【楽天好き】2月11日は野村克也さんの命日。薫陶を受けたノムさん番による『野村克也は東北で幸せだったのか』を読んで

もともとコロナ禍の2021年に、同紙のウェブ版で『今こそノムさんの教え』として連載で配信されていたコラムが元になっていて、私も毎回楽しみに読んでいた。だが、ここから記者魂を発揮した金野さんは、タイトルの通りノムさんが「東北で幸せだったのか」を解き明かす取材を敢行。次々と驚きの新事実をつきとめて、1冊の本にまとめている。

多くがネタバレになってしまうので詳しく書けないが、腕利きテーラー菊地さんとの友情物語や、交流をして始球式に臨んだ早苗さんという難病と闘う女性の裏話、そして息子の克則さんの妻である有紀子さんから明かされた秘話は、ノムさんが野球人だけでなく1人の人間としても、敬われながらも本当に人間臭くて魅力的だったことが沁み入る。

野村門下生や楽天好きはもちろん、野球好きな人から野球にそんなに興味はないという人も、とっておきのエピソードの数々に勇気づけられ、笑ったりホロリとさせられたりするだろう。楽天ファンには日本シリーズの裏話や、ノムさん退任劇の本当の理由も明らかにされているので、「そうだったのか！」の連続かもしれない。

同書には、川崎さんはもちろん、今季キャンプ解説デビューした鉄平さん、田中将大、美馬学（現ロッテ）、則本昂大、青山浩二（楽天アカデミーコーチ）ら、現役選手や元選手がたくさん登場する。

なかでも、ノムさんが説く、「技術的限界を感じてからが本当の戦い」を体現し、金野さんが言う本書のメインメッセージでもある「人生、なんとかなる」「今を全力で生きる」を象徴していた山崎武司さんのエピソードや、ノムさんにとにかく可愛がられた新庄剛志監督（日本ハム）のエピソード、エモやんこと江本孟紀さんの弔辞、そしてサッチーこと野村沙知代さんとの愛情物語は、外から見ただけではわからない深い話だ。

余談ながら、著者の金野さんはベテラン男性記者なのだが、どこか人好きする地域猫のような、大阪のおばちゃんのような雰囲気を持っている（ごめんなさい…笑）。私と仙台の現場で会った時も、ハッと耳を立てた猫のようにすぐに気づいては「お菓子どうです？」とよく声をかけてくれた。そんな金野さんだから、ノムさんや周りの近しい人たちの知られざる側面を知ることができたのかもしれない。

文：松山ようこ