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前回大会優勝のHonda
10月のプロ野球新人選手選択会議(ドラフト会議)では、社会人野球界から15名が指名され、そのうち14名(投手8名・野手6名)は都市対抗野球大会に参加する。彼らは既に紹介した通り、高い実力や潜在能力を持つ注目選手だ。
ただし、「指名されなかった選手」の中にも、気になる顔ぶれが沢山いる。ドラフトで指名されるべき実力を持ちつつ何故か縁のない選手。プロで経験を積み社会人に戻ってきた選手、まだ入社直後で時期が来ていない選手――。今回はそんな多彩な個性を持つ9名を紹介する。
◆都市対抗で注目の投手
・片山皓心(Honda)
・鈴木大貴(TDK)
・須田幸太(JFE東日本)
・佐竹功年(トヨタ自動車)
・河野 佳(大阪ガス)
片山皓心(Honda)は桐蔭横浜大学から入社して1年目の左腕。日立一高校時代は“進学校の控え投手”で球速も120キロだったが、才能を見抜いた監督に大学野球の強豪を紹介された。桐蔭横浜大学入学後はケガやコロナ禍もあったが、4年秋に大ブレーク。
神奈川県大学野球連盟のリーグ戦では6勝1敗、防御率1.39の好成績を残すと、その後の関東大会(横浜市長杯)も3試合連続勝利と大会制覇に大きく貢献した。既にHonda入社が内定していたものの、「今からドラフトがあれば上位指名」と思わされる内容を見せていた。
抑えの効いたコンパクトなフォームだが、速球は常時で140キロ台。さらに各変化球の切れが素晴らしく、低めを突きつつ左右を投げ分ける制球力も光る。すべての要素でレベルの高い、実戦的な先発左腕だ。Hondaは昨年の第91回大会を制したため予選免除だったが、彼は入社直前のスポニチ大会からエースとして経験を重ねている。チームは11月28日(日)の第1試合に登場する。
鈴木大貴(TDK)は入社2年目の右サイドハンド。昨年の第91回大会1回戦・日本新薬戦で先発し、敗戦投手になったものの衝撃的な都市対抗デビューを飾った。上半身を後ろに引き、脇を締め、腕を身体ごと横回旋で振り切るかなりの変則フォームながら、最速は154キロ。182センチ・84キロと体格にも恵まれた本格派だ。
TDKは小木田敦也がオリックス・バファローズの6位指名を受けた一方、大卒2年目の彼は指名を受けなかった。しかし、一度見たら忘れられないフォームと快速球は、野球ファンの方に一度見て欲しい。チームは12月3日(金)の第1試合に試合が組まれている。
須田幸太はJFE東日本のクローザー。早稲田大学時代は斎藤佑樹の2年先輩で、JFE東日本を経て横浜ベイスターズ(当時)入り。プロで9年プレーした経験を持つ右腕だ。多くの投手が変化球はもちろん、ツーシーム、カットなど“動く速球”を駆使する昨今の野球界。須田は今や珍しいフォーシーム“真っ直ぐ”で打者を攻めに攻める本格派だ。
176センチ・76キロの体格は投手として平凡で、球速も140キロ前後と並。しかし「伸び」「切れ」で勝負し、ボールが打者のスイングの上を通過していく。
2019年の都市対抗は優勝の立役者となり、復帰1年目で橋戸賞(MVP)に輝いた。35歳のコーチ兼投手として迎える第92回大会でも、あの“魔球”をもう一度見たい。チームは12月2日(木)の第1試合に登場する。
東海地区2次予選を見るとボールを顔に近づける、テイクバックの小さい変則フォームの投手が妙に多い。佐竹功年(トヨタ自動車)の影響が、周辺のチームにも広がっているのだろう。それくらい彼が社会人野球で残してきたインパクト、影響力は大きい。
38歳の彼は169センチ・72キロの小さな大投手。早稲田大学ではオーソドックスな速球派として鳴らしていた。そこから徐々に制球力を磨き、フォームを工夫し、スピードは低下したものの技で打者を翻弄する投手に進化していった。
日本選手権は入社2年目の2007年に初優勝を遂げると08年、10年、14年、17年と5度の優勝を達成している。都市対抗は2016年の第87回大会がトヨタ自動車にとって初制覇。佐竹は4戦4勝、30回イニングで1失点、36三振という驚異的な成績で橋戸賞(MVP)に輝いた。2019年の第90回大会も準優勝を果たしている。
その後は栗林良吏(広島東洋カープ)、渕上佳輝といった好投手の入社もあり登板機会は減ったが、それでもここぞの勝負どころでベテランの力は生かされるだろう。チームは12月3日(金)の第3試合に登場する。
