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野球 コラム 2023年6月5日

WBC優勝の歓喜をもう一度。栗山英樹監督が「何回見てもうるっと来る」映画『憧れを超えた侍たち 世界一への記録』の舞台裏

野球好きコラム by 松山 ようこ
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山本由伸が撮影した映画のポスターに使用されている写真

6月4日、TOHOシネマズ日比谷にて行われた映画『憧れを超えた侍たち 世界一への記録』の公開記念舞台挨拶に、侍ジャパントップチーム前監督の栗山英樹氏と、本作の撮影および監督の三木慎太郎氏が登壇。今年3月に開催された「2023 WORLD BASEBALL CLASSIC」の軌跡を収めた侍ジャパン完全密着ドキュメンタリー映画、そのみどころと裏話を明かした。

劇場やSNSなどで見た人も多いかもしれないが、本作の『顔』とも言えるポスターの写真を撮影したのは山本由伸投手(オリックス・バファローズ)。写っている景色は、日本代表ベンチから見たアメリカとの決勝戦で、あの最後のアウトの場面。「あり得ないほど出来すぎたエンディング」と語り継がれる、大谷翔平投手とマイク・トラウト選手の対戦シーンだ。2人が対峙していて、手前にはWBCのカラフルなロゴマークが映える。

メキシコとの準決勝で投げた山本投手は決勝戦での登板はない。そこで優勝の瞬間を収めるため、三木氏に託された小型カメラを手にした山本投手はこの後、ベンチのフェンスを飛び越え、チームメイトと歓喜の渦に飛び込む。その映像は、まるで観客が選手たちと一緒にグラウンドで優勝を疑似体験するかのような至高の没入感を演出する。そんな裏話を、三木氏は顔をほころばせて続ける。

「フェンスを飛び越えてるのにブレてないし、ブルペンから走ってくる宮城(大弥)選手と鶴岡(慎也)ブルペン捕手らが走ってくる画もばっちり収めてくれました」。

舞台挨拶をする栗山監督(右)と三木監督

また、同作について栗山監督は「何回見ても、うるっと来ちゃう」と感想を語り、「こんなこと言ってたんだ、あの選手があんな表情してたんだって、僕も知らない場面がたくさん見られました」と明かした。とはいえ、映画を見るまで密着カメラに対する抵抗感は大きかったという。

そこで、三木氏は適度に距離を取ったり、選手にカメラを持ってもらったり、定点カメラを活用したりと工夫を凝らしたようだ。

栗山監督は「僕は選手と真剣に向き合っている時にカメラという第三者が入ると、本音を喋れなくなってしまうんじゃないかと思ったんです。でも…、侍ジャパンのメンバーは全然大丈夫でしたね」と驚く。

栗山監督(右)と三木監督

さらに「実は『選手との神聖な空間だ』という思いがあって、(カメラがいることは)最初はすごく違和感がありました」と告白し、「応援してくれた皆さんが喜んでくれるのであるならば、こういったものをちゃんと出して、僕たちは伝えていかなきゃいけない責任があるのだと思っています」と真摯に語った。

この密着映像を撮る難しさを「ほとんど盗撮」と壇上から笑いを誘った三木氏は長年に渡って野球の映像を撮り続けてきたプロ中のプロ。あふれる野球愛から、思い入れや感情が爆発した場面は「ブレブレだった」とも吐露したが、作中では意図的かつ効果的に使っているのだろう。ここぞという場面で、その場にいるような臨場感があふれ、感動が蘇る。

ダルビッシュ有の話に聞き入る宮城大弥ら

作中どこをどう切り取っても、誰もが必死でこの大会を楽しもうと輝いている。あの時、この選手とあの選手がどこでどんな表情をしていたか、またハイタッチやハグなど交流ひとつを取っても、時々でそれぞれがまるで異なるため、見るほどに気づきが多い映画だろう。

また、関西人の三木氏らしく、笑いの要素も各所に散りばめられていて、劇場では何度となく笑いが起きていたことも印象深い。感動だけでなく自然と笑顔になる場面も満載。この映画でしか伺い知ることのできない、選手たちの知られざる側面だ。

大谷翔平と甲斐拓也

日米で一挙手一投足が伝え尽くされているようにも思える大谷も然り。例えば、試合中の様子や、ベンチから何を話しているのかまでは知る由もない。だが同作では、そんな大谷翔平の底しれぬメンタリティと野球IDの高さが垣間見られる。

それらについても栗山監督は、「それが大谷翔平なんです。能力の高さが前面に出ることが多いんですが、そうした心持ちや野球勘も抜群のものを兼ね備えているんです」と証言していた。

取材/文:松山ようこ

松山ようこ

松山 ようこ

翻訳者/ライター/インタビュアー。主にスポーツやエンタメ分野にて実績多数。野球はプロ野球からMLB、他にもマイナースポーツからオリンピック大会まで、国内外の競技場や大会での現地取材を数多く経験するスポーツ好き。アスリートはじめ、一般人から著名人まで幅広くインタビューし、日本語と英語ともに記事やコラムにする。訳書『ピッチングニンジャの投手論』『ベイダータイム』。 ※『ピッチングニンジャの投手論 PitchingNinja's analysis of Japanese MLB Aces』 ※『VADER TIME ベイダータイム: 皇帝戦士の真実

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