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野球 コラム 2019年8月31日

【楽天好き】森原康平、「圧倒的ピッチング」でチームを支える

野球好きコラム by 松山 ようこ
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一握りしかなれないプロ野球選手は、個性あふれる人が多い。一見してオリジナリティを鮮烈に放っているタイプから、むしろ知るほどに秘めたユニークネスが明らかになるタイプまで、だれもが様々で独特だ。

今、“勝ちパターン”などで8回を務める右腕、森原康平は後者のタイプだろう。湛えた闘志もクールで露わにしない。

新日鐵住金広畑での社会人時代を経て、ドラフト5位で入団した3年目。軸となる150キロ超のストレートは、その頃に進化させたという。

遅咲きのルーキーは、入団当時から新人らしからぬ落ち着きをみせていたが、着々と存在感を放つようになり、今年は貫禄が増したように見える。

今季もそのストレートに加えて、多彩な変化球で投球回数以上の奪三振をマーク。開幕から欠かせないセットアッパーとして活躍し、すでにキャリアハイとなる50登板も超えた。

また、今年3月には侍ジャパンデビューも果たし、あの佐々木主浩氏がフォークを高評価。野村克也氏が「史上最高の投手」と称えたチームの伊藤智仁投手コーチは、「カットボールがいいね」とさらなる進化を認める。

昨季は右肘のクリーニング手術を受けて長期離脱もあったが、今すべての経験を糧にした雰囲気を放つ。

◆ピッチングの秘密は『横の間』

「1年目と比べたら、たしかに全然変わったと思います。経験と知識が違う。準備や対処も。でも、雰囲気やフォームは変わってないと思いますよ」。

いつもの柔和な笑顔をのぞかせて、森原は言う。彼の投球フォームは、ゆったりとした流れにありながら、ボールが手を離れる最後の瞬間、ビュッと鋭いボールが飛びだす。そんなイメージだ。

マウンドでのその時間は、今年はさらに長く感じる。そんな疑問をぶつけたら、こんな面白い話を聞かせてくれた。

「ああ、『横の間』でしょ。(ボールを持って投げる前の)横向きの時間のこと。バッターと対峙した時、先に背中を見せない。横の時間を、自分のリズムで長くとって投げるようにしてるんです。ぼくは、横の時間の勝負だと思ってるんで」。

野球は、守る側が仕掛ける特異なゲームだ。だから、バッターは攻め手だが、受け手でもある。

森原は、その特徴を最大限に活かそうと考えているのだろう。つまり、主導権を握って、相手との駆け引きを制する。その「間の勝負」に重きを置いているのだという。

「例えば、横の間を長くとって、そのまま目一杯で投げようとしたら、バッターは150キロの直球が来ると思って構えるかもしれない。それはされたくないんです」。

「だから、ゆったりしながら150キロだったり、相手の考えたのと違うボールが行くように。いろいろと考えてやっているんです」。

◆目指すは圧倒的なピッチング

森原は、いつも数字の目標を公言しない。そうしたところにも、彼らしい哲学が見え隠れする。

「正直、個人的には目標を掲げてはいますよ。でも、そんなのは言うことじゃない」。

「ぼくの場合、まずはシーズンを通して、一軍に帯同して仕事をする。1年やってみて、どんな数字が残るか。それがプロ野球選手としての自分のベースになると思っているから」。

森原は1年目、開幕からフル回転するも失速して途中離脱を経験。2年目は前述の手術と術後リハビリのため、一軍合流は8月半ばだった。だから、シーズンを通じて一軍に帯同するのは、今季が初めて。

これまでの好不調がなく安定して見えるが、それには自身も現役時代はケガに苦しんだ経験を持つ、伊藤投手コーチの起用ペースがハマっているのもあるようだ。

「登板ペースが前と違うのはあります。すごく投げたりしたり、まったく投げなかったりというのもない。コンスタントに投げていって、このペースならいけるかなというのはあります」と森原。

一方の伊藤コーチは、「もちろん、手術をした選手だから気をつけています。でも、本人も疲れをためない工夫をしているようで、見ていて大丈夫かなと」と信頼をのぞかせる。

侍ジャパンのデビュー戦では、メキシコの強力打線を相手に圧巻の三者凡退劇を見せたが、目指すのはそうした圧倒的なピッチングだという。

「圧倒的な三振とか、圧倒的な三者凡退とか、圧倒的な差をつけてアウトを取りたいと思っています。余力を感じさせるくらいに。侍ジャパンの時はそれができましたね」。

そう言って顔をほころばせる。だが、森原は日ごろから「この世界は、簡単にやっていける世界ではない」と覚悟をしている選手でもある。

どんな努力をしようと、経験を重ねようと、積み上げた自信が繰り返し壊される世界。そんなことは百も承知と邁進している。

「調子は波がある。落ちる時に何を備えてどうするのか。引き出しは増えています」。

ほとんど表情に出すこともなければ公言も控えめ。だから、一見してわかりにくいタイプだが、「圧倒的ピッチング」という華のあるパフォーマンスを何度も見せてくれるのだから、その登板は見逃せない。

文/写真:松山ようこ

松山ようこ

松山 ようこ

フリーランス翻訳者・ライター。スポーツやエンターテイメント関連コンテンツの字幕翻訳をはじめ、Webコンテンツ、関連ニュース、企業資料などの翻訳や制作を請け負う。J SPORTSでは、主にMLBや侍ジャパンのほか、2015シーズンより楽天イーグルスを取材し、コラムやインタビュー記事を担当。野球の他にも、幅広くスポーツ選手はじめ著名人を取材。Twitter @yokobooboo

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