河野佳(大阪ガス)は夏の日本選手権で最高殊勲選手賞(MVP)に輝いた右腕。広陵高校時代から甲子園で150キロを記録するなど全国区だったが、社会人で“実戦派”として脱皮を遂げたように見える。
176センチ・80キロのしっかり鍛えられた体格で、140キロ台後半の速球とカットボール、スライダー、フォークを武器にする。タイプとしては広陵高校、明治大学から広島に進んだ野村祐輔と近いバランス型だ。高卒3年目の来季はドラフト指名の資格を得る、第92回大会のヒーロー候補だ。チームは12月2日(木)の第2試合に登場する。
◆都市対抗で注目の野手
・佐藤竜彦(Honda)
・度会隆輝(ENEOS)
・和田佳大(トヨタ自動車)
・中田亮二(JR東海)
佐藤竜彦(Honda)は社会人野球を代表する強打者として、真っ先に名の挙がる存在だ。昨年の第91回大会は4番・指名打者として起用され、打率5割、2本塁打、9打点と猛威をふるい優勝に貢献。4強入りした今年の日本選手権もやはり4番打者として打率.308、1本塁打、2打点と結果を出している。
182センチ・90キロの右打者で、27歳と年齢的にも油が乗っている。昨年の準決勝・セガサミー戦では180キロの打球速度を記録するなど、データを見てもそのずば抜けたスイング力は一目瞭然だ。父・真一さんは27歳でプロ入りし、40歳までプロで活躍した外野手だった。息子も打撃に関しては間違いなくプロレベルだろう。チームは大会初戦、11月28日(日)の第1試合に登場する。
ENEOSは各大学の主力、プロ入りしても不思議のない逸材が集まるチーム。度会隆輝はそんな強豪で高卒1年目からクリーンアップを任されている。183センチ・83キロの左打者で、高校時代からボールへの“コンタクト力”は天性を見せていた。木製バット、社会人のレベルにもすぐ対応し、2次予選は東芝や三菱重工Eastといった強豪を相手に打率.278を記録している。
度会も父・博文氏がヤクルトで15年に渡って活躍した往年の名選手。兄・基輝は中央学院大学4年で、先日の明治神宮大会は5番ファーストとして優勝に大きく貢献している。隆輝自身も“炎の体育会TV”出演などを通して、中学生時代から全国区だった。そんな逸材の都市対抗初登場に注目したい。チームは11月30日の第3試合に登場する。
ショートはそのチームで一番守備の上手い選手が任されるポジションだが、和田佳大(トヨタ自動車)の上手さはその中でも一段上。守備については社会人最高レベルの名手で横の動きやスムーズな送球は抜群だ。まずフィールディングに注目して欲しい。
和田は中京大学を経て入社2年目。167センチ・63キロの小兵だが、決して“守備専”タイプではない。大学時代には愛知大学野球連盟の新記録となる26試合連続安打を記録したアベレージヒッターでもある。レベルの高いトヨタ自動車打線の中では9番が定位置だが、源田壮亮(西武)も社会人時代は9番だった。チームは12月2日(木)の第3試合に登場する。
「ブーちゃん」の愛称で知られる左の強打者が中田亮二(JR東海)。明徳義塾高校、亜細亜大学と厳しい練習で知られるチームに所属しながら、175センチ・100キロ台の体格は不変だ。ただ、決して鈍重なタイプではなく、守備や走塁もしっかりこなせるアスリート。打撃も柔らかくコンパクトな打撃が光る巧打者タイプだ。
中日で5年プレーしたのち、2015年にJR東海入り。気づくと社会人生活が大学、プロより長くなった。34歳の今も、チームの頼れる4番打者として球界の一線に立っている。チームは11月30日(火)の第3試合に登場する。
大島 和人
1976年神奈川県で出生。育ちは埼玉で現在は東京都町田市に居住。早稲田大学在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れた。卒業後は損害保険会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。現在はサッカーやバスケ、アマチュア野球など多彩なボールゲームの現場に足を運んでいる。Twitter(@augustoparty)
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