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野球 コラム 2020年8月6日

【楽天好き】涌井秀章、ノーノー未遂。そして爆笑のヒーローインタビュー

野球好きコラム by 松山 ようこ
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心臓がバクバクして画面にかじりついていた――。8月5日のソフトバンク戦、先発の涌井秀章が美しいフォームで、丁寧だけれどリズム良く次々と打者を退けていく。

いよいよ8回、ぽんぽんと2球で強打者の栗原とバレンティンを打ち取った。ノーヒットノーラン達成がにわかに現実味を帯びる。スタンドにもベンチにも、異様な静けさが漂っているようだった。

ついに9回、ソフトバンクは代打攻勢に出た。先頭にベテラン松田。三振に斬った!そして、2人目の代打は川島。2球で2ストライクに追い込んだ。2球ボールでカウント2?2、5球目はファウルに。マウンドを外す涌井と首をかしげる川島。6球目、内角のストレートを川島はバットを折りながらもセンター前に運んだ…。

「わああああっ」と声を上げてSNSを見てみると、同じように悲鳴をあげた人ばかり。ツイッターでは「ノーノー」「涌井さん」「ノーヒットノーラン」「涌井投手」のワードがひしめき合って、トレンドの上位半分を占めていた。

スコアボードの「H」の隣が「0」から「1」に変わっている。マウンドに選手が集まり、伊藤投手コーチが駆け寄っている。そう思ったのも束の間に解散。涌井はそのままマウンドに残ると、変わらぬ表情と整ったフォームで続投し、残りの2アウトを奪った。1安打完封勝利。チームは6-0で快勝。いや、すばらしいけど!

あと、アウト2つでノーノーだったのに…。見ているこちらが引きずりながらヒーローインタビューの涌井を見た。心境は? ですよね。同じ1安打完封でも、最後の最後に打たれたのでは悔しさが違うはず…と見守るも涌井はサラッと言った。

「まあ、そんなもんでしょう」

たくさんの経験をしている人が言う「野球はそういうもの」だ。重みのある言葉…のはずなのに、涌井はさらりと返す。しかも即座に軽妙この上ない。

マウンドでのクールな佇まいとは真逆のフワッとした雰囲気で。いわゆる“ギャップ”に持っていかれたのだろう。つかみはOKとばかりに、スタンドのファンがドッと湧いた。その後も顔色一つ変えずに涌井は答える。仙台のファンに拍手で贈られて向かった9回のマウンドの心境は?

「ようやく、名前を覚えてもらったかなと思っています」

ファンのハートをわしづかみにしているので、もはや何を言っても面白い。スタンドは笑いの渦。それでいて涌井は、スタンドにちゃんと目をやっている。多くのファンが「涌井」のタオルを掲げている。「最高!!」「愛している」「カッコイイ!」のタオルを掲げた人もあちこちにいる。

涌井のヒーローインタビューを見て、改めてプロフェッショナルな側面を見た気がした。ファンが喜ぶ姿を見て、もっと喜ばせようとしているのだ。ついにはノーノーができなかったのを渡辺直人(兼任コーチ)のせいにした。何回から大記録達成を意識したのかの問いには、「正直、意識してなかった」と明かすと、こう続けた。

「7回ですかね、ちょっと直人さんと目が合って。ニヤニヤしてんなあと思って、こっちも笑っちゃって。そこでちょっと集中が切れたかなと」

スタンドは爆笑。涌井は平然としたまま。ふと、キャンプで牧田明久に尋ねたことを思い出した。「涌井選手ってどんな人?」と。牧田は「やんちゃ」と言っていた。公にそんな素振りは微塵も見せないけれど、ちょっとワガママに見えて、いたずらっぽいこの受け答えは、やんちゃそのものだ。

この日もいつものように、終始ポーカーフェイスで投げきった涌井は、どんな時も平常心を保つ秘訣を尋ねられると、「基本的に無関心というか。自分のことしか考えてない」「自分でやることをしっかりやって、それがまあ平常心につながってるのかな」。

そう言いながら、最後に一言を求められると、涌井はファンに感謝を繰り返しながらこう言った。

「いつも応援ありがとうございます。明日、久しぶりに松井(裕樹)が投げるので、みなさんタオルを掲げて、応援してあげてください。ありがとうございました」

これが涌井流のファンサービスでチーム愛なんだなと、しみじみ感動した。

文:松山ようこ

松山ようこ

松山 ようこ

フリーランス翻訳者・ライター。スポーツやエンターテイメント関連コンテンツの字幕翻訳をはじめ、Webコンテンツ、関連ニュース、企業資料などの翻訳や制作を請け負う。J SPORTSでは、主にMLBや侍ジャパンのほか、2015シーズンより楽天イーグルスを取材し、コラムやインタビュー記事を担当。野球の他にも、幅広くスポーツ選手はじめ著名人を取材。Twitter @yokobooboo

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