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野球 コラム 2019年5月13日

【楽天好き】ジャバリ・ブラッシュ、イーグルスを勝利に導くナイスガイ

野球好きコラム by 松山 ようこ
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一番の強敵であるソフトバンクを相手に、7点ビハインドからの逆転勝ちを収めた8日。楽天勝利の瞬間は、楽天生命パークでは、中継カメラが揺れるほどの大歓声が轟いた。

その劇的なサヨナラ打を決めたルーキーの辰己涼介のもとへ、真っ先に駆けつけて彼を掲げたのが、ジャバリ・ブラッシュだ。

2メートル近い大男のブラッシュは、辰己を主役とばかりに持ち上げると、すぐに少し離れて、ほどよい距離でチームメイトともみくちゃになって喜んだ。なんとも、縁の下の力持ちで控えめな性格だなあと思った。

この試合はキャプテンの銀次が5安打を放ち、今季初登板の戸村健次が5回から4イニングに渡って無安打の快投をするなど、辰己の他にも“ヒーロー”がいた。

だが、実はブラッシュこそ、7点ビハインドから2ランで反撃の狼煙をあげ、あわせて5打点を叩き出したスーパーヒーローだったのだ。

◆カリブの小国で見出され、母に背中を押されて…

さらにブラッシュは、翌日のソフトバンク戦でも2ランで反撃を牽引。今月に入ってから、誰よりも派手に活躍している。

「まだまだこれから」(2ランのコメント)
「チームが勝つために次も打つ」(翌9日の9号2ランのコメント)

いずれも淡々と語っていて、どんな劣勢からも巻き返してやるという、静かな執念が感じられるというもの。控えめながらも秘めたハングリー精神は、その生い立ちやキャリアからも垣間見える。

初めて話したのは春季キャンプ。あまりに大きいので見上げて、「(アメリカ時代での)ニックネームのBig Daddyどおりに大きいですね!」と声をかけると、上半身を折り曲げて照れ笑いした。

出身は、カリブ海に浮かぶヴァージン諸島のセント・トーマス島。プエルトリコのすぐ東に位置し、首都のあるセント・トーマス島はアメリカ領だが、ベースボールはあまり盛んではない。

ブラッシュも、その大きな身長からバスケットボール少年だったそうだが、母に背中を押されてベースボールに転向。

地元紙などによると、島で始まったばかりだったという、若い才能を見出すプログラム(特別野球教室のようなもの)に参加し、程なくスカウトの目に止まると、見事アメリカ行きの切符を手にした。

2007年にはホワイトソックス、2009年にはレンジャーズからアマチュアドラフトで指名されたが、本格的にベースボールに取り組んだのも15才と遅く、試合経験も少なかったため、「まだ準備と勉強が足りない」と辞退。

フロリダの大学でハードな練習を積んで、20才となった2010年にマリナーズからドラフト8巡目で指名され、「3度めの正直」でプロとなった。

メジャーデビューは、それから6年後。アメリカ本土で独りマイナーから這い上がり、開幕メンバーに残ったブラッシュは、いの一番に母に電話したという。

母はブラッシュを含めた3兄弟を育てあげたシングルマザー。その後ろ姿でも、ブラッシュに与えただろう影響は計り知れない。

◆考えて、工夫した独特の打撃スタンス

ブラッシュの打撃スタンスはかなり独特だ。両足を揃え、刀を構える武士のように右肘を鋭角にあげて構える。

持ち手は少しだけ短く。このスタンスにしたのは、ほんの2年前のこと。メキシコのウィンターリーグで試行錯誤して行き着いたという。バットを短く持つきっかけは、さらに3年前のことだという。

「2014年だよ。三振が多かったのを改善しようとしていたんだ。ある時、2ストライクに追い込まれて、こうしたらホームランがこれまでになく増えた。それからなんだ」。

お手本はいないという。自分で考えて、工夫をしてきた。学ぶことにも貪欲なようだ。2度めに話したのはオープン戦だったが、打撃が好調に見えたので、その理由を尋ねるたら、こんな返事がスラスラと返ってきた。

「まだまだだよ。でも、とにかく日々、日本の野球を学ぶだけ。対戦相手がどんな球を持っていて、どんな傾向があるのか、どんなところが弱点なのか。時間をかけないといけないし、学んでいる最中だけれど、これを繰り返していくだけだよ」。

選ぶ言葉も理知的だし、謙虚で努力家なのだと感じた。人柄もとても穏やかで、すぐにキャンプでも打ち解けていたのを思い出す。

一塁手のバックアップにも備えるということで、慣れない内野の守備練習にも必死に取り組んでいたが、「新しいことを学ぶのは楽しい」と語っていた。

守備練習で転倒するブラッシュ

ただ、ベテラン内野手の藤田一也や渡辺直人が手本を鮮やかに見せるも、ブラッシュは長い手足がもつれるのだろう。何度か派手に転んでいて、その度に和気あいあいとした笑いがどっと起きていた。

早くもチームトップの2桁、10本塁打をマーク(5/12現在)。相手チームのマークも厳しくなるだろうが、「学ぶこと」を「繰り返し」て、ますます進化していくことに期待したい。

松山ようこ

松山 ようこ

フリーランス翻訳者・ライター。スポーツやエンターテイメント関連コンテンツの字幕翻訳をはじめ、Webコンテンツ、関連ニュース、企業資料などの翻訳や制作を請け負う。J SPORTSでは、主にMLBや侍ジャパンのほか、2015シーズンより楽天イーグルスを取材し、コラムやインタビュー記事を担当。野球の他にも、幅広くスポーツ選手はじめ著名人を取材。Twitter @yokobooboo

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