MOBYのMLB取材ノート 「ベースボール・イン・ザ・UK〜リバプールでベースボール」

〜みんなが勝者だった昨年のWBC〜

　

史上初の韓国・ソウルで公式戦が開催され、2024年シーズンが開幕したMLB。昨年3月に開催されたWBC出場を経て、ソウルでデビューを飾った山本由伸投手(ドジャース)や松井裕樹投手(パドレス)、そしてデビューを控える今永昇太投手(カブス)といった今季からMLBでプレーする日本出身選手たちの活躍は非常に楽しみですよね。また、そのWBCの舞台となったマイアミ・マーリンズの本拠地ローンデポ・パークでは、今シーズンから特別なエリアのチケットを買えば何と楽器の持込が毎試合OKになりました。トランペットやフルートなどの管楽器、コンガやスネアドラム、タンバリンといった打楽器系、そしてアコーディオンもOK。これは中南米の出場チームを応援したファンによる楽器応援が好評だったことを受け、マーリンズはその多様性注目したからでしょう。日本代表が準決勝で対戦したメキシコ代表のベンジー・ギル監督が試合後に語った「野球界の勝利」は、こういった細部にまで及んでいるのでは、と実感する事例だと思います。但しエアホーンやカウベル、ブブゼラといったノイズになりかねない楽器は禁止だそう。

さて前回のWBCでは、本戦に出場したヨーロッパ諸国の活躍も話題になりました。東京ラウンドで話題沸騰になったチェコ、長年ヨーロッパ最強と謳われ続けたオランダを破って予選を勝ち上がり準々決勝に進出したイタリア、そして本戦で初勝利を挙げ、次大会のシード権を勝ち取ったイギリス。私MOBY、実は1月中旬から7週間ほど、語学留学でそのイギリスに滞在しまして、滞在期間中に触れた、イギリスに於けるベースボール事情を2回に渡ってご紹介出来ればと思います。

〜リバプールに野球チームがあった！〜

今年が年男、48歳になる私MOBY。所属しているバンドは来年が結成30周年の記念イヤー、休んでいる暇はありません。50歳になる前に何とか語学留学に行ってみたいということで、チャンスは今年。海外で生活してみたい、英語のスキルを上げてMLB解説などに活かしたい、とボンヤリ描いていた希望を、今年1月から7週間ほど実現させることが出来ました。ただMLBはシーズンオフ、またアメリカは物価が総じて高い。色々調べた結果、ボクが子供の頃から大好きなザ・ビートルズが生まれた街、リバプールを選びました。

その話を友人・知人に話していたところ、チェコ・リーグ初の日本人選手、前回WBCではチェコ代表のスタッフとして参加していた田久保賢植さんから「リバプールに“Trojans”という野球チームがありますよ！」という驚くべき情報が……！早速ホームページを検索して調べたところ、どうやらボクが滞在する期間、毎週日曜午前中に練習があり、体験入部も可能とのこと。早速申し込み、全く持っていく予定のなかったグラブをスーツケースの中に放り込み、練習会に参加してきました。

1月20日(日)、午前9時からということで、どんな状況で始まるか判らないので、普段東京で週1回のペースでプレーしている草野球の試合時と同じく、ストレッチを45分ほど入念に行ってから、練習が行われる場所には開始30分前に到着。今日は室内運動場で練習するとのことだったけど、そこには日本の河川敷にある野球場のような牧歌的な風景が……！ちゃんと野球場がある！但しそこには誰もいない……。一番乗りなのか、あるいは開催されないのか……と途方に暮れていたところ、間もなく参加者が続々とやって来て、開始時間になる頃には道具の入ったリュックやバッグを背負い、色んなチームのキャップやジャージを身に纏った、男女あわせて50～60人くらいが集まっていました。正直、リバプールにベースボールを愛する人がこんなにいたのか、とちょっと感動しました……。

　

初心者組、経験者組の二手に分かれ練習開始。ボクは経験者組に振り分けられ、ウォーミングアップ、キャッチボールを数種類、塁間投球、ノック、ペッパー2種類、またノック。基本的にはフットサルなどで使う室内練習場のためバッティングが出来ないので、守備に徹底した2時間でした。経験者の中でもビギナー、そしてチームのレギュラーも混ざって練習していて、個人差はかなりありました。ボクはその真ん中くらいだったでしょうか。参加者のルーツも様々で、中南米系の選手たちはバネがあり、中東や南アジア系の選手も多く、男性だけではなくかなり達者な女性も。

終了後はイギリスですから、やっぱりビール！イギリスらしく練習場にも立派なタップ(ビールサーバー)があり、まあみんな愉しそうに飲んでいます。一杯飲みながら他の選手やコーチ達とちょっと話をさせてもらいました。練習はもちろんリーグ戦に臨むチームのレベル向上の為でもあるけれども、同時にリバプールでのベースボールの普及活動も行っているとのこと。日本にもイギリスでは少しずつ野球の認知度が高まっていることを紹介してくれ、と託されました……！

話をしながら、ふと練習場を見ると、恐らくレギュラー組であろう選手たちが個々の練習、そしてバッテリーたちは投球練習をしていました。

これから3月までは毎週日曜に練習を行い、4月からはイギリスの野球連盟「British Baseball Federation」5部に相当する北部リーグに臨むとのこと。ライバルはやっぱりマンチェスター。そこはフットボールと同じなんですね……！

後編はロンドンで開催された、イギリスの野球指導者向け野球教室への潜入レポートをお伝えします。

文・オカモト"MOBY"タクヤ (SCOOBIE DO)