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鈴木誠也は練習後に打撃フォームの動画をチェックしている
その背中を追いかけ、高みを目指してきた。カブスの鈴木誠也外野手(28)は6月6日からアナハイムでのエンゼルス戦でマイク・トラウト外野手(31)と初めて対面を果たし、あいさつを交わした。広島東洋カープ時代に黒田博樹氏から、その存在を伝えられた。右打ちの外野手、走攻守のバランスがとれたメジャーナンバーワンのスラッガー。「全部そろっている選手を昔からずっと目指してきていた。黒田(博樹)さんからこういう選手がいるよって教えてもらって、そこからずっとプレーを見ながら、体もそうですし、トレーニングとかもいろんなことを含めて、ああいう選手になりたいと思ってやってきている」と明かした。
広島在籍時、スマートフォンの待ち受け画面はユニホーム姿のトラウトが映されたものだった。背番号27の姿が、駆け出す瞬間を捉えたカット。その後ろ姿、写真越しでも伝わるオーラに憧れ「この背中になりたいと思った」とウエートトレーニングへの取り組みをより一層、強化した。スピードとパワーを兼ね備えたプレースタイル。コンパクトにみえても力強いスイングには、メジャーで成績を残すエッセンスが詰まっていた。
しかし、6月のトラウトは月間打率が1割台に沈むなどやや打撃不振で調子が上がらない日々が続いていた。通常なら屋外での打撃練習はしないが、早出で特打を行っていた。スーパースターが懸命にバットを振る姿をみて、誠也なりに感じるものがあったという。
「同じ人間なんだなと思いました。調子が悪い日もあれば、いまは、成績的にはたぶん、そんなに良くないと思うので、あのぐらいの選手でも苦しんで早出の練習する姿を見ると、僕ももっと頑張らないと、とも思います」
昨年、3月のカブス入団会見。米メディアから「背番号27を選んだのはなぜですか?」と聞かれた。すると、誠也は自らマイクを手繰り寄せ「マイク・トラウト、アイラブユー」と“告白”した。それだけに打撃論、野球論を語りたい気持ちもあっただろう。しかし「いろいろ聞きたかったんですけど。それどころじゃなかったですね。人見知りなんで、あんまり話せない」と緊張の時間は一瞬で過ぎ去ったようだ。
シリーズ最終戦、8日にはサイン入りバットが届いた。トラウト自ら「せいや」とひらがなで宛名を書いてくれた1本。「ALMVP×3」とア・リーグMVP3度獲得というタイトル記録も添えられていた。さらに「Big Fan,All the Best(=俺も君の大ファンだよ、成功を願っている)」とうれしいメッセージも書き加えられていた。
「あそこ(トラウト)に近づければ、この世界で活躍できるのは、間違いないと思いますし、あそこを目指して、越せるようにやれれば、良い活躍がこの舞台でもできるのかなと思いますね」
憧れのスーパースターは戦う相手に変わった。リーグが違うため、交流戦は1年に1カードのみ。かりに2度目があるとすれば、それはワールドシリーズということだ。
(文・山田結軌=サンケイスポーツMLB担当)
山田 結軌
1983年3月生まれ、新潟県出身。立教大時代にJ SPORTSの野球班でプロ野球中継の現場でスコアブックを書くアルバイトを経験した。サンケイスポーツに2007年4月入社、阪神、広島、楽天などを担当し、2016年2月より大学時代から夢みたMLB取材を続けている。2025年2月に18年間務めたサンケイスポーツを退社しフリーに転身。
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