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プロ野球がいよいよ開幕。セ・リーグは、リーグ3連覇を目指す巨人を中心に展開することが予想されるが、ひとつ、気になることがある。ベイスターズの評価が低い。低すぎるのではないか、と思ってしまうほど、とにかく低い。
『週刊ベースボール』3月29日号の2021年のシーズン順位予想によれば、解説者12人のうち、4位が1人、5位が6人、最下位が5人で、Aクラス予想は1人もいない。解説者の中にはOBの野村弘樹氏もいたが、予想した順位は5位だった。
昨年の今頃は、打倒巨人の1番手として優勝候補に名前を挙げる解説者も少なくなかった。それがわずか1年で、どうしてこんなことになってしまったのか。
オフを振り返ると、確かに納得せざるを得ない状況ではある。FAで井納翔一、梶谷隆幸と投打の主力選手2人が巨人に移籍。長年チームを支えてきたロペス、パットンも退団した。17年には日本シリーズ進出を果たすなど、就任5年間で4度、チームをAクラスに導いたラミレス監督も昨年限りで契約終了となった。
さらに年が明けると、新型コロナウイルスの影響で外国人選手10名全員が来日できず、開幕に間に合わない事態となった。外国人の来日遅れは全チーム共通のアクシデントだが、とにもかくにも、ソトもオースティンも、エスコバーも新外国人のロメロも不在のまま、シーズンに入ることになった。
筆者は2009年から野球雑誌のベースボール・タイムズ誌で広島担当として記者取材をスタートし、15年からは野球専門サイトのフルカウントに籍を移して3年前から広島とベイスターズ担当を兼任。
昨年はコロナ禍の取材制限で1年間通して横浜で仕事をしたが、近年は年を重ねるごとにベイスターズが着実に強くなるのを感じていた。特にラミレス前監督が就任して以降は若手選手の台頭が目立ち、その勢いは年々増すばかりだった。
当時は広島サイドから見ていたが、カープがリーグ3連覇を達成した2016年から2018年の間にも、夏場の横浜スタジアムでは驚くようなことが起こった。17年は筒香、ロペス、宮崎の3者連続本塁打での逆転サヨナラ負けからの3試合連続サヨナラ負け。
2018年も筒香、宮崎、ソトの3連発で逆転負けを喫した。2017年にはレギュラーシーズンで3位のDeNAに14.5ゲーム差を付けてぶっちぎりの優勝をしながら、クライマックスシリーズでは地元マツダスタジアムで、まさかの4連敗で日本シリーズ進出を逃した。
両チームの担当を兼任した時に感じたのが、強くなっていくベイスターズが、その数年前のカープに似ている、ということだった。投打で20代の若手が次々と台頭し、その選手たちが全盛期を迎えていく。
昨季は筒香嘉智の抜けた穴を佐野恵太が埋めたように、誰かがいなくなると、他の誰かが出てきてカバーする。外国人選手の外れが少ない点など、次はベイスターズの順番か、と密かに感じていた。
長い低迷時代からチームが強くなっていく過程も、カープと酷似したところがあった。カープもベイスターズも、初のクライマックスシリーズ出場から2年連続3位となり、優勝候補の前評判で挑んだシーズンは4位に終わった。
“カープの法則”で言えばいよいよリーグ制覇か、と思われた2019年は2位。昨季はまた4位となり、三浦大輔新監督を迎えた今季も、オープン戦は12球団中11位に終わった。
このままベイスターズは終わってしまうのか。否、そんなことは無い。と筆者は考える。いや、考えたい。もちろんその根拠も、ないわけではない。
梶谷の穴を埋めるセンターには、2018年までレギュラーを張っていた桑原将志が復活してきた。後任の1番手として期待された神里和穀はオースティンに代わるライトでの起用が有力だ。
他にも関根大気がオープン戦で打率4割超と好調で、2年ぶりの一軍復帰は確実。オープン戦では結果が出なかったが、将来のクリーンアップ候補の細川成也、機動力を含めた総合力なら乙坂智、右足首クリーニング手術から復活が待たれる蝦名達夫など、候補は数多いる。
ソトが入る予定だった一塁には、大学日本代表で4番を務めたルーキー牧秀悟の開幕スタメンが濃厚に。本職は二塁手の牧が一塁に入ることにより、大和と柴田竜拓の鉄壁の二遊間が形成されることになる。
井納が抜けた先発陣も、プロ5年目の京山将弥がオープン戦3試合で防御率0.00と好調で、ルーキーの入江大生や4年目の長身右腕・阪口皓亮、2017年からの3年間で19試合に先発した飯塚悟史など、昨季二軍を指揮した三浦監督のチルドレンたちが、虎視眈々とその座を狙っている。
緊急事態宣言も解除となり、外国人選手の入国など特例処置が検討されることが発表された。ソトとオースティンが戻って来れば、打線はリーグ屈指の破壊力となる。新外国人のロメロは先発として2ケタ勝利が期待される元MLBのトッププロスペクト選手で、昨年までに実力は証明済みのエスコバーやピープルズの復帰も大きな力になるはずだ。
さらに手術の影響で開幕には間に合わなかった今永昇太と東克樹の復帰時期次第では、ここ数年、期待され続けてきた先発左腕王国も現実のものになる。長丁場のペナントレース(今年は日程通りに消化してくれれば)なら、チャンスはある。
そんなことを考えると、どこからか力がみなぎってくる。
最高のゴールに向けて、ベイスターズは、ここからがすごいぞ。
文:大久保泰伸
大久保泰伸
フリーライター、編集者。1969年広島市生まれ、現在は神奈川県在住。出版社勤務を経て、20世紀の終わり頃に独立。別冊宝島野球シリーズの執筆、編集や広島などのOBの著書の編集協力などを行い、同社のプロ野球選手名鑑は創刊時から現在まで関わる。記者活動は2009年にベースボール・タイムズ紙の広島担当でスタートし、15年から野球専門サイトのフルカウントで広島、18年からはDeNA担当も兼務した。
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