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11月9~15日、日本で開催されたJAPAN ALL STAR SERIES「2018日米野球」。
同年のリーグ最高防御率ピッチャーの岸孝之(楽天)は、やや困ったような顔をして「緊張しっぱなしでした」と回顧した。たしかにマウンドでの岸は、珍しく冷静な顔つきが仮面のようにこわばって見えた。
今大会は侍ジャパンにとって、2019年の世界野球WBSCプレミア12、そして2020年の東京オリンピックへの前哨戦としての重要な意味を持つ。そして、その意図は一貫して共有されている。
その上で第1戦の先発、つまりシリーズの”開幕投手”として、日本代表チームを率いる稲葉篤紀監督は、岸を任命したのだ。
果たして、34歳のベテラン右腕は、これが侍ジャパンの初陣だったが、「岸のボールがメジャー相手にどれぐらい通用するか見てみたい」と期待した指揮官に応える好投を披露した。
緊張しながら大役を全うした岸が、その裏で見せた素顔とは…。J SPORTSでは、12月31日に代表チームに完全密着した人気ドキュメンタリー「結束!侍ジャパン#43」を初回放送。
選手や関係者らの裏舞台での知られざる苦労や素顔が明らかに。そこで、密着取材した番組のエグゼクティブ・プロデューサーの三木慎太郎のコメントとともにみどころをお伝えしたい。
◆DHに抜擢された「守備の人」菊池
日本で最も守備に長けた選手として名前のあがる菊池涼介(広島)。
先日、ポスティングでメジャーに挑戦する意向を伝えたとして話題になったが、これまでにもアメリカで現地メディアがその華麗なプレーを「Ninja」(忍者)と形容するほど、高い守備力が認められている。
だが今回、その「守備の名手」である菊池が、第5戦でDHに就いた。実は、その決定が伝えられたのは、その日の試合前のウォームアップ中のことだった。
菊池は「打つ人じゃないんで」と驚いた反応をすると、秋山翔吾を休ませるのが理由にあったことを告げる金子誠ヘッドコーチ。
すると、すぐ傍らでストレッチをしていた秋山に対して菊池は「自己申告でしょ!」と絡みだす。もちろん、秋山も黙っていない。そんな二人のじゃれ合い(?)劇場が始まるのだ。
菊池と秋山は仲がいい。そんな二人のやり取りとともに、裏でチームの方針がどう伝わって、彼らがどう反応したのかを見れば、その信頼関係だけでなく、チームの雰囲気もおのずとわかるというもの。
この時の様子ついて、三木プロデューサーは補足する。「菊池選手は守備の人間だから、DHになってどういう立場を取るかなと見ていたんです。
そうしたら、ずっと彼は相手チームや相手ピッチャーのことをリサーチしてる。相手ブルペンのモニターも凝視していました」。
チームのリーダー格に指名されていた菊池は、DHという役割に驚きながらも伝えられるや否や、黙々とチーム貢献のために“仕事”をしていたのだ。
◆饒舌にマスコミ対応する山川、言葉少なの岡本。スランプの裏で起きていたこととは
今大会では、侍ジャパンの「新・4番」として招集された2人の大砲がいる。47本塁打で本塁打王となった山川穂高(西武)と、史上最年少22歳にして、3割30本100打点を記録した岡本和真(巨人)だ。
だが、メジャー投手陣の独特の動くボールや、力のあるボールになかなか対応できずに苦しんでいた。
対照的にシーズン中と変わらぬ打棒を奮っていたのが、柳田悠岐(ソフトバンク)だ。
初戦にバックスクリーンへの逆転サヨナラ2ランを放った衝撃から、相手MLB選抜チームも徹底マークをしたものの、好調は止まらない。メジャー首脳陣や選手らも手放しで褒め称えていた。
そうしたなか、山川は苦しみながらも、普段どおりに快活にメディアに対応していた。不調の要因と改善案を尋ねると、身振りを交えて語った。
「普段、自分はこうフラットスイングしているんですが、それじゃ打ち損じる。柳田さん、見てたらわかるじゃないですか。ああいう(アッパースイングの)イメージで修正してます」。
「もちろん、シーズン中はしないこと。でも、ここでは結果を出さないといけない。初めての試みですが、結果にこだわりたいので」。
一方、メディアにあまり多くを語らなかった岡本も動き出す…。カメラが捉えた、はにかんだ笑顔や若き主砲2人のやり取りもみどころだ。
ちなみに個人的には山川が気合いを入れるために、ある選手にビンタをお願いするというシーンがとても好きだ。
「チームの雰囲気」を重視した稲葉監督らしい、エネルギーに満ちた結束が伝わる。ベテランも若手も、それぞれの好不調も、全員が「この決戦で結果を出す」というベクトルのもと、切磋琢磨する姿がそこにあった。
◆「結束!侍ジャパン #43」
・12月31日(月)午後7:00~午後7:30 J SPORTS 1で初回放送
※日本で開催されたJAPAN ALL STAR SERIES「2018日米野球」を特集
松山 ようこ
翻訳者/ライター/インタビュアー。主にスポーツやエンタメ分野にて実績多数。野球はプロ野球からMLB、他にもマイナースポーツからオリンピック大会まで、国内外の競技場や大会での現地取材を数多く経験するスポーツ好き。アスリートはじめ、一般人から著名人まで幅広くインタビューし、日本語と英語ともに記事やコラムにする。訳書『ピッチングニンジャの投手論』『ベイダータイム』。 ※『ピッチングニンジャの投手論 PitchingNinja's analysis of Japanese MLB Aces』 ※『VADER TIME ベイダータイム: 皇帝戦士の真実 』
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