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野球 コラム 2021年5月12日

【中日好き】山本拓実、感覚の言語化

野球好きコラム by 森 貴俊
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山本は4年目の21歳(写真:球団提供)

コロナ禍が始まる前の2019年のオフ。山本拓実は自主トレに励んだ。沖縄でのドライブラインなど、新しい挑戦をしてキャンプを迎えた。

その変化はドラゴンズナンバーワンと言っても過言ではない。それくらい見違えた。自主トレの変化を誰よりもパフォーマンスで発揮していた。オープン戦の結果も上々。開幕ローテを掴み、シーズンが幕を開けた。

山本は2020年シーズン、9試合に登板。1勝3敗、防御率5.59。先発5試合で1勝を挙げたが結果が続かない。与田監督はじめ、コーチ陣も我慢を重ねた。7月23日から中継ぎに回り再起を期待したが、8月10日マツダスタジアムの登板を最後に1軍に戻ることはなかった。

去年の2軍降格を山本は振り返る。「自分の中で失敗していないのに、失敗する自分を恐れてしまっていたんです」。

「それが失投につながっていました。去年1軍で投げている時も、ファームに落ちた時もその“恐れ”がありました。去年開幕ローテに入って、やられていないのに気持ち的に負けてしまったり、まだ失敗していないのに失敗するんじゃないかって引きの心になってしまった」。

「特に自分がいいと思った球をはじき返されると、投げる球がなくなってしまって。もっといい所へ投げないと、って自分を追い込み、できるのかなって中途半端な気持ちで投げていました。もちろん、一軍の打者は見逃してくれません」。

1軍ローテを守れなかった原因は、自分のメンタルの弱さだったと山本は振り返る。身長167センチ。球界でも小柄な投手といってもいい。ゆえに負けん気の強さはあるが、もう1つ、山本の強みは勉強熱心なことだ。ルーキーイヤーからキャンプ中、何冊も本を持ち込んでいた。

そんな山本が今取り組んでいるのは感覚の言語化だ。

山本は「自分の感覚、今まではなんとなく足をドンと置く。腕をバーンと振る。そんな感じだったんです。抽象的な感じから、今は自分の言葉でノートに書き留め言語化しています」。

感覚の言語化に取り組む(写真:球団提供)

自分の登板で感じた事をすぐにノートにアウトプットする。1軍では福谷浩司も同じ事をしている。これにより自分にどんな変化があったのか。山本は説明してくれた。

「言語化により、自分がどういいのか、なぜ悪いのかをしっかり認識することで、こうなればいい。こうすれば悪くなる。こういう感覚になればいいと自分の中でチェックポイントができたんです。もちろん、それで打たれる事もありますが、結果それで打たれたらしょうがないと、割り切れるようになってきたと思います」と話した。

打たれたら、なんとなくネガティブな思考に入っていくのが人間だろう。そのなんとなくこそが元凶。そこを具体化する事で、今できる事をして打たれたらしょうがないという心の処理にたどり着いた。

山本は今シーズン、ファームでリリーフを自ら志願した。「毎日肩を作る。その中で、今日はこういう課題をやろうと取り組んでいます。結果、納得いく球が増えてきたと思います」。

中6日の先発に比べ、中継ぎは登板機会も増える。同時に今やろうとしているアウトプットの回数も増えていく。山本は今、自分の中に溜まっている弱さを全て言語化し、吐き出そうとしている。

ファームでリリーフを志願(写真:球団提供)

仁村二軍監督が山本拓実に託した言葉が真意をついているだろう。「プロの投手にとってコントロールとは何か。ストライクを投げる事ではない。狙った所に投げる技術がコントロール。さらに、狙った所に“思い通りのボール”を投げるのがコントロールだ」。

山本拓実は去年思い知った。「1軍ではキャッチャーの構えた所に投げても迷いのあるボールでは通用しません。早く1軍で投げたい気持ちはあります。でも、焦って行っても意味がない。今はしっかり足場を固めて、その先に1軍の登板があると思っています」。

高卒4年目の21歳。今、地道に続けている言語化はいつの日か必ず身を結ぶだろう。恵まれた体格ではないかもしれない。しかし、山本拓実の地道に続ける才能は誰にも負けない。鳴り物入りのスターではないが、167cmの投手が2桁勝利を挙げる。これもまたプロ野球だと思う。

文:森貴俊(東海ラジオ)

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森 貴俊

1976年愛知県出身。東海ラジオ放送スポーツアナウンサー。ドラゴンズ戦中心のガッツナイターをはじめJリーグ、マラソン等スポーツ実況を担当。原点回帰を胸に、再び強き竜の到来を熱望する43歳。日々体力の衰えを感じるがドラゴンズへの喜怒哀楽は衰え知らず。今年もマイクの前で本気で泣いて怒って笑います!

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