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6月30日。中日ドラゴンズ、オリックスバファローズ両球団から2対2の交換トレードが発表された。
2日前の6月28日。オリックスバファローズ武田健吾は、タマスタ筑後にいた。夜、2軍マネージャーから宿舎の部屋に呼ばれた。「明日、大阪に帰ってくれ。球団事務所に行ってくれ。僕の口からはこれ以上伝えられない」。
武田は「びっくりしましたね。最初は何か悪いことしたかな?って思いました。心当たりはないですよ。でも、すぐに思いました。ああ、そういうことかって」。
その時トレードという言葉は聞かされなかった。移籍先がセ・リーグであること、そしてドラゴンズであることも。翌日、武田は大阪に戻った。球団事務所でトレードを告げられた。移籍先は中日ドラゴンズ。
武田は「トレードって予想はもちろんしましたが、ドラゴンズと聞いてびっくりですよ」と笑って振り返る。
「でも、さらに驚いたのは僕一人じゃなかったんですね。松葉さんと一緒だったんで。同期入団だし、よく面倒を見てくれた先輩でしたから心強かったです」と話す。
プロ野球の世界にはあって当然の出来事。それが自分の身に降りかかった。しかし、武田健吾は気持ちの整理はすぐについたと言う。
「仲間と離れるのは正直寂しかったですね。色々な思い出がありますから。でも、すぐに切り替えました。これはチャンスなんだなって。だからドラゴンズに来て入団会見した時は、もう前向きでしたよ」と振り返る。
意外な縁を感じていた人物がいる。ドラゴンズ村上隆行打撃コーチだ。
村上コーチは「僕がオリックスの解説をしていた時にキャンプにお邪魔したんです。打撃投手も疲れていたんで特打の時、僕が投げたんですよ。その時打ったのが武田でした」。
「素直な感想は、いいもの持っているのに伸び悩んでいるなって思いましたね。振りの強さやスピード、魅力はありました。投げていて、何かきっかけをつかめば伸びそうだなって感じましたよ」と話す。
パからセへ。武田を待っていたのは生活環境の変化以上にリーグの変化だった。“人気のセ、実力のパ“はもう遠い昔の話だが、やはり違いはある。
武田は「正直、違いはかなりあると感じます。パ・リーグならば、ここはストレートで力で押してくるなって場面も、セ・リーグはいつ真っすぐ来るんだろうってくらいです。逆にストレートが見せ球かなと感じるくらい変化球は多いですね」と話す。
さらに武田は「ウエスタンで対戦したことのある投手はいますが、それでも球筋は見慣れていないんで、ほとんどの投手が初物ですね」。
「それに、今は主に代打での起用ですから、9番ピッチャーに代打ってケースが多いので、準備するタイミングもパリーグと違います。もちろん球場も初物が多いですし。毎日が“初“です」と教えてくれた。
村上コーチはこう話す。「まだ来て間もないので、戸惑いはあると思います。でも、初球から振れるでしょ。それが彼の持ち味ですよ。武田はドラゴンズでもトップレベルの振りをするので」と期待は膨らむ。
武田は「いい場面で使ってもらっても失敗の方が多いですね。とにかく今は1軍にいるので毎日が経験だと思っています。ひどい失敗も多いですが切り替えてやります」。
生活拠点も変わり全てが一新された。話す表情は常に笑顔。その言葉はまるでルーキーのように新鮮だ。残り試合は少ない。今年は経験するシーズンになるだろうが来年以降、武田健吾は面白い存在になってくれそうだ。
文/写真:森貴俊
森 貴俊
1976年愛知県出身。東海ラジオ放送スポーツアナウンサー。ドラゴンズ戦中心のガッツナイターをはじめJリーグ、マラソン等スポーツ実況を担当。原点回帰を胸に、再び強き竜の到来を熱望する43歳。日々体力の衰えを感じるがドラゴンズへの喜怒哀楽は衰え知らず。今年もマイクの前で本気で泣いて怒って笑います!
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