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野球 コラム 2018年10月31日

【楽天好き】今江年晶、プロ野球選手としての覚悟と使命感

野球好きコラム by 松山 ようこ
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クライマックスシリーズ出場に湧いた1年前から一転しての最下位。これ以上ない悔しい順位が決定した今季終盤に、17年目のベテラン今江年晶は黙々と打率を上げていった。

練習中にこぼれるトレードマークの”笑顔”も変わらない。動きにムダがなく、誰よりも早くに試合前の練習も切り上げる。今江はどんな思いでバットを振り、シーズンを過ごしたのか。

◆「悔しい」「もっとできる」。笑顔に秘めた覚悟と決意

練習上がりの今江に尋ねると、少しの沈黙と重い空気が流れた。早歩きをしながら、ボソリと言う。「悔しいですね…」。爽やかな練習姿とは別人のように俯いて、チームの低迷を嘆いた。

立ち止まると、続ける。「個人としては、試合には出られた。出させてもらえた。でも、これだけ出させてもらえた以上、もっとやれたという思いもある。でも、そんなことは言ってられないし、取り返しはつかない」。

「(自分は)来年以降もどうなるかはわからないですけれど、今年の反省をしっかり生かして、来年は最高の形になれるように…とは思っています」。

千葉ロッテの看板選手として、2度の日本一と日本シリーズMVPに輝いた経験を持つ。2016年から楽天イーグルスの一員となったが、度重なるケガに苦しみ、移籍3年目でようやく規定打席に到達。

通算100本塁打のマイルストーンも通過し、シーズン打率.276で終えた。復活への手応えがあるかと思ったが、厳しい表情を崩さない。

練習中の今江

「これまでの成績と比べたら、2割7分台なんて恥ずかしいぐらいです。規定(打席)行くのも、ずっと試合に出るのも当たり前でしたし。でも、これが現実。糧にして頑張るしかない」。

「もちろん、今後もシーズンを通して、レギュラーで出ていく自信はあります。でも、今季も開幕戦で結果を出しても、(その後)試合に出られなかったりと、いい意味でも悪い意味でも期待されていないと感じました」。

「自分は生え抜きじゃないし、チーム事情とかいろんな兼ね合いがあるのも事実。だから、そこは割り切って、使ってもらった時に、自分のパフォーマンスを出せるようにするしかない」と覚悟をにじませる。

練習を早くに切り上げたのも、自分の身体の状態を考えてのことだったという。シーズン終盤だけに、これ以上の疲労が残らないよう、集中して練習して早くに引き上げれば、少しでも長く身体を休めておくことができるからだ。

◆12年以上、続けているオフの社会貢献活動

阪神藤川と談笑する今江

少しの立ち話ながら、オフの活動についても水を向けた。今江は、2006年から続けている障害者野球チーム「群馬アトム」のサポートをはじめ、同年に「今江スマイルプロジェクト」を設立。

長年、オフになると千葉県にある児童養護施設を訪問して回り、11年からは被災地の福島県いわき市の子どもたちとの交流も続けるなど、恐らく現役で最もたくさんの社会貢献活動を、長く続けているプロ野球選手の一人だ。

なかには、小児がん患者を支援するNPO団体「ミルフィーユ小児がんフロンティアーズ」など、寄付金を集めて贈るものもあれど、今江は夫婦で理事を務めるなど、活動の域は金銭の支援に留まらない。何より、今江は共に触れ合うひと時を過ごすことに重きを置く。

「もちろんお金も大事なんですけれども、やっぱり直接会いに行って、目と目を合わせて会話をすることが、一番大切なんじゃないかと思うんです」。理由は、「お金と違って、時間は代わりがきかない」から。

「実際、僕が行くことに意味があると感じられるから、行っているんですね。僕が会いに行くことで喜んでくれる、応援してくれる人が出てくる」。

「応援して僕のことを見ていてくれるとなれば、僕も結果を出して、喜んでもらいたいと力にもなる」。お互いが笑顔になれるループを生む、まさに”スマイルプロジェクト”なのだ。

今江は熱を込めて続ける。「僕が交流したことで、元気とか生きる勇気とか、そういうのを持ってもらえるかもしれないんです。僕はそういうことは、野球選手でもなくても、世の中に名前が知られている人、影響力のある人の使命だと思うんです」。

そうして会いに行った子どもの中には、プロ野球選手になった少年もいる。西武ライオンズの相内誠だ。互いにプロ野球選手として再会した時、今江は相内に「たまに施設に顔出してるんか?」と声をかけたと破顔した。

こちらがシーズンの辛い思い出からオフの活動まで、次々と質問を投げかけるも、すぐに意図を汲み取るかのように、率直かつ明快に語ってくれる。

バッターボックスの今江は、打席ごとにアプローチを変え、スイングも変えているという。相手の球を的確に捉えるために。機転の良さは、そこかしこに滲む。

今江は、プロ野球選手としての資質を磨き続け、フィールド内外で使命を全うすることに余念がない。成熟した34歳。選手としても、人としても、“ロールモデル”だ。

松山ようこ

松山 ようこ

フリーランス翻訳者・ライター。スポーツやエンターテイメント関連コンテンツの字幕翻訳をはじめ、Webコンテンツ、関連ニュース、企業資料などの翻訳や制作を請け負う。J SPORTSでは、主にMLBや侍ジャパンのほか、2015シーズンより楽天イーグルスを取材し、コラムやインタビュー記事を担当。野球の他にも、幅広くスポーツ選手はじめ著名人を取材。Twitter @yokobooboo

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