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横浜DeNAベイスターズ
世の中は完全にオリンピックモード。先週は五輪期間中に行われるエキシビジョンマッチの開幕前、試合のない1週間でした。
とは言え、仮にも『週刊』を名乗り、1週も休むことなく続けてきたこのコラム。何か書かなければ、ということで、今回は特別企画として『週刊ベイスターズいいとこどり』が選ぶ、前半戦の投打のMVPを挙げてみたいと思います。
◆投手の前半戦MVPは山崎康晃
まずは投手から。先発投手の最多が5勝の濱口遥大と、左腕王国の夢が儚く破れる中、頑張ったのがリリーフ陣だった。新型コロナウィルスの影響で外国人選手の来日が遅れた中、7月には6連投と今季もフル回転のエスコバー、ワンポイントやビハインドでの登板など、状況を問わない起用で見事復活を果たした砂田毅樹、そして忘れてはならない、開幕から苦しみながらも、クローザーの重責を黙々と果たした三嶋一輝など、候補は多い。
それでも個人的に、恐らく一般的な意見としても認められるのではないかと思うのが、プロ7年目で初めて守護神の役割以外でシーズン開幕を迎え、セットアッパーとして復活を果たした山崎康晃。彼を前半戦の投手MVPに選びたい。
昨季は0勝3敗、防御率5.68とプロ入り後、ワーストの成績で守護神の座を剥奪され、敗戦処理の起用もあった。今季も春季キャンプを二軍で過ごし、オープン戦出場もなしとスタートは最悪だった。それでもなんとか開幕一軍に滑り込むと、4月には11試合連続無失点を記録するなど、抜群の安定感でブルペンを支えた。
中継ぎという地味なポジションだが、印象的だったのが5月2日のヤクルト戦。7-7と乱打戦となった同点の8回に登板した山崎は、この日3安打のサンタナを、149キロの外角低めの速球で見逃し三振に打ち取ると、続く西浦直亨を内野ゴロ、最後は代打の川端慎吾を全てストレートで3球三振。わずか10球で三者凡退に抑え、その裏に味方が勝ち越して今季2勝目をマークした。
侍ジャパンに選出された東京五輪では、ストッパー候補にも名前が挙がる山崎。昨季からつくづく感じるのが、9回以外に流れる「Zombie Nation」には、いまだに違和感があること。コロナの影響でヤスアキジャンプもまだ見られそうもないが、三嶋の状態次第では、後半戦に守護神に返り咲く可能性も大いにありそうだ。
◆野手のMVPは桑原将志
続いて野手のMVP。こちらはチーム打率がリーグトップタイというだけあって、候補は五指に余るほどいる。エスコバーと同様に、来日が遅れながら7月の月間MVPに輝くなど、打率.314、19本塁打のオースティン。
開幕直後の低迷期に、唯一の希望とも言える活躍を見せたルーキーの牧修悟。今季も首位打者争いをリードする佐野恵太、6月末に国内FA権を取得し、今季も打率3割キープと安定した実力を発揮している宮崎敏郎と多彩な顔ぶれが揃う中、MVPに挙げたいのが打率.318をマークするなど、今季完全復活を遂げた桑原将志だ。
昨季は一軍定着後、自己ワーストの34試合出場とどん底を味わったが、今季は開幕から1番打者に定着し、攻守で溌剌としたプレーを見せている。マルチ安打が28試合、3安打以上の猛打賞が10回と固め打ちが多いのが特長で、得点圏打率は.310と勝負強さも抜群だ。5月には17試合連続出塁を記録するなどコンスタントに活躍を続け、6月は月間打率.372、4本塁打、12打点と絶好調でチームの月間勝ち越しの原動力となった。
印象深いのが4月6日の中日戦で、相手先発の沢村賞左腕・大野雄大から先制タイムリーを含む、3打席連続安打を放ち、その後も四球、犠打で勝利に貢献し、チームの鬼門となっていたバンテリンドームでの連敗を11で止めた。
桑原は5月の巨人戦で内野フライを打ち上げた際に全力疾走を怠ったり、同月のオリックス戦では自慢の守備でも平凡なフライを落球するなど、“ヤラカシタ”ことも多い選手だが、ダイビングキャッチなどチームの士気を上げるプレーも多く、ある意味“ベイスターズらしい”選手と言える。そんな桑原を、アメとムチをうまく使い分けながら、見事に再生させた三浦大輔監督も見逃せないところだ。
前半戦最下位に終わったベイスターズだが、悪夢としか言いようがない3・4月の6勝21敗4分から、5月は9勝10敗3分、6月は12勝8敗2分、7月も4勝5敗2分となんとか踏ん張り、外国人が合流してメンバーが揃った5月以降は25勝23敗7分と勝率5割を超えている。
不幸中の幸いというべきか、チームから五輪出場選手が少ないことで消耗も少ない。9月になれば横浜スタジアムに戻り、状況によっては多くの歓声の中で試合をすることもできるかもしれない。残りは57試合、「いいとこどり」だけでなく、ベイスターズはまだまだ楽しめそうだ。
◆先週のベイスターズ
・試合はありませんでした
文:大久保泰伸
大久保泰伸
フリーライター、編集者。1969年広島市生まれ、現在は神奈川県在住。出版社勤務を経て、20世紀の終わり頃に独立。別冊宝島野球シリーズの執筆、編集や広島などのOBの著書の編集協力などを行い、同社のプロ野球選手名鑑は創刊時から現在まで関わる。記者活動は2009年にベースボール・タイムズ紙の広島担当でスタートし、15年から野球専門サイトのフルカウントで広島、18年からはDeNA担当も兼務した。
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