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野球 コラム 2020年12月15日

【広島好き】「穂」という名前がつないだ大盛穂とカレー店のお話

野球好きコラム by 大井 智保子
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大盛選手のサインボールを持つ北林さん

「”穂”って名前の有名人、この39年間で1人もおらんかったんです!」。

2018年のドラフト育成1位でカープに入団した大盛穂に思わず手紙を出したのは、広島市は並木通りでカレー屋「カレースタジアムあさひ」を営む「北林穂」さんだ。思わず出した手紙から始まる、心温まるストーリー。

大盛君が(当時カープ選手だった)丸佳浩を好きだという情報を得て、すぐ丸の便箋を買いに行った。丸の便箋には、同じ名前で漢字も同じで、おこがましくも親近感が湧いて思わず手紙を書いたという旨。広島でカレー屋さんを営んでいること。そしてカープに入ってくれた喜び、心から応援するという気持ちをつづった。

名前の証明になる名刺とショップカードも同封して、静岡産業大学野球部の寮の住所をネットで調べ、どうか届きますようにとポストに投函したのは2018年10月のこと。

その年の12月10日、カープ新入団選手発表の日の夜だった。1人の知らない女性がお店にやってきた。その女性は「穂の母です」と言った。

「息子から手紙を読ませてもらって、本当は2人で行こうって言ってたんですけど、荷物とかあって来られなくて」。大盛が兄の影響で野球を始めたこと。突然選ばれたドラフトの時のこと。でも、実は監督さんだけは知っていたことなど色々話してくれたそうだ。

「たぶん、初めてもらったファンレターです」と聞き、「すみません。男で」と2人で笑った。

それからおよそ1ヶ月後、お店の電話が鳴った。「大盛です、手紙読ませてもらいました、ありがとございました。次の土曜日に行かせてもらいたいんですが」と大盛選手本人からの予約電話だったのだ。

その日はお店を貸し切りにして彼の来店を待った。桑原樹、坂倉将吾、高橋昂也の3人を連れ、若鯉4人が本当にお店(当時:スズメバチカレー)にやってきた。

自慢のインスタ映えするカレー鍋を振る舞うと、おいしいと食べてくれた。鍋の〆の麺の後に、カレーも食べるかと聞いたら、全員「食べます」と即答。

ゴールデンスープカレー

4人でお米5合は余裕でなくなったという。その日はプロ野球選手になって初めてのキャンプ前、最後の休日だったそう。色紙とボールに背番号124のサインをもらい、北林穂さんにとっては忘れられない1日になった。

それからたったの1年、育成選手だった大盛は支配下登録され、3桁だった背番号は2桁に変わった。そして、西川龍馬の離脱という、大盛にとってのチャンスを見事に掴むと、一軍に帯同し続ける活躍を見せた。

初ヒット、初盗塁、初エラー…。北林さんは一軍での大盛のプレーを全て追いかけ喜んだ。大盛が活躍するとお客さんから連絡が来るほどになっていた。その中でもより記憶に残っているのは、10月3日に打った初ホームランだという。神宮球場でのヤクルト戦、先発スアレスより試合を決定づける3ラン。

「それまでの3打席全部三振じゃったのにね、代えられるかなー思うたら代えられんでね。しかもホームラン、運ももっとる選手じゃわ」。まるで昨日のことのように嬉しそうに話してくれた。

一軍で試合をすることすら叶わない野球選手が大勢いる中で、たった1年で育成から這い上がり、さらには一軍で活躍するための努力がどれほどのものなのかは想像がつかない。ただ、1通のファンレターを大切にするその人柄は、野球の神様が味方についてくれているに違いないと思った。

カープグッズが並ぶ店内

残念ながら、「スタジアムカレーあさひ」は2020年12月26日をもって閉店することが決まったそうだ。残りわずかとなってしまったが、若鯉達の活躍の源となったカレー鍋(予約必須)を食べに、124番のサインを見に、ぜひ行ってみては。

文/写真:大井智保子

大井 智保子

大井 智保子

年間40試合以上は球場へ観戦に行く、広島県江田島市出身のカープファン(天谷世代)。「カープ女子」という言葉を世に広め、2014年にはユーキャン新語・流行語大賞でトップ10を受賞。"カープ女子神3"と呼ばれる。本業は広告代理店のOLだが、ライターとの二刀流を目指す! Twitterアカウント

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