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野球教室で打撃指導する松井秀喜氏
「ホームランバッターに憧れていた。自分もホームランを打ちたいと思った」
10月29日、ニューヨーク郊外で行われた野球教室で子供たちとの質疑応答。松井秀喜氏(49)は自身の幼少期について質問されるとそう答えた。1年に複数回、開催される野球教室は引退後の2015年に設立した「NPO法人松井55ベースボールファウンデーション」の恒例行事だ。
いつもは現地の子供たちが対象で質疑応答は英語。通訳を介して行われる。しかし、今回は現地在住ながら日本人、日系人の参加者。指導中の説明、アドバイスを含めてほぼ日本語でやりとりされた一日だった。
「私が思うにやっぱり自分はホームランバッターになれると思って、それを目指そうと自分で何かをする。そういうのを見つけていくしかないのでは。人のアドバイスを自分のものにするのは、難しいですよ。ずっとそれこそ付きっきりでやっても難しい」
イベント後のメディア対応で「日本選手がもっと本塁打を打てるようになるためには」とたずね、そう返答した。己が、強く信じ、そして鍛錬する。もちろん、一朝一夕に身に付く“バッティングのコツ”があるほど簡単ではない。松井氏は本塁打を多く打てる打者になる自分をイメージしながら、アマチュア時代、プロでの若かりし日を過ごした。
指導者からいわれた助言を自分が体現するのは、容易くない。重要なのは、自分なりの理解と分析だという。
「実際やってることと(言葉で)表現してることが違うということがある。第三者的な目で見るとあるんですよ。自分の感覚を(言葉で)表現してそのまま(聞く側が)受け取るのは、また難しいんですよ」
だからこそ、自分の力で何かを“つかむ”ことが必要なのかもしれない。助言を自分なりに噛み砕き、理解する。そして、体の動きに落とし込む。その繰り返しで「自分の何か自信を持てる部分は出てくるんじゃないですか。それは自分自身で作っていくしかない」と語る。もちろん、多くの選手はそうした努力をしているだろうが、松井氏のいう「自信を持てる部分」を自ら「見つける」ということは、野球人生を通して追及する究極の技術なのだろう。
メジャーでシーズン30本塁打以上した日本選手は、2009年の松井氏(当時ヤンキース)と2021、22、23年のエンゼルス・大谷翔平投手(29)の2人だけ。松井氏のメジャー通算175本塁打は、日本選手としてのトップで大谷は171本と続く。松井氏はメジャーに挑戦した日本人長距離打者の先駆者であり“後継者”の出現を心待ちにしている。
(文・山田結軌=サンケイスポーツMLB担当)
山田 結軌
1983年3月生まれ、新潟県出身。立教大時代にJ SPORTSの野球班でプロ野球中継の現場でスコアブックを書くアルバイトを経験した。サンケイスポーツには2007年4月入社。阪神、広島、楽天などを担当し、2016年2月より大学時代から夢みたMLB取材を続けている。
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