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野球 コラム 2019年7月29日

【中日好き】福敬登、自分が一番

野球好きコラム by 森 貴俊
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野球好きコラム 中日好き

7月の大型連勝後、待ち受けていたのは大型連敗だった。チームの順位が安定しない中、セットアッパー、ドラゴンズ福敬登の投球は日々安定感を増している。

入団4年目の今シーズン、7月28日現在、26試合に登板し防御率はなんと0.90。登板16試合連続無失点と抜群の数字を残している。そんな福も、ここまでの道のりは決して順調ではなかった。

左肩関節唇を損傷し2017年オフには育成契約となった。2018年再び支配下登録に戻った。一時は現役続行も危ぶまれた。

福は「手術か保存療法かの選択でした。投げられる可能性が高い方を選びました。少しでも野球が続けられる方を選択しようと」。

メスを入れなければ痛みが消えないかもしれない。また再発することも十分に考えられる。しかし福は保存療法を選んだ。

そこから試行錯誤の日々が始まった。なぜ痛みが生じるのかを考えた。そして自分の筋力やフォーム、すべてを徹底的に理解した。

「同じことをしていても痛みは消えないです。痛くならない投げ方、そして筋力アップを徹底しました。肩に集中して負担がかかっていたので、まずはそこの改善からでしたね。本当に戻れるのだろうか。そう思った事は正直ありましたね」。

とにかく優しい。誰とでも笑顔で会話をする。辛い思いをそう感じさせないのも福の魅力だ。

2018年秋季キャンプ。福は沖縄にいた。一部投手陣のみで行われたキャンプ。いつも笑顔の福だが、このキャンプの顔は違った。

「新体制になってチャンスだと思います。逆にアピールできなきゃ終わりです。それくらいの思いでこのキャンプをやります。故障から支配下に戻ったのにここで終わりたくない」。

「故障から戻る為にやって来たんじゃないです。活躍する為にやってきたつもりです。来年(今年)ダメなら終わりって思っています。だから後悔はしたくない」。悲壮感さえ感じる福の表情は決意に満ちていた。

福はモデルチェンジの明確なプランを持っていた。それは故障しない為のチェンジであり、進化するためのチェンジでもあった。その1つが対左打者への絶対的な強さだった。

福は「自分の色、チームにとって武器になるには左キラーだと思っています。その為にクロスに構えてギリギリまでボールを見せないフォームに変えました。」。

「もう1つが真っスラ。僕は元々ストレートがスライダーするんです。きれいな真っすぐを投げたいんですが、これはこれでいいじゃないかなと考え方を変えました」。

「なにも綺麗なストレートだけがストレートじゃないかなと。これも有効的に使える方法があると思います」。

「あとは他のピッチャーがどうとか、考えない。関係ないです。自分が一番だと思って練習します。自分の力が上がれば、それがチーム力になるわけですから。チームの為にじゃない。全ては自分の為だと思っています」と話した。

開幕1軍とはならなかったが、秋から半年が経過した5月3日ナゴヤドームのヤクルト戦、福は今シーズン初登板を迎えた。結果は2失点。ヤクルト左の長距離打者、村上にスタンドまで運ばれた。

「悔しかったですね。左打者にあそこまで運ばれるのはダメですね。俺は何してんだって。でも改めて、1軍は何となくってボールが命取りになるって事を教えてもらいました。もう1つ僕のなかで火がつきましたね」。

ここまで26試合で失点した試合はわずかに2試合。打たれた本塁打はその村上の1本だけだ。現役続行が危ぶまれた場所から今、福は1軍で欠かせない存在になりつつある。

決して諦めない。その姿勢に心から拍手を送りたくなる。

絶望的な故障からまだ2年。1軍の試合はどこか遠い場所だった。来る日も来る日もナゴヤ球場のトレーニングルームが福の主戦場だった。孤独と向き合い不安に打ち勝ってきた。そんな日々が福を強くした。

チームは苦しい状況が続いている。でも、福の言う「自分が一番」。どん底からここまではい上がってきた福敬登からは、今チームに必要な底力を感じる。

文:森貴俊

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森 貴俊

1976年愛知県出身。東海ラジオ放送スポーツアナウンサー。ドラゴンズ戦中心のガッツナイターをはじめJリーグ、マラソン等スポーツ実況を担当。原点回帰を胸に、再び強き竜の到来を熱望する43歳。日々体力の衰えを感じるがドラゴンズへの喜怒哀楽は衰え知らず。今年もマイクの前で本気で泣いて怒って笑います!

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