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写真:久米島キャンプでフォームをチェックする松井
仕切り直しだ。3月23日、ついに無観客での練習試合もなくなった。少しでも野球が見られると思っていたのに…と途方に暮れるファンも多いだろう。
だが、新型コロナウィルスの感染拡大は、日に日に深刻さを増している。世界中のスポーツイベントが延期・中止となるなか、プロ野球の開幕日も先に発表されていた「4月10日以降」ではなく、「4月24日を目指す」ことになった。
何事もなければ開幕していたはずだった3月21日、楽天はオリックスとホームで練習試合を行った。今季から先発転向する松井裕樹がまっさらなマウンドに立ち、本番さながらの気合いの入った立ち上がりを見せていた。
松井は全球ストレート勝負で、先頭は空振り三振。2番中村には二塁打を浴び、牽制送球ミスで3塁を陥れられ、続く3番吉田に犠牲フライで先制点を失うも、連打は許さず。
さらに2回は連続四球からの2点タイムリーを浴びたが、この後はていねいにアウトを重ねた。結果、4回4安打3失点で4奪三振3与四球。2週間前のオープン戦では右手に打球を受けて負傷交代したことも考慮してか全82球で降板した。
同試合をJ SPORTSで解説をしていた井上純氏も、「フォアボールと牽制のミスがなければ、完璧に打たれたようなヒットもなく、立ち上がりや課題としている変化球の使い方といい、及第点ではないでしょうか。
あとは先発なので球数を投げることになる。疲労の回復と今後どう対処していくかでしょう」と期待を寄せた。
開幕延期は少なくとも、松井をはじめとする課題が明確な選手たちには、有効活用できる時間だろう。選手会長でエースの則本昂大も「チャレンジしたりと自分の時間ができる」とコメントを発表している。
この日も則本は、6回から登板すると、完璧な仕上がりで2回無安打(無四球)。毎年きっちりと準備をする則本の背中が、引き続きチームを率いてくれそうだ。
なお、翌22日は悪天候で練習試合は中止に。久し振りの試合中継もわずか1試合でお預けとなったが、この日も若手はギラギラとしていたし、ブセニッツは髭がたわわに生えていてビックリしたけれど、変わらない爽やかスマイルを漂わせながら、最終回を三者凡退と文句なしの仕上がりを見せつけていた。
写真:キャンプでも毎日ファンにサインしていたオコエ
自粛ムードだからこそ、選手たちの快活な姿はファンに元気や勇気を与える。この日、印象に残ったのは松井が降板した時と、小郷裕哉がソロホームランを放った後。
ダグアウトで選手たちは、いつもの“ハイタッチ”ではなく、コロナ禍で急速に浸透しつつある“肘タッチ”をしていたこと。早くも取り入れていたのだ。
意識の高い選手たちは、工夫を凝らした発信を続ける。松井は開幕延期が決まった23日、球団のツイッターを通じて、「ぼくが幼稚園の時の将来の夢はなんでしょう?」と自分クイズを動画で発信。
答えは、1:プロ野球選手 2:桃の缶詰屋さん 3:パイロット のいずれかで、その夜に動画で発表された。気になる正解は「2」番。理由は、「その時、一番大好きな食べ物だったから」。
さらに、「年長の時は、缶詰屋の“屋”が書けたけど、年中の時は“屋”が書けなくて、『桃の缶詰になりたい』って書いてました」と愛らしいエピソードを披露している(ああ、ほっこりする!)。
他にも、小郷やオコエ瑠偉がインスタライブをしたことも記憶に新しい。なお、オコエはキャンプ中に宿泊先のホテルからライブを試みたものの、回線状況が悪く、画面も真っ暗のまま途中で断念。
そこで翌日、そのことを尋ねると、「ちゃんと中継できず、かたじけないっす」と照れ隠しのように頭をペコリと下げると、「前にぼく、週刊誌で悪く書かれたりして、支えてくれる人やファンに迷惑をかけてるので」と自ら発信する理由を明かした。
「自分が悪く言われるのは全然いいんですよ。でも、自分を思ってくれる人に何か返せたらと思って」と、一転して真摯な表情で語っていた。
先延ばしになった開幕は待ち遠しいばかり。けれども、こうした機会に選手の意外な側面が見られるのもまた、楽しみを膨らませてくれる。
文/写真:松山ようこ
松山 ようこ
翻訳者/ライター/インタビュアー。主にスポーツやエンタメ分野にて実績多数。野球はプロ野球からMLB、他にもマイナースポーツからオリンピック大会まで、国内外の競技場や大会での現地取材を数多く経験するスポーツ好き。アスリートはじめ、一般人から著名人まで幅広くインタビューし、日本語と英語ともに記事やコラムにする。訳書『ピッチングニンジャの投手論』『ベイダータイム』。 ※『ピッチングニンジャの投手論 PitchingNinja's analysis of Japanese MLB Aces』 ※『VADER TIME ベイダータイム: 皇帝戦士の真実 』
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