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678日ぶりの勝利投手になったツインズ前田健太
「野手も悪い言葉が、いっぱい飛び交っていました」
苦笑いしながら、ツインズの前田健太投手(35)は重要シーンを振り返った。少し荒っぽいワードで鼓舞し、一体感が高まっていた。その場面とは。
6月23日(日本時間24日)、デトロイトでのタイガース戦、3点リードの五回2死一、二塁。右上腕の張りから58日ぶりの先発、しかもトミー・ジョン手術後の初勝利がかかっていた。あとアウト1つで勝利投手の権利。マエケンは、退場したバルデリ監督に代わり、監督代行を務めるティングラー・ベンチコーチの交代指示に「NO」と突きつけ、それに追随するように集まった内野手は続投を促すように「悪い言葉」でたたみかけ、加勢してくれた。
「(コーチからは)このバッター(の抑え方を)分かってんのか?100%抑える対策(を理解しているか)。それは、もう100%だって(言った)。本当に申し訳ないですけど、監督(代行)の胸を突き返したんで。監督(代行)も行こう(続投させる)みたいな感じになった」
メジャーでは通常、監督がマウンドを訪れた場合はそのほとんどで投手交代が行われる。しかし、このときは前田とナインの気持ちにチームが“折れた”珍しいシーンだ。1番・マッキンストリーを外角に鋭く沈むチェンジアップで空振り三振。捕手・バスケスと前田は、シンクロするように渾身のガッツポーズを決めた。
「一つ勝ちたい強い思いと先発ピッチャーとしては長いイニングを投げなくちゃいけない。ああいう場面は代わりたくない、投げ切りたい思いが強かった。何としても勝ちたい思いはあったのであそこは、強く意見を言わせてもらいました。続投させてもらったからには絶対、抑えないといけないと気合が入った」
異例の交代拒否でプレッシャーもかかったが、見事に封じた。5イニングで3安打無失点。678日ぶりの勝利投手になった。さぞかし感情的になったか、と聞くと…。
「会見で泣いてみようとか思ったんですけど。ただの1勝じゃ泣けなかったですよね。でも、けっこう想像したりするんすけどね、勝ったらどれだけうれしいかな、とか」
ウイニングボールを手にし、試合後のクラブハウスでは勝利試合に投手と打者でそれぞれ選出されるMVPに選ばれた。チームメートへの感謝、捕手のバスケスへの感謝を伝えると拍手が巻き起こった。
「勝てたことはすごくうれしいですし、これも一つステップアップというか、本来の自分に戻るために必要な勝利だった。1勝できたことは気持ち的に大きい」
大きな目標に掲げる日米通算200勝。これで157勝(MLB60勝、NPB97勝)だ。
(文・山田結軌=サンケイスポーツMLB担当)
山田 結軌
1983年3月生まれ、新潟県出身。立教大時代にJ SPORTSの野球班でプロ野球中継の現場でスコアブックを書くアルバイトを経験した。サンケイスポーツに2007年4月入社、阪神、広島、楽天などを担当し、2016年2月より大学時代から夢みたMLB取材を続けている。2025年2月に18年間務めたサンケイスポーツを退社しフリーに転身。
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