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野球 コラム 2020年12月18日

【中日好き】祖父江大輔、便利屋の矜持

野球好きコラム by 森 貴俊
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3月下旬に開幕していたら?結果論だが、今年は多くの選手に聞いてみたくなる。

54試合に登板。防御率1.79。28ホールド3セーブ。祖父江大輔は最優秀中継ぎ投手賞を獲得した。同じ質問をしてみた。もし、3月に開幕していたら?

「正直、やばかったかなって思います。この結果は出ていませんでしたね」。

最優秀中継ぎ投手賞を獲得した祖父江大輔

コロナ禍の開幕3ヶ月延期を祖父江は最大限に利用した。身に着けた最大の武器はシュートだ。

祖父江は「これまでシュートはサインにも一応入っていましたね。だけど実戦でキャッチャーからサインが出ることはまずなかった。正直、僕自身も使えるレベルではないなって思っていたんで」。

持ち球として存在はしていたシュート。これをもう一度磨くことに時間を使った。

「最初は遊び感覚でしたけどね。投げているうちに感覚がよくなって。練習を続けていたんです。全体練習が許されて、キャッチャーに受けてもらったら、使えると思いますって反応が返ってきて。6月の開幕から使いました。これが今年の最大の特徴ですね」。

祖父江のシュートがいかに有効的だったのか、それは数字が物語っている。54試合に登板。与えた四球はわずかに7個。素晴らしい数字だ。一見、制球力が向上したように見えるがそうではない。

祖父江は「コントロールはそんなに変わっていないです。僕はいい方じゃないんで。ただ、今年はフルカウントが少なかった。早いカウントの勝負になったとは思います」。

これまでの祖父江はストレートとスライダーの組み立てが多くを占めた。右打者ならばストレートにケアをしつつ、カウントによってアウトコースへ逃げるスライダーを狙ってくる。

しかし、そこに懐に入ってくるシュートが加わった。当然打者はインコースもケアさせられる。外スライダーに届かない、ひっかけるケースも増えた。打者が早いカウントで勝負を仕掛けてきた分、祖父江の投球術が上回った。そして、今シーズンの要因をもう一つ挙げるならば祖父江のメンタルだ。

祖父江は元々“特別”を嫌う。セットアッパーにもタイプがある。これまでの祖父江は一言でいえば“便利屋”だ。リード、ビハインド、イニング跨ぎ。なんでもこなした。しかし、今年は勝ちパターンに定着し、ストッパーのR・マルティネスが離脱後は福敬登と共にストッパーも務めた。

祖父江は「昔からそうです。僕は特別な意識をすると本当にダメ。ろくな結果はでない。去年も失敗しました。勝ちパターンで投げて変な意識して失敗。振り返ればやっぱり特別意識をしていたなって思うんです」。

「だから今年は常に平常心を心掛けました。どんな状況で投げようが同じ気持ち。リード、ビハインド、イニングによって気持ちを変えなかったんです」。

求められる仕事は変わっても、祖父江は気持ちを変えなかった。まさに祖父江のこれまでの“便利屋”としての経験が活きたシーズンだった。

「来年の目標設定は?って質問されますが、僕はこの先も便利屋でいいんです。言われた所で投げる。控えめに言っているんじゃなくて、それが一番自分に合っているし一番いい結果になるんですよ」。

「1つ挙げるならば、シュートのレベルを上げたいですね。ストレートに近い軌道、腕の振りで打者がまっすぐと錯覚して打ちに来るシュートにしたい。より早いカウントで勝負できるし、投球の幅が広がると思います。」

コロナの影響は関係ない。シーズンオフは例年通り祖父江はほとんどの時間をナゴヤ球場で過ごす。毎年そうだ。誰とも群れず、特別な場所にも行かない。同じ場所でも進化はできる。それも実に“特別”を嫌う祖父江らしい。


このオフも同じルーティンを刻み、祖父江大輔は来シーズン、球界最強の“便利屋”を目指す。

文:森貴俊(東海ラジオ放送)

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森 貴俊

1976年愛知県出身。東海ラジオ放送スポーツアナウンサー。ドラゴンズ戦中心のガッツナイターをはじめJリーグ、マラソン等スポーツ実況を担当。原点回帰を胸に、再び強き竜の到来を熱望する43歳。日々体力の衰えを感じるがドラゴンズへの喜怒哀楽は衰え知らず。今年もマイクの前で本気で泣いて怒って笑います!

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