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野球 コラム 2024年7月9日

【広島好き】広島の代走の切り札、羽月隆太郎は新井監督、球団も認める“スペシャル”な存在

野球好きコラム by 前原淳
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羽月隆太郎

羽月隆太郎

広島にとって、7月の始まりは今季もっとも勝てなかった1週間で幕を開けた。2日からの阪神、中日との6連戦は1勝5敗に終わった。安定した戦いを続けていた広島にとって、1週間で1勝は今季最少。2位巨人にゲーム差なしに迫られた。

先週1週間の唯一の白星はスペシャルな存在がたぐり寄せたものだった。

2連敗で迎えた4日阪神戦(マツダ スタジアム)は2回に逆転され、劣勢の展開だった。それでも4回、5回に1点ずつを返して追いついた。迎えた8回だ、右前打で出塁した先頭打者の小園に代わり、羽月隆太郎が代走として出場した。

坂倉の打席では初球を外角に外され、直後には3球続けてけん制球を受けた。“走らせてなるものか”という阪神バッテリーの警戒心の高さが感じられた。1死後、野間への初球前にも再びけん制されながら、直後にスタート。遊撃のタッチをかいくぐり、得点圏に進んだ。

それだけではない。野間が四球を選んで1死一、二塁となると、阪神が石井にスイッチ。その代わり端にスタートを切り、三塁まで奪った。局面が変わった2死満塁では、捕手の手前でワンバウンドする球を阪神梅野が後逸した瞬間、判断良く本塁に駆け出すと、最後はみたび頭から滑り込んだ。羽月が両手でホームに触れた1点が、決勝点となった。

新井監督は「こちらの期待に100%応えてくれました。本当に素晴らしい走塁だったと思います。少しでも迷いがあったらホームには帰れてなかった。本当に素晴らしい、勇気のある走塁だったと思います」とたたえた。

求められる役割をまっとうした羽月は「警戒されている中で行くのは不利なことなんですけど、そこで行ってこそ“切り札”と言えると思うので、恐れずに行った」と胸を張った。試合後、ユニホームは土で真っ黒になっただけでなく、一部が破れていた。

新井体制となった昨季、代走の切り札として地位を確立した。シーズンではリーグ4位の14盗塁を記録し、CSファーストステージでは初戦に試合の流れを変える三盗でファイナル進出に貢献した。新井監督からの信頼だけではない。オフの契約更改交渉では、球団から“スペシャル査定”を勝ち取った。

最新試合のハイライト映像

中日 vs.広島|プロ野球2024公式戦(7月7日)

好走塁や得点など、これまでも代走に与えられる査定もちろんあった。だが、相手の警戒心が高い中での盗塁や勝敗を左右する局面での走塁の価値を再評価してもらった。それが昨季通して働きの評価であり、切り札として認められた証しでもある。

6日中日戦では1点ビハインドの9回に三塁後方へのファウルフライで三塁からタッチアップを狙ったが、憤死した。中日福永の後方へのスライディングキャッチから無駄のない動き、走者に当たるリスクもある中での好返球に生還を阻まれたものの果敢な走塁だったと言える。試合後、新井監督の「よくトライした」の言葉にも込められている。

9日から始まる1週間(巨人2連戦、ヤクルト3連戦)はいずれもマツダスタジアム。今季も21勝14敗3分け、勝率.600はリーグトップと本拠地で強さを発揮する。先週も1勝5敗とはいえ、先発投手は試合をつくり、接戦に持ち込めている。接戦でこそ、ベンチに控えるスペシャルなカードも威力を発揮する。

文:前原淳

前原淳

前原淳

カープ取材歴18年。03年に地元福岡の大学を卒業後、上京。編集プロダクションで4年間の下積みをへて、07年に広島の出版社に入社。14年12月にフリー転身。現在は日刊スポーツの契約ライターとして広島担当。日刊スポーツだけでなく、NumberWebにて「一筆入魂」を隔週連載するなど幅広いメディアに原稿を執筆するカープライター。X → @mae_junjun

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