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野球好きコラム | 広島好き
広島にとって、昨季の幕切れは悔しいものだった。9月4日まで首位を守りながら、歴史的な急失速。Bクラスとなる4位でシーズンを終えた。シーズン最終戦は野村祐輔の引退試合となり、そして4人の若手選手が一軍にデビューしたメモリアルゲームでもあった。
高卒新人として球団初めて4番を任せられた仲田侑仁と、「7番三塁」でスタメン出場した高卒2年目の内田湘大。そして野村の後を受けて4イニングを投げ、プロ初勝利を手にした滝田一希と、3番手でプロ初ホールドを挙げた高太一の両新人左腕だ。チームにとっては順位が決まって迎えた最終戦も、彼らにとっては新シーズンに向けた大きなターニングポイントとなった。
高卒1年目のシーズンを終えたばかりの仲田は1月、地元沖縄でパーソナルトレーナーを付け、ほぼ毎日トレーニングを続けてきた。プロ入り後初のオフ。羽を伸ばしたい思いをぐっと堪えて、自主トレに駆り立てたのは、あの日の歓声と高揚感だ。
4番起用され、迎えた4回の2打席目にプロ初安打も記録した。「一軍に上がれたことがモチベーションとなっています。もう1回上がりたい気持ちが強くて、オフも練習をやってきました」。一軍レベルを五感で感じられたことで、目指すべき場所が鮮明となった。
仲田の1学年上の内田も同日、「7番三塁」でスタメン出場し、3回のプロ初打席初安打を記録した。スイングスピードは昨秋キャンプメンバーの中でもトップクラスで、飛ばす力もある。
今年1月には2年連続となるカブス鈴木誠也との自主トレに臨み、打撃フォームの方向性を定めた。両足の幅を狭めて構え、無駄のない動きから振りだすことだけを意識した形で「今年は結果にこだわる」という高卒3年目のシーズンに臨む。
若き大砲候補とともに、今春一軍キャンプスタートとなったが、昨季最終戦でプロ初登板初勝利を挙げた滝田だ。昨年3月のオープン戦では登板機会もあったが、開幕一軍入りを逃した。二軍ではまずまずの結果も、制球が安定しなかった。
それでもフォームを二段モーションにして好感触をつかむと、最終戦のマウンドでは4回1失点。「入団時で言っていた通りの満員の球場で、夢が叶ったと感じた。あそこで村上さんとか、山田哲人さんと対戦できて、この球は持って行かれる。ここに投げきれば勝負できると感じられた」。4四球5三振と良くも悪くも、1年目の滝田らしさが出た初登板だった。
昨季最終戦でプロデビューした4選手の中で、高はただ1人、春季キャンプ二軍スタートとなった。昨季はオープン戦期間中の二軍降格から基礎体力強化に取り組み、7月17日以降は二軍の先発ローテーションで力を付けた。一軍デビューは中継ぎながらも、2回1安打2三振無失点。初ホールドを記録した。
「たくさんの声援を受けながら試合ができることってすごく幸せだなと感じました。(プロは)強気に行かないと通用しない舞台。1年間1軍の舞台で投げられるようにしたい」。
広陵高時代の控え投手から、大商大進学後に急成長した雑草魂を燃えたぎらせ、二軍スタートから這い上がる覚悟だ。
チームやファンが失意に陥った昨季終盤だが、チームが最後まで優勝争いやCS争いをしていたら、彼らの一軍デビューは持ち越されていたかもしれない。あの日の試合が、彼らの今季の飛躍につながれば、苦い過去も少しはプラス考えられる。
文:前原淳
前原淳
カープ取材歴18年。03年に地元福岡の大学を卒業後、上京。編集プロダクションで4年間の下積みをへて、07年に広島の出版社に入社。14年12月にフリー転身。現在は日刊スポーツの契約ライターとして広島担当。日刊スポーツだけでなく、NumberWebにて「一筆入魂」を隔週連載するなど幅広いメディアに原稿を執筆するカープライター。X → @mae_junjun
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