賞した。今年3月のオランダ代表との強化試合では侍ジャパンにも初選出された。侍選出が発表される前の2月には、広島の春季キャンプを視察した井端監督が矢野をこう評価していた。
「昨年の秋も候補にはずっと上がっていました。守備がいいのは当然分かっているんですけど、バッティングも粘り強くなってきた。(守備については)一番は飛んできたところを普通にアウトにしてくれればいいんですけど、それ以外のところも能力が高い。ヒットかなという当たりもアウトにしてくれるところは他の選手にないところかなとは思っています」
そう評価した中で「一番は飛んできたところを普通にアウトにしてくれればいいんですけど……」という言葉が印象に残った。現役時代、遊撃手として7度ゴールデングラブ賞を受賞するなど中日の黄金期を支えた。「守備の花形」と言われる遊撃だが、求められるのは派手さよりも堅実さだ。堅実であり、華麗さも併せ持った名手だからこそ、言葉に重みを感じた。
また、矢野を評価する一方で課題を指摘しているようにも感じられた。昨季は二塁での3失策を含め、12失策。矢野自身、感じていたことだった。
「取れる打球を捕る。守備のテーマをずっとそこに置いてやってきた。それが安定感になっていくと思う。そこは自分でも分かっている」
10年連続ゴールデングラブ賞受賞の菊池涼介がレギュラーをつかんだ13年もリーグ最多18失策を記録した。爆発的なスピードで追いつきそうにない打球に追いついたことで「E」ランプがともることもあったが、正面の打球の対処に課題があったのも事実だった。矢野の課題もまた正面の打球にあると自己分析する。
「左右の打球は奥行きが分かるので取りやすい。正面は合わせにくいので、一番難しいとは思います。(正面の打球にも)柔らかく入ればいいのに、自分自身が固まってしまう」。
自主トレ期間から正面の打球を多く打ってもらい、打球への入り方、打球の見方、バウンドの合わせ方をいろいろ試した。13年の18失策から20年には守備率10割を記録した師の下で、自分のスタイルを確立していった。
22日に全日程を終えたオープン戦は先発2試合含む11試合に出場した21年以来の無失策だった。今年は先発12試合含む15試合で残した数字。新たなステージを目指す矢野のシーズンが始まる。
文:前原淳
前原淳
カープ取材歴18年。03年に地元福岡の大学を卒業後、上京。編集プロダクションで4年間の下積みをへて、07年に広島の出版社に入社。14年12月にフリー転身。現在は日刊スポーツの契約ライターとして広島担当。日刊スポーツだけでなく、NumberWebにて「一筆入魂」を隔週連載するなど幅広いメディアに原稿を執筆するカープライター。X → @mae_junjun
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