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日本で人気スポーツである野球は、良くも悪くも「旧い」ことが少なからずある。
それは例えば、礎であったり、足かせであったり。背景は個々様々だが、プロ野球で生き残るには「変わる」ことは不可欠。浅村栄斗の楽天への移籍は、もしかするとチームにとっても象徴となるのかもしれない。
リーグ優勝の古巣から最下位チームへの移籍だ。石井一久GMはじめ、西武で元チームメイトでもあった、岸孝之や渡辺直人という「旧知」の存在があったことも大きいようだ。
移籍時のコメントを考えると、“変わろう”とするチームの一翼を担う意義と自身の成長へのベクトルが重なったのだろう。
古き良き繋がりから、浅村が新しい挑戦へと意欲を燃やしている様子が伝わってくる。この3年全てで143試合にフル出場をし、ほぼ3割をキープする、昨季の打点王だ。
「来てくれるだけで意味がある」と石井GMが口説いたことに嘘はないだろうが、来季にもチームを牽引するだろう期待は否応なく高まる。
低迷したチームのなかにあって最優秀防御率を獲得した岸は、浅村と同じように背中でチームを引っ張るタイプ。
だが、同じ内野手の直人は、浅村がやって来ることで、確実に、二塁手としてのポジションに就く機会が減る。ユーティリティとはいえ、仲間でライバルとなる。にもかかわらず、むしろ今回の移籍の背中を押したとも伝え聞く。
きっと事実だろう。なにせ、直人である。彼ほど、チームを俯瞰して見られる現役選手はいないのではないか。
自身のキャリアが晩年であることも誰よりも承知している。その上でチームのために何が必要かを感じ取って、そのとおりに行動ができるのではないか。
そう思えてならない理由の一つが、シーズンを振り返ってもらった時のことだ。直人は「チームにとって必要なことなら、なんだってやります」と、ひとしきり悔しさを顕にした後、笑顔で言って去っていたのだ。
中でも繰り返していたのは、ホームで勝てなかった無念さ。「これだけ応援してくれるファンがいるのに、情けない、悔しいし…本当に情けない。みんな一生懸命やっていたのだけれど、何かが足りなかった。だから、死ぬ気でしっかりその何かを見つめ直さないといけない」。
勝てないことで増幅した重圧も認め、こうも語っていた。「誰かの責任というのは、ないんです。みんな勝てないことで余計に『おれがやらなきゃ』って気持ちが強くなったように思う。でも、それは一人で背負うのではなく、みんなで共有して戦えるようにならないといけない」。
「そういう空気づくりが大切になってくる。誰だって緊張するし、怖さもある。でも、みんなでカバーできれば。(どんな時も)安心して、萎縮することなく、試合に出る。そういうチームづくりを、自分もやっていきたいと思うんです」。
そうしたチームづくりへのビジョンは、そのまま石井GMの「来てくれるだけで意味がある」につながる。誰よりもチームの持つビジョンを早くに理解していたのではないか。
直人の「なんだってやります」の精神は、浅村のみならず新旧のチームメイトを活性化していきそうだ。
ただし、チームが変わるには、時に大きな変化も余儀なくされる。シーズン中に監督が交代したことに始まり、先日は聖澤諒が引退を表明した。
今年もまた、多くの選手たちが去っていく。こうして、チームという存在は、すべてが入れ替わるのではなく、積み重ねた上で「変わる」。
先だって、J SPORTSではシーズンのベストゲームを放送したが、直人が最も印象に残った試合はほかでもない、平石監督代行による初陣だったという。「チームとなってもう1回、1つになって戦おうっていう決意の試合だった」と語った。
また、イーグルスのオフィシャルカメラマン黒澤崇氏は、ホーム開幕戦についての思いをこう語っていた。
「監督、コーチ、選手全員が『77』を背負って、一列に並んで行った黙祷のシーンがとても印象的でした。ファンの皆さんを含めたスタジアム全体が星野さんを思う気持ちで溢れているようでした」。
「負けてはしまいましたが、8回無失点の岸選手はじめ、全員が星野さんへの感謝の気持ちを込めてプレーしていたと思います」。
そうした始まりと経緯を経て、1人ひとりが次のシーズンへの決意を新たにした。いろいろな思いを背負いながら、「チーム」は変わっていくのだろう。
◆東北楽天ゴールデンイーグルス 2018 シーズンレビュー
・11月25日(日)午後8:00 J SPORTS 2
・12月01日(土)午後8:00 J SPORTS 2 ※無料放送
・12月06日(木)午後6:00 J SPORTS 2
松山 ようこ
フリーランス翻訳者・ライター。スポーツやエンターテイメント関連コンテンツの字幕翻訳をはじめ、Webコンテンツ、関連ニュース、企業資料などの翻訳や制作を請け負う。J SPORTSでは、主にMLBや侍ジャパンのほか、2015シーズンより楽天イーグルスを取材し、コラムやインタビュー記事を担当。野球の他にも、幅広くスポーツ選手はじめ著名人を取材。Twitter @yokobooboo
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