【オリックス好き】その視線の先にあるもの～若月健矢～

若月健矢選手

捕手の矜持、それは投手との信頼関係。

過去3年は正捕手という立場で、シーズン100試合以上でマスクを被ってきた若月健矢。若くして“正妻”の地位を確立していたのは確かだった。しかしながら・・・、である。今季序盤は一軍に登録されていたにも関わらず、若月に出番はなかなか巡ってこなかった。ここ数年の彼の立場を考えれば、これは大いなる“異変”であった。

「正直、あんなに試合に出ないってことがなかったので、練習からどうやって試合に入っていけばいいかわからなくて・・・」と、最初は本人も戸惑いを覚えていたという。それでも、一軍のベンチに入る捕手として、若月はくるべき出番への備えを怠ることはなかった。「試合中にブルペンに行って中継ぎ投手のボールを捕ったり、調整段階の先発投手を受けたり。とにかく多くのボールを捕ることに時間を割きましたし、あとはベンチから（伏見）寅威さんや頓宮のリードを観察していました。それらのことをこなしていくうちに、新たに見えてくるものがありました」そこが今季の捕手・若月健矢のスタートラインだったと言っていい。

「固定概念というか、自分の中で凝り固まっていた考えというものが見えてきましたし、頓宮の“怖いもの知らず”のリードに感心することもしばしばでした」と言う若月。捕手としての視野は確実に広がっていったという。捕手出身の中嶋聡監督も「試合に出られなかった時の若月の取り組みをしっかり見ていました。あの時の姿勢があったからこそ、その後の彼の活躍や成長に繋がっているのだと思います」と評価する。

そんな若月が自身の変化については、こう語っている。「今年はリードする際の視点というか、観るところを変えました。これまでは相手打者に目が行きがちだったのですが、今はしっかりピッチャーをみようと・・・。実際に投げる投手を観察することで、体の状態や考え方が見えてきますし、試合前はトラックマンのデータと向き合うことによって、その投手の特徴をしっかり把握するようにしています。相手よりも“こちら側”に目を向けるようになりました」正解がないと言われる捕手のリードも、視線の先を変えることで、大きく幅も広がったようだ。