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野球 コラム 2018年11月29日

【中日好き】鈴木博志、己の武器

野球好きコラム by 森 貴俊
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野球好きコラム 中日好き

ドラフト1位、鈴木博志のルーキーイヤーが終わった。53試合に登板、防御率4.41。シーズン前半に見せた、150キロを超える豪速球、打者をなぎ倒す姿はルーキー離れし、圧巻だった。

しかし、鈴木博志は後半苦しんだ。もちろん疲れもある。半年に及ぶ野球漬けの日々は容赦なくルーキーの体力を奪っていった。そして夏の2軍降格。その後、1軍に戻るも、シーズン前半に見せた姿は戻っていなかった。

「交流戦が終わったくらいですかね。もう信じられないくらい疲れていました。自分の身体じゃないみたいでした。頭で身体をこう動かしたいと思っても、全然動いてくれない。できるだけ早く寝て回復に努めたんですが、うまくいきませんでしたね」と振り返る。

疲労は身体だけではない。プロ1年目、毎日野球の事を考え、コーチや先輩から色んな指導を受ける。そして打たれればルーキーとは言え、容赦ないバッシングが飛ぶ。鈴木博志の頭や精神はパンク寸前に追い込まれた。

気づけば、鈴木博志の持ち味は消えていた。150キロを超えるストレートは影を潜め、空振りやファウルが極端に減っていた。投じる直球は面白いように打者に弾かれヒットゾーンに運ばれた。

「シーズン後半は、ここに投げないといけない。リード通りに投げないから打たれる。もっとコントロールをよくしないと。打たれれば打たれるほど、その考えが強くなっていた」と明かした。

2軍降格後、悶々とした日々を過ごしたという。そんな鈴木博志の姿を2軍で見ていた大野雄大は、たまらず声をかけた。

「博志、今年は打たれてもいいから自分の思うように投げてみろ。打たれるも抑えるもすべてが経験、お前にとってはそんな1年だろ」。その言葉の真意を大野は説明してくれた。

「博志の持ち味が完全に消えていたと思うんです。誰にも真似できないストレートを持っているのに、それに自分で蓋をしているというか、自分の良さを自分で消しているように見えたんです」。

チームの先輩として、大野は鈴木博志に、己の武器をもう一度思い出せと伝えようとした。

与田新監督はじめ、新しいコーチ陣の考えは鈴木博志の方向を後押しした。沖縄での投手キャンプ、阿波野コーチは鈴木博志から制球の呪縛を払おうとしていた。赤堀コーチも考え方を伝授し続けた。

赤堀コーチは「ここに投げなきゃダメ。でも、そこに投げても打たれるのが野球です。逆に投げそこなって打ち取るのも野球。彼には少々甘いコースに行っても打ち取るだけの球威がある。人には真似できないだけの威力があるならそれを磨くべきです」と話す。

秋季キャンプを終え、鈴木博志は手ごたえを感じている。「考え方は変わりました。特に沖縄での日々はきつかったですが、ちょっと自信を取り戻せた気がしています。自分の武器を自分が信じてあげないといけないと思うんです」と話した。

鈴木博志はめったに怒りを表に出さない。後輩からの“ダメ出し”も素直に聞いてしまうほど優しい男だ。

ゆえに苦しんだ一面もあったが、今年の経験は間違いなく鈴木博志を成長させた。我々の心を掴んだあの剛腕が再び唸る来春が今から待ち遠しい。

◆中日ドラゴンズ 2018 シーズンレビュー
・12月1日(土)午後7:30 J SPORTS 2 ※無料放送(休止の可能性あり)
・12月6日(木)午後9:30 J SPORTS 2

◆中日ドラゴンズ 2018 ベストゲーム ~特別編~
・12月4日(火)午後7:00 中日 vs. 阪神(9/29)J SPORTS 2
・12月5日(水)午後6:00 中日 vs. 阪神(9/28)J SPORTS 2

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森 貴俊

1976年愛知県出身。東海ラジオ放送スポーツアナウンサー。ドラゴンズ戦中心のガッツナイターをはじめJリーグ、マラソン等スポーツ実況を担当。原点回帰を胸に、再び強き竜の到来を熱望する43歳。日々体力の衰えを感じるがドラゴンズへの喜怒哀楽は衰え知らず。今年もマイクの前で本気で泣いて怒って笑います!

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