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野球 コラム 2024年8月19日

【広島好き】シーズン中のフォーム矯正&100球超投げ込み 常識にとらわれない九里亜蓮復調へ

野球好きコラム by 前原淳
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九里亜蓮

九里亜蓮

光明が差す投球のように感じられた。18日、神宮でのヤクルト戦。広島の先発九里亜蓮は6回を投げ、2回に浴びたソロによる1失点でしのいだ。7月以降では2勝目。苦しむ中で手にした勝利は、チームにとっても、九里自身にとっても大きな1勝となった。

7月以降に限れば、この登板前までの5試合で1勝3敗、防御率6.35と苦しんでいた。多彩な球種を操るスタイルを持ち味とするが、投球の軸となり、緩急差を生み出す直球の精度が投球内容を左右する。

今夏、ここまでは直球を投げ切れていないように映った。立ち上がりからかわすような投球となり、たとえ序盤はしのげても、中盤からになると組み立てに苦しむ登板もあった。

感覚のわずかなズレもあったのかもしれない。

シーズン途中にもかかわらず、九里はフォームの矯正に着手した。夏場から右腕のテイクバックをコンパクトな動きの「ショートアーム」に取り組んでいる。

大胆なフォーム変更は、シーズンオフに行うものとされる。登板機会が次から次に巡ってくる中で結果が求められるシーズン中はリスクが高い。九里も結果が悪かったわけではない。6月までの登板12試合で9試合クオリティースタート(以下QS)を達成し、防御率も2.36。それでも「これまでもそうでしたし、シーズン中でも何かにチャレンジしてもいいと思っている。いろいろやることがあるので、それを詰めていくだけ」と高みを目指した。アメリカンフットボールの球を投げたり、直径20cm程度の柔らかいボールを胴と右腕で挟んでテイクバックを取ったりと動きを染み込ませる工夫を重ねてきた。

そう簡単にうまくいくとは思っていなかったとはいえ、下半身との連動性や捻転、バランスなどの違いは投球にも影響しただろう。不安が残れば、真っすぐもストライクゾーンに投げ込めない。本来の投球ができない一因となっていたように感じる。

不甲斐ない登板が続いただけに、名誉挽回に燃えていた。3回46球で降板した11日阪神戦の翌日にはブルペンで110球投げ込み、いつもの3日前ブルペン投球も行った。

覚悟を持って臨んだ登板で、九里らしさを見せた。この日投じた全98球のうち直球系は30球あった。

■内訳
見逃しストライク 9球(1つの見逃し三振含む)
空振りストライク 1球
ファウル 6球
ボール 13球
左飛 1球

特に序盤3回まで投じた17球の直球系は12球がストライクで、ボールとなる球も浮いたり引っかけたりするのではなく、内角に投げ切るなど有効な球だった。直球の残像を残し、内角を攻めた序盤の投球があったからこそ、やや直球の精度が乱れた中盤も、変化球が生きた。新井監督も「いろいろ試行錯誤しながらやっていると思う。今日はすごくいいピッチングだった」と目を細めた。

フォームへの不安がなくなれば、持ち味も取り戻すに違いない。この日、出場選手登録が抹消され、再び登板間隔が空く。前回調整時の110球の投げ込みのように、時間を有効活用して臨む次回登板も期待したい。

文:前原淳

前原淳

前原淳

カープ取材歴18年。03年に地元福岡の大学を卒業後、上京。編集プロダクションで4年間の下積みをへて、07年に広島の出版社に入社。14年12月にフリー転身。現在は日刊スポーツの契約ライターとして広島担当。日刊スポーツだけでなく、NumberWebにて「一筆入魂」を隔週連載するなど幅広いメディアに原稿を執筆するカープライター。X → @mae_junjun

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