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野球 コラム 2019年3月28日

【オリックス好き】西浦颯大と佐野皓大、“西村チルドレン”から漂う甘く危険な香り

野球好きコラム by 藤原 彬
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野球好きコラム オリックス好き

「00」と「93」――。

ただでさえ珍しい数字を背負う西浦颯大は178cmと小柄で、佐野皓大は73kgと細身だから、それぞれの背番号は一際、強調されているように映る。

それ以上にアピールできる個性を、売り出し中の両者から見出すのは容易い。

共に高卒でプロ入りした2人は春季キャンプから一軍に抜擢され、2年目の西浦は恵まれた「身体能力」を武器に、野手転向3年目の佐野は自慢の「足」に磨きをかけてアピールを続けている。

西浦は2月の対外試合で「2番・センター」の座を射止めて、オープン戦に突入すると広い範囲をカバーする守備で美技を連発。

ところが、16試合で打率.161と一軍の壁に当たり、四球もわずか3つしか得られなかった。だが、積極性は功罪の両面で、3月8日にはジャイアンツの菅野智之が初球に投じた高めのボール球を捉えて、同点3ランを叩き込んだ。

12日のライオンズ戦は、9回2死2・3塁の場面でカウント1-2と追い込まれながら、直後もしっかりと振り抜いた打球は、やや詰まりながらも外野の前に落ちて逆転サヨナラ打となっている。

機会はそれほど多くないにしても得点圏打率は.429で、チーム最多&両リーグ4位タイの12打点を稼ぎ出した。

「バントのサインが出ないうちは走者も打って進めたい。1・3塁の形を作りたいですね」と本人が語っているように、犠打は1つだけ。

西村徳文監督が1、2番に求めるのは出塁率の高さだが、低打率に沈んだ西浦を一貫して起用し続けた。まだオープン戦であるという状況に加え、勢いを呼び込む力には我慢を続ける価値があると判断したからではないか。

昨季、チームはリーグ最多の118犠打を記録したが、正攻法では十分な得点が取れなかった。

「打てる2番打者」が確立できれば、待球型で粘り強いリードオフの福田周平とは補完関係として相互に作用しそうだ。昨年までの弱みが強みへと変われば、そのプラスは計り知れない。

打線のキーマンとなりそうな男は走攻守を備えて、意外性と爆発力も秘める。鋭い眼光や「目立ちたい」から着用している赤いギアも印象的だ。

西村監督がマリーンズを率いた際、チームを牽引した西岡剛が頭角を現した頃の姿と重ね合わせるのは時期尚早だろうか。

持ち前の快速を一軍切符とした佐野は「代走枠」を掴み取り、オープン戦では12球団で2位の7盗塁と分かりやすく持ち味を示した。

その走塁は「速い」よりも「軽い」が表現として適切かもしれない。いかにもスプリンターらしいしなやかな体躯は最初の2、3歩ほどですいすいと加速し、長い足からするりとベースへ滑り込む。

ただ、オープン戦での盗塁失敗は3つで、成功率7割は切り札としてはまだ物足りない。投手から野手へ本格転向してからの経験値が不足していて、なかなか「絶対に大丈夫」と思えるスタートが切れないのだと本人は言う。

打球判断からスタートのタイミングを計り、スライディングまで課題は多く、実戦で数を重ねる中で「これぐらいなら行ける」という基準を模索している段階だ。

それでも「真っすぐ走ることは誰にも負けない自信があります。スピードを生かしていけば、それなりの足の選手になれると思う」と手応えものぞかせる。

昨夏に右打ちから両打ちに変更したのも最大の長所を生かすためで、打撃でも取り組むべきことは多い。

「前に飛ばさないと自分の足が生きないので、左打席は西村監督の勧めもあって春季キャンプにノーステップにしました。それまでは確率が低かったですけど、ブレない部分が多い。右とは別のことを意識して打つようにしています」

走塁も打撃も発展途上だが、シーズン開幕後も託されるのは、試合の行方を左右しかねない場面だ。

「代打・佐野」のコールに、敵味方だけでなく観客までもが「走る」と確信。球場全体が息を飲み、視線を一身に集めながら、颯爽と次塁を陥れて周囲をしびれさせる。

“足のスペシャリスト”が突破口を開くシーンが定着すれば、拾える試合も増えていくに違いない。

「大事な場面の代走で行くことになると思います。そこでミスはしたらいけないですけど、慎重になりながらも勇気を持って」仕掛けていく。

代替画像

藤原 彬

アルバイト時代を含めて10年余り野球専門誌の制作に携わり、2016年にFAとなったさすらいのスポーツウォッチャー。「二兎を追う」を信条に、編集、執筆、写真、発信、校閲をこなす5ツール・プレーヤーを目指して勉強中。食にうるさい関西人だが、行く先々で「あんまり面白くないね」と言われる。同い年のレブロン・ジェームズは誇り。

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