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野球 コラム 2019年12月2日

【楽天好き】「18年間お疲れさまでした」。今江敏晃の幸せな引退セレモニー

野球好きコラム by 松山 ようこ
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「引退試合はなかったけれど、こんな形で終わることができたのは幸せなことです」。

今江敏晃が、18年間の現役生活にピリオドを打った。ファン感謝祭の大トリで、引退セレモニーが開催。多くのファンが見守るなか、挨拶のスピーチを終えた今江は、四方に向かって深々とお辞儀をした。チームメイト代表として岡島豪郎と岸孝之が花束を贈る。

◆サプライズ、現役最後の打席は息子との勝負

そして家族から。妻の幸子さんが花束を贈ると、14才の息子の陸斗(りくと)くんは、今江にバットとヘルメットを手渡した。

「お父さん、最後にぼくと1打席、勝負してください」。

今江は驚きを隠せないまま。すると、じゃあと捕手役に嶋基宏が名乗りをあげ、球審をサンドウィッチマンの伊達みきおさんが務めた。残りの選手は、全員でフィールドを守った。

場内に登場曲の「青い春」(back number)が大音量で流れ、スタジアムMCの千葉正人さんが高らかに今江の入場を告げる粋な演出。大いに湧いたムードのなか、陸人くんが放った初球は、父の胸をかすめた。

温かくも、どよめく場内。これでスイッチが入ったのか、今江はいつもと変わらぬ雰囲気を漂わせて再び打席に入ると、陸人くんの2球目を、きっちりとセンター前に弾き返した。

この後の囲み会見で、初めて息子のボールを打席で見たという今江は「よくストライクを放れたな。ちゃんと投げられるようになったんやな」と目を細めた。

今江の公式サイトには、陸人くんが2才の頃にバットとグローブを持って戯れている写真があるが、18年もプロ野球の第一線で活躍してきたのだ。成長期に過ごせた父子の時間の少なさは察するにあまりある。

密かに、「父子で現役」という夢も抱いていたという。今江は「やっぱり現実は甘くない」と苦笑いし、スピーチでも自身のブログでも「父親らしいことが全然できなかった」と振り返る。

とはいえ、18年という歳月はトップ選手のなかのトップ選手しか成しえないこと。どんな時も甘んじることなく反省と努力を続ける今江の背中はきっと、変わらず偉大だろう。

◆サプライズに涙腺が緩んだ今江、今後は「社会に貢献できる選手をつくっていきたい」

セレモニーを特別なものにしたのは、この父子対決だけではない。これまでの軌跡をまとめた映像のほか、今江にとって特別な人たちからのビデオメッセージも。

今江が個人として取り組んできた社会福祉活動で、支援してきた野球チームや社会福祉施設の人々からのメッセージだ。

「夏井くすの木スポーツ少年団です。今江選手、18年間、お疲れさまでした。東日本大震災以降、毎年いわき市に来て、たくさんの夢や希望を与えてくれて、本当にありがとうございました。第2の野球人生もがんばってください。今江選手は、僕たちのヒーローだ!!!」

NPO法人ミルフィーユ 小児がんフロンティアで知り合った石川ジェロームくん(15歳)は、「今江選手へ、引退、ご苦労さまです。そして、コーチ就任おめでとうございます」。

「最初に会ったのは6年前で、その頃から今江選手のことが大好きです。ぼくは3年前に中学受験をしましたが、行きたかった学校に行けませんでした。今年は中学3年生なので、高校受験でリベンジします」。

「がんばっている今江選手を見て、ぼくもがんばろうと思っています。これからもがんばってください。応援しています」と画面に語りかけた。

4グループほどのメッセージが読み上げられたが、他にも東北各地、千葉、群馬など、たくさんの野球教室や野球部の子どもたち、児童福祉施設からメッセージが届けられた。

メッセージを見ていた今江の目の縁は、みるみると赤くなっていった。「あれもまったく知りませんでした。あの後にスピーチがあるのに、泣きそうになってました。気持ちがもうグラグラ揺さぶられて(笑)。でも、本当に嬉しかったです」と振り返る。

写真:多くの選手、関係者から送られた花

今後は指導者として、キャリアを歩む。「これまではサポートしてもらったけれど、逆にサポートする側になる。勉強しながらですね」。

「社会福祉にかかわった人たちからメッセージをいただきましたが、やはり、野球選手である前に、1人の人間なので、社会に貢献できる選手を育てていきたいと思っています」。

社会福祉活動も「1度はじめたら、最後までやり通す」のが今江の主義。「これからも関係は変わらないですし、オフはもう練習やトレーニングをしなくてもいい。そのぶん、時間ができるわけです。だから、むしろもっとできるんじゃないかと考えています」。

課題は、「選手でなくなって、本当に影響力を与えられるかどうか。プレーで勇気や夢を与える形ではなくなるし、メディアに出る機会もなくなる。いろいろと考えて模索していきたいです」。

たくさんの人に夢を与えて、支援の輪を広げてきたのだ。「1度はじめたら、最後までやり通す」今江と彼らとの信頼関係も、それぞれ最後まで変わらず続く。

これからも、野球人だけではなく、多くの人に愛される人として、今江さんの活躍を心から応援したい。

文/写真:松山ようこ

松山ようこ

松山 ようこ

フリーランス翻訳者・ライター。スポーツやエンターテイメント関連コンテンツの字幕翻訳をはじめ、Webコンテンツ、関連ニュース、企業資料などの翻訳や制作を請け負う。J SPORTSでは、主にMLBや侍ジャパンのほか、2015シーズンより楽天イーグルスを取材し、コラムやインタビュー記事を担当。野球の他にも、幅広くスポーツ選手はじめ著名人を取材。Twitter @yokobooboo

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