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野球 コラム 2019年4月22日

【楽天好き】島内宏明、「嫌々」やっている4番でブレイク中

野球好きコラム by 松山 ようこ
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野球好きコラム 楽天好き

「カッコよすぎでしょう」「4番らしい仕事」「仕留めるべき球を、一発で仕留めた」。

4月20日のオリックス戦でのこと。この日、J SPORTSで解説を務めた牧田明久氏と実況の中田浩光氏が、口々にこう褒め称えた。

楽天の4番・島内宏明が放った今季1号アーチである。よほど嬉しかったのだろう。ダイヤモンドを走る島内はニコニコの笑顔だ。

3番・浅村栄斗を塁に置いての2ランホームラン。「浅村の後ろは大切」と平石監督が意図する期待に満点で応えた“復活劇”だった。

この4日前の西武戦で、島内は顎と鎖骨あたりに死球を受け、担架で運ばれた。公式発表による診断結果は「右頸部打撲」。にわかに球場を騒然とさせた退場劇となったが、こうして戻ってきた。

しかも、周囲の不安を払拭してあまりある活躍ぶり。この一発で楽天はリードを広げると、その後も粘って5-3で勝利。記念すべき球団通算900勝を飾った。

不安視されていたのは、ケガの影響。解説の牧田氏も、「頭部への死球のあとは恐怖心がある」と自身の経験を明かしていたが、島内は相手バッテリーの執拗なインコース攻めにも動じない。

そうして、この日もしっかりと4球を見極めると、待望の今季初アーチを放ったのだった。

◆「身体づくりのためにアイスとポテチ」の謎

オープン戦から4番に就いているが、本人は「嫌々」なのだという。もともとは、俊足好打のタイプ。昨季は2年連続の2桁ホームラン(17年に14本塁打、18年に11本塁打)、自己最多打点53をマークしたが、「大砲」のタイプではない。

とはいえ、“秘めた”パンチ力も、成績にますます顕れるように。持ち前のミート力と選球眼に加えて、スキあらば仕留める「長打力」が磨かれ、相手にとってこれ以上ない、新しくも厄介な「4番」として存在感を放っている。

年々レベルアップをしているのは、努力と試行錯誤の賜物だろう。本格的に肉体改造に取り組んだのは、2015年のオフから。ビルドアップに成功すると、以来、食の意識もアスリート仕様に。

「食べることも仕事ですからね。ぼくは栄養バランスが良いものなら、1日3食とも同じものを気にすることなく食べますよ」とこの春季キャンプでも話していた。

思い出されたのは、今年始めに放送されたバラエティ番組に出演した島内が「身体づくりのためにアイスとポテチを食べている」と語っていたこと。

スタジオでも、SNSでも大いに盛り上がったようだが、なぜそんなことを言ったのか。それは本当なのか。

球団栄養士の長坂聡子さんに尋ねると、「シーズン中、体重が落ちて不調になった時、食欲もなかった時期があったんです」。

「それで、何も食べないよりは食べた方がいいからって、お菓子でもアイスでもいいからってアドバイスをしたことはあります」と、コメントの元と思しきエピソードを、苦笑いしながら教えてくれた。

長坂さんは加えて、島内が普段からいかにプロアスリートとして、食に対して意識が高いか、あわせて証言してくれている。

◆「嫌だけれど好き」「本当のことは言わない」

だから、「身体づくりのためにアイスとポテチを食べた」ことは、おおらかに見ると本当のことと言えなくもないが、実はお笑いのネタにするような背景ではなかったことが伺える。

にもかかわらず、そう見せてしまうことに、島内の底知れないたくましさ(?)を覚える。

チームでいじられ役とも言われてきた。17年に4つ下の田中和基がルーキーで入ってくるやいなや、「メンタルの師」と仰いだ(とても仲が良さそうだけれども)。

そうして、島内はチームに欠かせないピースとなり、自分にないものを持っているとあれば、年下からも貪欲に学んできたのだろう。

笑われようと、誰になんと思われようと、プライドも上下関係もなく。さまざまな面で順応し、向上してきたわけである。

キャンプでのある日、個人練習の最後に、黙々と素振りをしていた。見るからに、楽しそうではない。でも、島内は言うのだ。「素振りは嫌いだけれど、好きなんです」。

ちょっと意味がわからなかった。すると、「年を重ねるのって、嫌だけれど好きですよね? それと同じです」と島内。つまり、避けては通れないファンダメンタルなことというのだ。受け容れることで、正しく成長ができるからと。

こうした独自の考えが聞かれるだけに、島内を取材するのはとても面白い。すると、そんな印象を持ったところで、「でも、ぼく本当のことは簡単には言わないですから」と翻す。

「だから、どこまでが本当かちゃんと見極めてくださいね」。思わずこちらの背筋が伸びる。

取材対象者の考えをいかに正確に、誠実に伝えるか。悩んだ末、ありのままに書くことにした。どこまでが本当かはわからないから。それに“島内節”は、そのままでこそ彼らしさが伝わると思うから。

それでも、ともあれ今季1号が飛び出した時の、あのニッコニコの表情は、嘘偽りない本当の笑顔と見たけれども。それに、4番も「嫌いだけれど、好き」なんじゃないかと思っている。

松山ようこ

松山 ようこ

フリーランス翻訳者・ライター。スポーツやエンターテイメント関連コンテンツの字幕翻訳をはじめ、Webコンテンツ、関連ニュース、企業資料などの翻訳や制作を請け負う。J SPORTSでは、主にMLBや侍ジャパンのほか、2015シーズンより楽天イーグルスを取材し、コラムやインタビュー記事を担当。野球の他にも、幅広くスポーツ選手はじめ著名人を取材。Twitter @yokobooboo

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