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横浜DeNAベイスターズ
12月15日に「NPB AWARDS 2021」が開催されます。すでに確定しているタイトルホルダーなどの表彰式に加えて、記者投票によるリーグMVPや新人王、ベストナインなどの発表もあるわけですが、ベイスターズファンにとって最も重要なのが新人王の行方でしょう。
今季は数々のリーグ記録や球団記録を更新した牧秀悟の受賞はなるのか。空前のハイレベルと言われる今年の新人王争いで、投手部門で新人離れの活躍をした栗林良吏(広島)との一騎打ちと予想されていますが、結果が注目されるところです。
牧が受賞すれば、球団では史上9人目の快挙となりますが、これまでの新人王はどんな選手だったのでしょうか。ここではベイスターズ球団になって以降、新人王に輝いた3人の選手を紹介していこうと思います。
3人の紹介の前に、ホエールズ球団時代の新人王受賞選手は5人。そのうちの4人は投手で、野手は1959年の桑田武のみとなっています。牧と同じ中央大学から当時の大洋ホエールズに入団した桑田は、1年目から長嶋茂雄氏の新人記録を破る31本塁打を放ち、本塁打王を獲得。ちなみにこのシーズンに記録したシーズン117安打の球団新人記録を破ったのが、153安打を放った今季の牧でした。
投手の顔ぶれを見ると、1953年に15勝12敗、防御率2.77、170奪三振で球団初の新人王となった権藤正利を筆頭に、1956年に1年目からいきなり25勝25敗、防御率2.39、266奪三振ととてつもない数字をマークし、60年の球団初となるリーグ優勝、日本一にエースとして貢献した秋山登。
1964年に17勝11敗、防御率2.76、154奪三振で受賞の後、2年目には21勝を挙げた高橋重行。1977年に8勝9敗、防御率4.40、87奪三振で新人王となり、リリーフ転向後には2度の最優秀救援投手賞に輝くなど、当時は右投手でプロ野球史上初となる100勝100セーブを記録した齊藤明雄(新人王当時は斉藤明雄)と、レジェンドクラスの選手もいます。
それではベイスターズ球団での3人の新人王は、どんな選手だったのでしょうか。内訳は投手2人、野手1人で、現在も2人の選手が現役選手として活躍しています。
◆2000年:金城龍彦 打率.346、3本塁打、36打点 首位打者も獲得
1998年のドラフト5位で社会人野球の住友金属から入団した金城龍彦は、プロ入り後にスイッチヒッターとなり、2年目の2000年に一軍定着。
驚異的なペースでヒットを積み重ね、一時は打率4割を超えて話題になるほどの打撃で、最終的にはチームメイトのR・ローズ、松井秀喜(当時巨人)、ペタジーニ(当時ヤクルト)、金本知憲(当時広島)など、錚々たる面々を抑えて首位打者に輝きました。新人王と首位打者の同時受賞はプロ野球史上初の快挙で、20世紀最後の年に現れた新星として話題になりました。
◆2015年:山崎康晃 58試合2勝4敗37セーブ、防御率1.92
2014年にドラフト1位で亜細亜大学から入団した山崎康晃は、早稲田大学の有原航平(現レンジャーズ)の外れ1位での入団という形になりましたが、1年目の成績は有原を大きく上回るものでした。
開幕直前に当時の中畑清監督から守護神に任命されると、ホーム開幕戦の広島戦でプロ初セーブを記録。その後は5月に月間10セーブのNPB新人記録(当時)を樹立するなど破竹の勢いで、9月上旬までセーブシチュエーションで失敗なしという快投を続けました。シーズン37セーブは新人最多記録で「小さな大魔神」とも呼ばれるようになりました。
◆2018年:東克樹 24試合11勝5敗、防御率2.45、155奪三振
立命館大学では関西学生野球リーグで史上初となる2度のノーヒットノーランを記録し、2017年ドラフトでは単独1位指名でベイスターズに入団した東克樹。開幕からローテ入りを果たし、セ・リーグの新人投手では唯一、規定投球回数に到達する活躍で、記者投票ではほぼ満票で新人王に選出されました。
プロ初勝利をマークした巨人戦には特に強く、新人では初となる巨人戦4戦4勝を達成するなど、防御率はリーグ2位、勝利数、奪三振数はリーグ3位でエース左腕の誕生と思われましたが、オフに左肘炎症を発症。2020年にはトミー・ジョン手術で長期離脱となり、今季は10月23日の中日戦で自身729日ぶりとなる勝利を記録しました。
球団初となる野手の新人王に輝いた桑田武氏が、牧と同じ中央大学出身というのは奇妙な因縁を感じざるを得ません。牧は安打数では桑田氏を上回りましたが、本塁打、打点は及ばず、来季以降のいい目標になるのではないでしょうか。先を行く誰かの背中、ずっと後を追いかけて、その先へ――。まずはベイスターズから、令和初となる新人王誕生に期待しましょう。
文:大久保泰伸
大久保泰伸
フリーライター、編集者。1969年広島市生まれ、現在は神奈川県在住。出版社勤務を経て、20世紀の終わり頃に独立。別冊宝島野球シリーズの執筆、編集や広島などのOBの著書の編集協力などを行い、同社のプロ野球選手名鑑は創刊時から現在まで関わる。記者活動は2009年にベースボール・タイムズ紙の広島担当でスタートし、15年から野球専門サイトのフルカウントで広島、18年からはDeNA担当も兼務した。
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