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野球 コラム 2019年12月6日

【楽天好き】戸村健次と西宮悠介、「改めて幸せ」かみしめ引退。来季から打撃ピッチャーに

野球好きコラム by 松山 ようこ
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ファン感謝祭のメインイベントの1つとして、戸村健次と西宮悠介の引退セレモニーが行われた。

寂しさこそ募れど、ここでは選手の本当の素の側面が見られるからいい。目撃して取材した限り、2人ともが「こうした場を設けてもらえて、改めて幸せに思いました」と晴れやかに語っていた。

来季からは、2人とも打撃投手という裏方でチームに帯同する。役割は違えど、「動き(働くスケジュール)は変らない」と嬉しく思っているようだった。

写真:涙顔の西宮選手

私たちは誰しも、社会ではどこかしら、いち社会人としてなりたい自分、見られたい自分を演じている。それはきっと選手も変わらない。

選手として“きちんと”している限り、例えば家族に見せるような素の姿はまず見られない。けれども、引退セレモニーでは唯一、それが見られる。

特に、家族が花束を贈呈するシーンに、引退する選手たちが見せる笑顔と涙は、堪えた表情すら有り余るほどに伝わる。

2009年にドラフト1位で入団した戸村は、「高い評価に見合う大きな成績が残せなかった」とスピーチで悔しさをのぞかせながら、妻への深い感謝を綴ってとびきりの笑顔を見せた。

貴重なサウスポーとして6年間奮闘した西宮は、「この経験が貴重な糧になる」と語り、優しいパパの顔で幼い息子を抱きしめた。

そういえば、西宮は「家にいないことが多いですけど、気分転換に家族を連れ出したり、手伝える時は手伝うようにしてます」と語っていたっけ。そんな素朴な家庭人の素顔を見た気がした。

写真:家族から花束を受け取る戸村選手

セレモニーの後は、囲み会見が行われた。トムさんこと戸村は、スピーチの最後で「『困った時のトム』と呼ばれて嬉しかった」と明かしたが、そこに込められた思いを語ってくれた。

予告投手の代役を急きょ果たすなど、緊急登板で見事なピッチングをみせて何度となくファンを沸かせた「困った時のトム」。

故・星野仙一さんがつけた元投手の川井貴志さんへの「困った時のボブ」の系譜でもあるフレーズだが、響きが良くとも甘んじてはいなかった。

「現役当時は、そりゃもちろん嫌でしたよ。“困る”前に呼ばれるのが、プロ野球選手として一番いいかたちですから。それでも、やっぱり必要とされて、そう言っていただけたのは嬉しいこと」。

「そういう立ち位置だとしても、生き抜くために必要とされたのは、プロ野球選手として、やってきた1つの成果ですから。大きな成果ではないですけれども、やっぱり今となっては嬉しいんです」

戦力外通告をされた時、戸村は現役続行を表明していた。一転して引退を決意した理由は詳しく尋ねられなかった。

「だって、ぼく10年もプロ野球選手ができたんですから」と見ていて気持ちよくなるほど(突っ込んで聞くのが無粋に思えるほど)清々しかったから。すでに、前を向いて進んでいるという空気感しかなかった。

写真:青山選手と松井選手が花束を渡す

◆戸村、TOEICに挑戦。ただし受験時期は未定

実はこの小見出しはトムさん自身が考えた。今後の切り替えについて、何か準備をしているのか尋ねた時のことだ。

最初は、「これからも変らないですし、もうキツい練習しなくていいから、しんどい選手たちの顔を横で見られるなんてワクワクします」。

「ぼくはトレーニングしないで、ダイエットしますけど。細身の服とか着られるようになりたいんです」と、冗談交じりに語っていたが、その後で言い忘れたとばかりに熱っぽく語りだした。

「あ、ぼく勉強します。そう書いておいてくださいね。いろいろ勉強したいんです」。退路を断つかのように、「決意表明です」と言う。そこで、例えば何を勉強するのかと尋ねると、

「TOEICです。書いておいてください」と再び公言。続けて、「TOEICに挑戦します。見出しに『戸村、TOEICに挑戦』って。あ、『ただし受験時期は未定』って。今から勉強するので」と笑ったのだ。

新しいキャリアで何に情熱を注ごうか、ワクワクしているようだった。楽天では公用語が英語となっているので、主な社内文書やメールのやり取りも英語だろう。そのために、「読む」「聞く」に特化したTOEICに挑戦するのは、理にかなっている。

今から英語を勉強するのは並大抵ではないけれど、「努力する」才能に恵まれた、トムさんのポテンシャルには期待せずにはいられない。

プロ野球選手として切磋琢磨した経験、課題をつぶすべく向上を続けた情熱が、ギラギラしながら煮えたぎったままのようなのだ。あとは、それをどこに注ぐか。

情熱たぎる戸村と研究熱心な西宮。2人が裏方に回ることは、大きなチーム強化のひとつなのかもしれない。

文/写真:松山ようこ

松山ようこ

松山 ようこ

フリーランス翻訳者・ライター。スポーツやエンターテイメント関連コンテンツの字幕翻訳をはじめ、Webコンテンツ、関連ニュース、企業資料などの翻訳や制作を請け負う。J SPORTSでは、主にMLBや侍ジャパンのほか、2015シーズンより楽天イーグルスを取材し、コラムやインタビュー記事を担当。野球の他にも、幅広くスポーツ選手はじめ著名人を取材。Twitter @yokobooboo

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