人気ランキング
コラム一覧
帽子を取るとそこにハチマキが…
静まり返った会見場が一気に明るくなった。チェコ共和国のパベル・ハジム監督が、会見場に入ってきて着席。おもむろにキャップを取ると、額には日の丸デザインの「必勝」と書いたハチマキが巻かれていたのだ。集まったメディア関係者らもドッと笑う。
オーストラリアとの試合に敗れ、1次ラウンド敗退が決まった直後の記者会見だが、ハジム監督は清々しい表情で語り始める。
「負けて気分は良くないですが、選手たちを誇りに思います。格上のオーストラリア相手に最後まで粘り強く戦ってくれたのですから。ハチマキは日本への感謝の気持ちです。来日してから、感謝しっぱなしです。日本のすべての人に感謝の気持ちを伝えたいです」。
なお、今大会で異次元のスーパースターぶりを発揮しているため、必ず挙がるのが大谷翔平に関する質問だ。だが、監督はこれについて熱弁しだした。
佐々木投手からデッドボールを受けたエスカラ外野手
「大谷選手はすばらしいです。でも、日本には彼だけでなくすばらしい選手が多い。試合前の会見でも話しましたが、佐々木朗希選手は昨夜の死球のお詫びにたくさんのお菓子とサインボールを持って来てくれたのです」。
「野球は戦争でもビジネスでもない。世界を救い、笑顔をもたらす力があるのです。今、ウクライナでは戦争が起きていますが、若い選手たちとで野球を通じて、こんなにもすばらしい世界があることを知らしめたいです」。
試合前も試合後も、繰り返し話したのはそれだけ監督が感動し、伝えたかったからなのだろう。思わず聞いていて目頭が熱くなった。
前回のコラムでお伝えしたチェコ代表をサポートしている田久保賢植(けんしょく)さんによると、神経科医でもあるハジム監督は、ボランティアで長年ずっと野球の指導に携わっているという。だからこそ、戦争でもビジネスでもない、つまり勝ち負けやお金ではない野球のすばらしさを純粋に訴えることができるのかもしれない。
当然それも、クオリティが伴わなければ説得力もない。だが、今大会でチェコのレベルの確かさは証明された。監督は自負して続ける。
2023 WORLD BASEBALL CLASSIC
【ハイライト動画】中国 vs. チェコ共和国
「私たちの育成プログラムが奏功して、ここまでの選手たちが出てきました。いい見本としてヨーロッパやアフリカなど世界中に発展させて、野球の振興に寄与したいと考えています」。
熱い思いそのままに、「次、また3年後のWBCに戻ってきたいと思います。その時にまた会いましょう!」とハジム監督は笑顔で会見場を後にした。
加えて伝えておきたい。ハジム監督は会見のたびに、日本への感謝を語っていたのだが、チェコと日本の交流をもっと深めたいとも明かしていた。こんなにも野球を愛しているファンはいない、すばらしい応援だったとも。
「皆さんには、チェコの野球シーズンにも来てほしいです。街も綺麗ですし、歓迎いたしますので」。
今回のWBCで、またたく間に日本中のファンを虜にしたチェコ代表。チェコの歴史ある美しい街並みと美味しいお酒や食べ物だけでなく、新たに野球観戦を目的に訪れたくなったという日本人はすでにたくさんいるのかもしれないけれども。
文/取材:松山ようこ
松山 ようこ
翻訳者/ライター/インタビュアー。主にスポーツやエンタメ分野にて実績多数。野球はプロ野球からMLB、他にもマイナースポーツからオリンピック大会まで、国内外の競技場や大会での現地取材を数多く経験するスポーツ好き。アスリートはじめ、一般人から著名人まで幅広くインタビューし、日本語と英語ともに記事やコラムにする。訳書『ピッチングニンジャの投手論』『ベイダータイム』。 ※『ピッチングニンジャの投手論 PitchingNinja's analysis of Japanese MLB Aces』 ※『VADER TIME ベイダータイム: 皇帝戦士の真実 』
あわせて読みたい
J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題
ジャンル一覧
人気ランキング(オンデマンド番組)
-
広島 vs. 東京ヤクルト(10/4) J SPORTS STADIUM2025
10月4日 午後1:25〜
-
11月24日 午後4:30〜
-
11月26日 午前11:55〜
-
11月26日 午後3:45〜
-
【限定】中日ドラゴンズ応援番組!ドラナビ(スターキャットチャンネル2025年11月29日放送分)
12月3日 午後12:00〜
-
【限定】中日ドラゴンズ応援番組!ドラナビ(スターキャットチャンネル2025年11月22日放送分)
11月26日 午後12:00〜
-
ガンバレ日本プロ野球!? リターンズ25/26 【浅村栄斗・中島宏之編】 #1
11月15日 午後8:00〜
J SPORTSで
野球を応援しよう!
