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野球 コラム 2024年9月2日

松井裕樹が四球を“激減”させたワケ

野球好きコラム by 山田 結軌
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松井裕樹投手

パドレスの松井裕樹投手(28)に注目してほしい。そして、たたえてほしい。クローザーとしてセーブを荒稼ぎしているわけではない。もちろん、先発投手で白星を量産しているわけでもない。ただ、メジャー1年目で開幕後は、けがをすることなくブルペンの一角で投げ続けている。僅差のビハインドやリードの場面。イニングまたぎなどあらゆる状況で奮闘している。

「後ろで投げているピッチャーは僕よりも数段成績がいいので、それはもう当然ですよね。そこに入っていくにはまだ実績が足りないと思う」

守護神のスアレスは29セーブを挙げ、防御率2・04、7月にマーリンズからトレード加入した左腕のスコットは防御率1・53の好成績(8月31日時点)。日本時代のように絶対的守護神や勝利の方程式に入るには“実力不足”を認識している。ただ、初めての環境で日々、順応を測りながらシーズン終盤を迎えている。チーム最多の59試合登板、防御率3.38は堂々たる成績だ。

ある数字が激減している。四球だ。現地時間9月1日の試合前時点で後半戦16試合で68打者と対戦し、与えた四球は1個だけ(前半戦は43試合170打者で23四球)。7月6日から8月27日まで17試合連続で無四球だった。

「でも、ちょこちょこ出しそうなときもあるんすけどね」

練習での“原点回帰”が好投につながっている。きっかけは、6月4日のエンゼルス戦(アナハイム)。2四球1安打3失点で1死も奪えずに降板した。

「最初やっぱり連戦を見越して遠投をやらなくなっていたんですよ。5月とかはやってなくて。それだと(試合で)いきなり全力投球のコントロールは難しい。【全力を出す】ことがうまくできなくなった」

この試合後から毎日、遠投を取り入れた。練習のキャッチボールから、全力でボールに力を伝える。春先は行っていた連投は、日本よりも長いレギュラーシーズンを見越して、練習中は“省エネ”に努めた時期もあった。だが、先を見ずに目の前の投球で最善の結果を得ることに考えをシフトした。

「やっぱり強く投げて、遠くに投げる。大きく投げる、全力で投げることを普段からやっていれば、マウンドでも『普段からやっていることの一つ』で投げられる。全力でキャッチボールしていない中でいきなりマウンドで全力で投げるボールをコントロールするのは難しい」

米国では60~70メートルの遠投をする投手は珍しい。20~40メートルほどで強い球を投げる調整法が一般的だ。ただ、松井は遠投を取り入れ、日本時代の調整法に戻ることで安定感と制球力が備わった。

ナ・リーグ西地区では、ドジャースが首位を走る。独走を止め、逆転地区優勝に望みをつなぐ。松井はブルペンでいかなる役割も務め、チームに貢献している。

MLB(メジャーリーグ)

(文・山田結軌=サンケイスポーツMLB担当)

山田結軌(やまだ・ゆうき)

山田 結軌

1983年3月生まれ、新潟県出身。立教大時代にJ SPORTSの野球班でプロ野球中継の現場でスコアブックを書くアルバイトを経験した。サンケイスポーツには2007年4月入社。阪神、広島、楽天などを担当し、2016年2月より大学時代から夢みたMLB取材を続けている。

Twitter
@YamadaSANSPO

Instagram
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