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ダルビッシュ有投手
年輪として重ねた経験があるからこそ、どっしりとできる。そして、確かな技術力が備わっているからこそ、焦りもない。パドレスのダルビッシュ有投手(38)が10月11日に行われるドジャースとの地区シリーズ第5戦に先発する。勝てばリーグ優勝決定シリーズ進出が決まり、負ければシーズン終了、となる大一番だ。
「今までのことはどうだとかは、覚えていないので、どうかは分からない。今までの経験がヘルプしているか分からないですけど、全然、落ち着いています」
チームの命運を託された重要な一戦を前に本当に落ち着いているのか、あるいは自らに言い聞かせるように“落ち着かせている”のかは、本人のみぞ知る。だが、苦い記憶を境にダルビッシュは、ポストシーズンの試合で好投を続けている。技術と精神のバランスが整っているからこそ、安定して好結果を導けるようになったのだろう。
2017年。7月末のトレード期限に当時、所属していたレンジャーズからドジャースにトレード移籍した。ワールドシリーズ制覇へのキーマンだった。だが、アストロズとのワールドシリーズでは第3、7戦で二回を持たずしてKO降板に追いやられていた。
「覚えてますけど、もう何年前かという話なので、今は違うユニホームを着ていますし、覚えてはいますけど特に何も考えたりは、していないです」
次のポストシーズン登板は、カブス在籍時の2020年。以降、ポストシーズンでは6先発し、3失点以上はしていない。ベテランといわれる領域になり、渡米してから13年目。多くを経験し、思いを巡らせ、考えてきて今がある。
「メンタル面としては例年よりもというか、今までとは段違いに落ち着いているのは自分の中で分かることなので、そんな感じです」
無論、落ち着きの度合いが増しているからといって、闘争心が弱まっているわけではない。第3戦では、仲間の奮闘に激しいガッツポーズを繰り返して喜んだ。2勝2敗のタイで迎える一戦は、公私ともに親交のある山本由伸投手(26)と投げ合う。
「対戦できたらすごくうれしいですし、こんな舞台で個人的にもすごく仲がいい選手なので、お互いこういう舞台でプレーできる、投げ合えるということは幸せなことだと思います」
周囲からみれば、とてつもないプレッシャーのかかるマウンドであることは、間違いない。この大一番でダルビッシュは、どう気持ちをコントロールし、どんな結果へ導くのか。
(文・山田結軌=サンケイスポーツMLB担当)
山田 結軌
1983年3月生まれ、新潟県出身。立教大時代にJ SPORTSの野球班でプロ野球中継の現場でスコアブックを書くアルバイトを経験した。サンケイスポーツには2007年4月入社。阪神、広島、楽天などを担当し、2016年2月より大学時代から夢みたMLB取材を続けている。
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