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野球 コラム 2019年5月29日

【中日好き】高橋周平、1日1本

野球好きコラム by 森 貴俊
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野球好きコラム 中日好き

4月後半、高橋周平は長いトンネルに入ってしまった。抜け出そうと思ってもなかなか抜け出せない。ゴールデンウィークの12連戦中。チームが苦しい時にキャプテンとしてもどかしさが募る。

光が見えたのは5月5日、子供の日だった。ヤクルト2人目、中尾から放ったライトへのファール打球。高橋周平の身体に確かな感覚が走った。「あ、今のだ!」。

猫背になっている。前かがみ。体が突っ込んでいる。色んな事が言われた。もちろんトンネルを抜け出す為のアドバイスだが、試行錯誤も糸口がつかめないでいた。

しかし、この日の感覚は違った。高橋は「打った瞬間、あ、今のだなって思いました。タイミングの合い方が違ったんです」。

翌日の広島戦から高橋周平の猛打賞ラッシュが始まった。この日からのカープ3連戦は、13打数8安打4打点、打率.615をマークした。長いトンネルが嘘だったかのように、振ればヒットの状態に入った。

「広島戦で感覚が確かな物に変わりましたね」。

その“感覚”を高橋は言葉で説明した。

「打ち出すポイントと、ボールにバットが当たるインパクトがほぼ同じだった」。

「不調になって、上下の割れとか、形ばかりを気にしていたんですが形ではなくタイミングの取り方だったんです。タイミングの取り方を早めにすることで、インパクトまでに間ができました」。

村上打撃コーチはこう説明する。「誰でも通る道です。周平はこれまで不調に陥るとすべてをリセットしていたが、今回は根本は変えていないんです。これまでやって来た事に枝葉をつけたというかね」。

「バッティングの引き出しの多い選手ではないから。トンネルに入った時は引き出しを増やす作業だと思っていました。形は教えられるしアドバイスできる。そんな中で自分の感覚とマッチさせていく。これの繰り返しですよ」。

「好調は続いてほしいが、今の状態がずっとは続かない。必ず崩れるのがバッティングなんです。その時ですよね。どれだけ短時間で抜け出せるか楽しみですよ」と話す。

5月6日から始まった高橋周平の猛打賞ラッシュは、5月28日現在で、月間打率.451、猛打賞は8回を数え、プロ野球記録に並んだ。5月の月間MVPも視野に入る成績だ。

高橋周平は「猛打賞?1日1本打つのが大変なんです。毎日3本狙って打てる物じゃないです。これまでも1日1本、そう思ってやってきました。その考えは変わりません」。

打者として一つステージが上がったのか?

「それが分かるのは今じゃないでしょ。シーズンが終わった時にそう言ってもらえたらいい。自分では言えないですよ」。

高橋周平は打撃に関して派手なコメントは一切しない。それは誰より、打撃の不安定さを知っているからだ。今の感覚が明日にはなくなるかもしれない。そんな不安と毎日戦っている。

「不調にならないほうが良いに決まってますよ。でもそれはない。どんな凄いバッターでも必ず打てない時期は来ますよ。でもそこをどれだけ早く抜け出すか。不調な時でも1日1本。だからこそのレギュラーだと思います」。

借金6まで後退したドラゴンズだが、そこから連勝を飾り打線も息を吹き返した。キャプテンとしてレギュラーとしてチームを引っ張る高橋周平は今、ドラゴンズに最も必要不可欠な男になった。

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森 貴俊

1976年愛知県出身。東海ラジオ放送スポーツアナウンサー。ドラゴンズ戦中心のガッツナイターをはじめJリーグ、マラソン等スポーツ実況を担当。原点回帰を胸に、再び強き竜の到来を熱望する43歳。日々体力の衰えを感じるがドラゴンズへの喜怒哀楽は衰え知らず。今年もマイクの前で本気で泣いて怒って笑います!

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