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端正な顔立ちでスーツをスタイリッシュに着こなす。ファッションモデルのような雰囲気を漂わせながら、東北楽天ゴールデンイーグルス(以下、楽天)の岸孝之(34)がNPB AWARDS 2018に登壇した。2018シーズンは自身初の最優秀防御率のタイトルを獲得。チームが最下位に沈むなか、安定したピッチングでチームトップの11勝をマークし、オフには最年長メンバーとして日米野球で侍ジャパントップチームにも選出された。
埼玉西武ライオンズ(以下、西武)から楽天に移籍して2年。チームに合流して初の春季キャンプでは、誰よりも走り込みをしてコーチ陣を驚かせ、翌年のキャンプでも1時間半ブルペンにこもって熱投し、クールな表情のまま、黙々と準備を整えて結果を出すベテランだ。
2018シーズン9月からは、西武時代に「カズさん」と慕った元チームメイトの石井一久が楽天のゼネラルマネージャー(GM)に就任し、打点王となった西武の浅村栄斗を獲得した。13年目を迎える右腕は、2018シーズンをどう振り返り、2019シーズンへ向けてどんな思いを抱いているのか。
2018シーズンを振り返って…
最優秀防御率は自身初のタイトルです。お気持ちは?
ん~…(クールな表情のまま)こんなですけど、やっぱり嬉しいですよ。そう見えないんですけど、ちゃんと嬉しいんです。
表情に出さない、抑えている感じで、より伝わる気がします。
別に抑えているわけではないんです。普段、出さないのも。出したくないというのはありますが、試合中に出るガッツポーズとかも、やっぱり考えて出すものじゃない。自然にそうなるものじゃないかなって思うんです。
シーズン全体としては、2018年はどんなシーズンでしたか?
個人としては、その時、その試合に「勝ちたい」って思って挑んだ結果、うまく激しい波もなく安定して、1年間を通じてやれた。それは、すごく良いことだったと思います。だから、こういう結果に繋がったのだと思います。けれども、チームとしては、僕が「勝って、勢いに乗せたい」「チームで連勝したい」って思っても、それがうまくいかなかった。それで、この順位になった…。自分が良ければいい話ではないので、こうして何もできなかった自分は、今後どうしようかな、どういうことをしていけばいいのか、考えますね。
チームの低迷について、無力感を抱いている?
ですね。他の投手が悩んでいたり、なかなか勝てなかったりというのを見ていたので。でも、例えば辛島(航)にしてもピッチング自体は良かったですから。ただ、自分に「(調子の)波がなかった」のも珍しいことなんです。移籍1年目も良かったんですが、勝てませんでした。
移籍して2年。心境の変化
楽天に来て2年。何か変わったことや思うことを教えてください。
特にないですよ。僕自身で変わったこと…。思うのは、西武と楽天では、調整メニューがだいぶ違うのですが、今のほうが僕には合っているんじゃないかなっていう気はしています。
楽天に来て、すぐに馴染んでいた印象です。
それはやはり、則本(昂大)だったり、嶋(基宏)だったり、今江(年晶)さんとか、あと1年目は(松井)稼頭央さんもいて、すごく気を使ってくださったおかげ。僕がちゃんと溶け込めるよう、雰囲気をつくってくださったんです。
(移籍1年目のキャンプから)すごく練習しているイメージがあります。
あれはキャンプだからです(笑)。シーズン中も練習はしていますが、チームの練習メニューに従いますし、なるべく疲れを残さないようにしていますから。
(違いというと)西武はランニングなどが多かった。だからといって、楽天が少ないわけではないのですが、こちらの方がなるべく力を抜いて、登板日にベストなパフォーマンスを出せるようにというのが、僕には合っていました。
もちろん、試合でベストなパフォーマンスを出すためにというのは、どこの球団も同じだと思います。やり方や内容が違うだけで。楽天では、いろいろな調整方法が自分にちょうど合っていたのかもしれません。それに、やはりコンディショニングの星(洋介)トレーナーが、すごく投手を見てくれていますし、2018シーズンからは佐藤(義則)投手コーチが来たことも、すごく自分には大きかったのだと思います。
「カズさん」との関係
昨季、西武で長らくチームメイトだった石井さんがGMに就任しました。
そうなんです。だから、まだ慣れなくて。難しいんですよね。これまで、ずっと友だち感覚であちらも接してきてくれたから、急にそういう立場になられても…困る(笑)。 とにかく、できるだけ気をつけて「GM」って呼ぶようにしています。でも、(楽天の)選手や関係者がいないところで、「カズさん」って呼ぶ時があるからか、ついポロッと出ちゃうんです。
埼玉西武時代、チームメイトだった石井GMとの思い出というと?
ゲームをひたすらやっていましたね。最大8人同時にプレーできるんですが、それで(石井)GMが無駄にゲーム機を買って、遠征先では忘れた人に貸し出すっていう。そんな要らないでしょってぐらい(笑)。強かったのは、涌井(秀章)でしたけども。僕も勝てなかった。
2019シーズンに向けて、石井GMが着々と補強を進め、陣容も変わった。
はい。やはり、それだけ(石井)GMが本気になって、チームを何とか変えようっていうのが感じられます。だから、僕もしっかりと応えたいですね。
浅村栄斗選手の移籍
浅村選手と再びチームメイトになります。何か話はしましたか?
特別に話はしていないですが、自分がここに移籍してきた時にそうしてもらったように、浅村がやりやすいように、僕もしっかりそういう面でサポートしていけたらと考えています。
2019シーズンへの課題や目標
2019シーズンに向けての課題や目標は決まっていますか?
自分のなかで、数字をというのは特別ないです。ただ、(2018シーズンが)1年間安定したとはいっても、(先発を)飛ばしたりっていうのがあったので、なるべくそういうのをなくしたい。ちゃんと1年間、ローテーションを守りたいですね。
文:松山ようこ
写真撮影:山本恵太
岸 孝之 Profile
1984年12月4日生/宮城県出身。
東北学院大学から2006年にドラフト大社希望入団枠で西武ライオンズ(現、埼玉西武ライオンズ)に入団。2017年東北楽天ゴールデンイーグルスに移籍。2018年は防御率2.72で最優秀防御率投手賞を獲得、ゴールデン・グラブ賞を受賞。
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松山 ようこ
翻訳者/ライター/インタビュアー。主にスポーツやエンタメ分野にて実績多数。野球はプロ野球からMLB、他にもマイナースポーツからオリンピック大会まで、国内外の競技場や大会での現地取材を数多く経験するスポーツ好き。アスリートはじめ、一般人から著名人まで幅広くインタビューし、日本語と英語ともに記事やコラムにする。訳書『ピッチングニンジャの投手論』『ベイダータイム』。 ※『ピッチングニンジャの投手論 PitchingNinja's analysis of Japanese MLB Aces』 ※『VADER TIME ベイダータイム: 皇帝戦士の真実 』
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