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帰省中のお客様で賑わうナゴヤドーム。8月12日、14日、最終回ナゴヤドームのスタンドは連日悲鳴とため息にあふれた。
9回1点リード。逃げ切り失敗。又吉、ロドリゲス、鈴木博の登録抹消。新聞紙面にはストッパー不在の文字が躍る。開幕から中継ぎ陣で1軍リリーフを守っているのはベテランの岩瀬だけとなった。
世間話をするような温度でふと、荒木雅博に聞いてみた。「どうするべきか?」この答えに思わず納得をしてしまう。
荒木は腰をおろし、思いを語ってくれた。
「9回、投手が打たれて負けた。そこだけ見れば投手が悪いって事になるけど、はたしてそうかなと思う。今、うちは1回から9回まで取るべきアウトを取ってきているのか。無駄なランナーを残したり、出したりしていないのか。野球は必ずしわ寄せがくる。野手にだって責任はありますよ」。
さらに続ける。「野手だって9回1点リードはキツイよ。でも、だからこそ攻めた守備をしないといけない。1点を守ろう守ろうって姿勢が強すぎる結果、安全に打球を捕ろうとする。はっきり言って臆病ですよ」。
「みんな、9回臆病に守っている。結果、先頭打者に内野安打を許したり、2塁でアウトにするべきを1塁に投げたり…。初回からの細かい綻びが9回に返ってくるんです。野球はそうできていると思う」と話した。
奈良原内野守備走塁コーチはこう話す。「みんな、9回緊迫した状況でエラーはしたくない。だから大事に行くのは分かる。気持ちも守りに入るが、打者走者の足の速さを考えれば、もう1歩前で勝負してもいい場面や、内野安打でも1塁なら、エラーでも1塁。だったら攻めて守備してほしいと思う時もあったね」。
「細かいミスは勝てば目立たない。今の西武がそう。僕がいた時は失策の多さを責められたよ。それはしょうがない。でも今年の西武は(失策数は8月16日現在パリーグ最多)それが隠れるでしょ。チームが負けるとそこから原因を逆算して、“たられば“が始まるのが野球です。それは評論家の方に任せますよ」。
「我々現場は勝っても負けても、ベストのプレーを追求しないといけない。まずいプレーも勝ったから良しとはしない。福田、亀澤、周平、京田、細かいミスは沢山あります。それを彼らがどう消化していってくれるかです。一番まずいのは、負けた矛先を選手が他人に向けだした時です。そうなるとチームはバラバラになるから」。
荒木は語気を強めて言う。
「強かった時は、谷繁(元監督)さんなんかに、本気で怒られたよ。試合中グランドで怒鳴られた事もあった。試合後のロッカーで投手が怒鳴られている時とか怖すぎて入れない時もあった。当時はそこまで怒らなくてもと思っていたけど、今思えば、俺達はそうやって強くなってきたなって思う」。
「それはすべて本気で勝ちたいって思いなんですよ。マジでへこんで、そっから何度も這い上がってきたなって。キツイ言い方になるかもしれないが、僕が思う事は言おうと思う」。
ドラゴンズの黄金期、ナゴヤドームは鉄壁の籠城だった。相手チームは1点を取るのに必死だった。何よりも次の塁が簡単に奪えなかった。それくらい当時のドラゴンズに隙はなかった。
昔を語ってもしょうがない。しかし、必ずヒントは眠っている。そして少なくなったが、その時代を知る荒木雅博がいる。
まだ遅くはない。後輩達は荒木の言葉に耳を傾け、本気でへこんでもいい。そこからまたドラゴンズは強くなるはずだ。
森 貴俊
1976年愛知県出身。東海ラジオ放送スポーツアナウンサー。ドラゴンズ戦中心のガッツナイターをはじめJリーグ、マラソン等スポーツ実況を担当。原点回帰を胸に、再び強き竜の到来を熱望する43歳。日々体力の衰えを感じるがドラゴンズへの喜怒哀楽は衰え知らず。今年もマイクの前で本気で泣いて怒って笑います!
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