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小雨が降り続くなか、仙台駅では楽天生命パーク宮城を往復するシャトルバス乗り場に長蛇の列ができていた。
おかげでタクシー乗り場はガラガラ。さっと乗り込むと、「朝からすごい列ですよね。けっこう回転はいいので、私たちの仕事は減るんですけど、うちの会社の人も行ってるみたいです」と運転手が苦笑いした。
毎秋オフ恒例のファン感謝祭に行ってきた。訪れたファンは球団創設以来最多となる21,990人。長年に渡って取材している仙台のテレビ局の取材班は、「年々、凝って、アップグレードしていますね」と証言する。
ゲートをくぐったそばから、名物となっている女装コンテスト「かわいいのは俺だ!」の写真がずらりと並ぶ。5人の選手たちが女の子に扮して、写真に収まっている。さっぱり誰だかわからない“女の子”も。
「一番かわいい」はファン投票で決められ、気になる結果は、球場内のイベントでお笑いコンビのサンドウィッチマン司会のもと、たっぷりいじられながら発表される。ただでさえ面白いイベントが、サンドウィッチマンによって爆笑が絶えないひと時になるのも人気の理由だ。
この女装コンテストはベテランも、移籍してきた選手も等しく参戦。昨年は岸孝之が妖艶な黒髪美女に扮して優勝したが、今年は広島から移籍してきた福井優也や下水流昂が登場した。
プロが1時間かけてメイクを施した渾身の変身ぶりをみせるも、優勝は(ダントツでかわいいと票を集めた)「C」の小野郁だった。例年「レベルが高い」と話題のコンテストは今年も大盛況だった。
※最終結果、A:福井優也(3位)B:下水流昂(5位)C:小野郁(1位)D:由規(2位)E:フェルナンド(4位)。
ちなみに、恒例ルーキーによるダンスパフォーマンスでは、渡邊佳明がたった1人「よしこ」という女の子に扮して、「かわいいでしょ?」と自信満々だったので、来年ここでも登場してくれるかもしれない。
◆選手の意外な横顔と素顔がボールパークにあふれる
ある小さな子どもを連れたファンの女性は、「雰囲気だけでも楽しめればと来たのですが、思いのほか、選手にたくさん遭遇できた」と笑った。
球場内はもちろん、球場周りも賑やかなのはシーズン中も同じだが、そこに選手が出没しまくるからだ。観覧車の係員として選手が立っていたり、オリジナルのEagles Beer(イーグルスビール)のスタンドで選手が注文を受けたビールを注いでいたり。
写真:ビールを注ぐのが一番うまい岩見選手
後で売り子のスタッフに話を聞くと、「一番、注ぐのがうまかったのは岩見(雅紀)選手でした」とのこと。パワフルな打棒からは想像しにくい繊細な手付きで「学生時代にバイトしていたので」ときれいに泡をつくっていたそうだ。
写真:石原選手の一品にたじろぐ久保選手と男の子のファン
普段あまり見られない、選手たちの意外な側面が見られるのがファン感謝祭の醍醐味。どちらかというと予想どおり(?)で爆笑を誘ったのが、若干20才の自称「甘えん坊」という石原彪。
久米島キャンプでも食いしん坊キャラとして弄られていたが、特設ステージで行われた料理対決では豪快なハンバーグ(には見えない一品)で勝負。。黄色と茶色のオムレツのような謎の塊を皿に盛り、審査員の久保裕也とファンの男の子をたじろがせた(味は『食べられた』とのこと)。
写真:大声援を贈られる嶋選手
◆移籍する嶋や美馬も登場!
サプライズで、今季限りでヤクルトへ移籍する嶋基宏とロッテに移籍する美馬学も現れた。他の選手と同じように、分刻みでいろいろな場所に行き、できる限り多くのファンと触れ合おうとしていたようだ。
スマイルグリコパークに嶋が出没した時は、街中にアイドルが降り立ったように、一帯でファンから悲鳴にも似たエールが響き渡った。
子どものほうが興奮しがちなのだろうが、大人が「嶋サーン、ありがとー!」というのに対して、少年少女が「しまー、しーまー!!」と呼び捨てで絶叫していた(いじらしかった)。
いろんな人がいるだけに、嫌な声もあったのではないかと思われたが、美馬も後の囲み取材で「全然なかったです。本当に一言もなくて。新天地でも頑張ってほしいって多くの人に言われました。最後まで、ファンの人たちは温かかったです。本当に感謝しかありません」と穏やかな表情で明かした。
地方のスポーツチームは地元密着が肝となるが、いかにして楽天が仙台をはじめ、東北の人たちにとって欠かせない存在となり、選手たちが“ヒーロー”となってきたのかを垣間見た気がした。
組織であり、勝負のビジネス。毎年優勝ができないように、誰もがいつも幸せにはなれないし、選手生命はいつだって不安定だ。それでも、どの選手もとても良い笑顔をしていたのが印象的だった。
ファンと触れ合い、ダイレクトに応援の言葉をもらうファン感謝祭は、選手にとっても幸せな日に違いない。
文/写真:松山ようこ
松山 ようこ
翻訳者/ライター/インタビュアー。主にスポーツやエンタメ分野にて実績多数。野球はプロ野球からMLB、他にもマイナースポーツからオリンピック大会まで、国内外の競技場や大会での現地取材を数多く経験するスポーツ好き。アスリートはじめ、一般人から著名人まで幅広くインタビューし、日本語と英語ともに記事やコラムにする。訳書『ピッチングニンジャの投手論』『ベイダータイム』。 ※『ピッチングニンジャの投手論 PitchingNinja's analysis of Japanese MLB Aces』 ※『VADER TIME ベイダータイム: 皇帝戦士の真実 』
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