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準決勝から勝ち上がったのは、終盤に強い明大と粘り強さがある佛教大だった。
明大にはエースで主将の森下投手の登板を見ずとも、竹田投手と伊勢投手が試合を作ってくれる安心感がある。そのおかげもあり森下投手は準々決勝の強豪東洋大に登板したのちに、肩のメンテナンスにあたることができた。そして決勝は、満を持しての今大会2試合目の先発であった。
「ピッチャーとして貢献したくて気持ちを入れて投げました。打撃は北本と喜多を中心に強力なので」 持ち前とする155㎞前後もの快速球がうなり、そこにキレが良い変化球を交えて、前半から快調に飛ばしていく。 打線は佛教大の先発中山(塁)投手と二番手の丸山投手にランナーが重圧をかけて攻略し、3回表には3-0とリードする。その後、森下投手はしばしばランナーを背負いながらも、しっかりと踏ん張りをみせた。 ここまで逆転で勝ち進んできた佛教大の送りバントを多用するていねいな野球に、もし、守備のエラーや送球ミスが絡んでくると、そこから崩されていくのは明らかであった。
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「2アウトから得点できる粘りと、守備においてもそれぞれに集中力がありますから」 明大の善波監督がレギュラー選手に全幅の信頼を置いていた。 その野手が鍛え上げられた守備と機敏な牽制でランナーを刺し、ことごとく相手のチャンスの芽を摘み、森下投手の負担を和らげていた。
「38年ぶりに優勝する、優勝しようと言い続けました」
4年生になって、より自覚が出てきた主将の森下投手だった。
決勝での明大は他を圧倒する豪放無比な野球ができるかどうかが優勝へのカギであった。
そのもの佛教大が基本とするていねいな野球と送りバントは、明大のように攻守に厚みがあるチームに対して、その地の利もあってか苦慮が見てとれた。
それは人気の東京六大学リーグで揉まれ研ぎ澄まされた技術、さらに厳しさあふれる戦国東都などの列強チームなどに対抗していくためには、果たしてどのような野球が望ましいのだろう。
「まだ、発展途中のように思います。もう少し時間をかけながらですね」
浄土宗の住職である田原監督は、その教義を大切にして選手たちにこんこんと説いていた。それで選手みんなが同じ方向を見てカバーしあい、用具と1個のボールを大切にプレーする姿があり、そこに選手たちの精神面における充実と充足を感じた。
日曜日の準決勝では、東農大北海道オホーツクは果敢に闘ったが最後に力尽きた。全国から集う選手がおおらかな北海道出身の選手たちと切磋琢磨して形づくられた新しいタイプの豪快な野球をグラウンドで魅せてくれた。そして選手たちは胸を張って堂々と網走へと帰っていった。 また剛球投手を揃えた東海大はわずかなミスから勝ち運を失っていたが伝統あるチームの貫録をみせた。
「秋にこの借りを返したい、優勝したい」
各チームが口々に言う。
ところが秋には秋の風が吹く。
ひと夏を超えて、これまでリーグ戦で負けていたチームがさらに伸びてくるのが常となり。春は春の王者であり、秋には秋の闘いがある。
明大は38年ぶり6回目の優勝を成し遂げた。また、今大会は福岡大と星槎道都大に始まりタイブレイクの熱戦が幾度もあった。 いま、学生野球の戦力はかなり拮抗してきている。
【大会表彰】
最高殊勲選手賞 森下暢仁(明大)
最優秀投手賞 森下暢仁(明大) 18回登板 2勝 防御率0.50
首位打者賞 北本一樹(明大) 13打数7安打 打率0.538
敢闘賞 木下隆也(佛教大)
特別賞 東農大北海道オホーツク
文:岩瀬孝文
岩瀬 孝文
ノルディックスキージャンプの取材撮影は28年以上、冬季五輪は連続5回、世界選手権は連続12回の現地入り取材。スキー月刊誌編集長を経て、2007札幌世界選手権では組織委員会でメディアフォトコーディネーターを務めた。 シーズンに数度J SPORTS FIS W杯スキージャンプに解説者として登場。『冬はスキー夏は野球』という雪国のアスリートモードにあり、甲子園の高校野球や大学野球をつぶさに現場取材にあたっている。
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