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近年の都市対抗野球はプロ野球経験者の活躍が目立っている。
例えば、トヨタ自動車が2016年の第87回大会を制したとき、正捕手を務めた“新入社員”がセ・パ2球団で7年のプレー経験を持つ細山田武史だった。
純粋な戦力として、若手選手にお手本を示す“選手兼コーチ”として、様々な人材が社会人球界に招かれている。
かつてプロ野球と社会人野球の間には、人材の復帰を禁じる“壁”があった。1961年から30年以上に渡って、関係が断絶していた。
しかし、1999年からは元プロ選手の社会人野球チーム入りが、1チーム2選手までを条件として認められている。シダックスを指揮した野村克也氏など、指導者としても元プロの人材が社会人野球に関わってきた。
昨年に続いてベスト8入りを果たしているJR西日本は、特に元プロの活躍が目立った。
JR西日本で投手陣の「柱」を任されているのが元・横浜DeNAの加賀美希昇。29才、187センチ・92キロの大型右腕だ。
1回戦のJR北海道硬式野球クラブ戦は、先発として9回途中まで自責点1と好投し。2回戦の東芝戦もリリーフとして3イニングを締めた。
また、同チームは元中日の藤沢拓斗も3番・3塁で起用され、勝負強い打撃で既に3打点を記録している。
1回戦でそのJR西日本に敗れた、JR北海道硬式野球クラブも、元・オリックスの佐藤峻一、元・東北楽天の武藤好貴が初戦で登板していた。
新日鐵住金鹿島は20日の2回戦で敗れたが、伊藤拓郎(元・横浜DeNA)、玉置隆(元・阪神)の継投で強豪・JR東日本を1点に抑えた。
伊藤は帝京高校1年夏の甲子園で衝撃的なデビューを飾ったものの、そこからフォームを崩していた苦労人の右腕。そんな彼が独立リーグを経て脱皮し、好投を見せている姿は感慨深かった。
今大会の出場チームには「元プロ野球」の監督が2人いる。創部以来初のベスト8入りを果たしたセガサミーは、1995年のパ・リーグ打点王でもある初芝清監督(元・千葉ロッテ)が率いている。
日本新薬の監督を務める吹石徳一監督は「江夏の21球」「10.19」を経験した元猛牛戦士。タレント吹石一恵さんの父、福山雅治さんの義父でもある。
初芝監督率いるセガサミーは、選手にも元プロが2人在籍している。元・横浜DeNAの赤堀大智はクリーンアップを任され、元・読売ジャイアンツの田中太一も21日の2回戦でリリーフ登板した。
大物選手としては、新日鐵住金かずさマジックの渡辺俊介(元・千葉ロッテ)、日本通運の武田久(元・北海道日本ハム)が飛び抜けている。今大会で2人の登板はなかったが、コーチとしてそのキャリアを生かしている。
新日鐵住金かずさマジックは2回戦で大阪ガスに敗れたが、NPBで9年のキャリアを持つ俊足巧打の外野手・松本啓二朗が3番レフトで起用されていた。
細山田捕手が在籍するトヨタ自動車は21日の第2試合で敗れた。しかし、対戦相手のJR東海は、元中日ドラゴンズの中田亮二内野手が主砲を担っていた。
今大会のベスト8のうち、JR西日本、セガサミー、JR東海の3チームで「元プロ」がプレーしている。都市対抗野球の戦いは、もはや彼ら抜きで語れない。
大島 和人
1976年神奈川県で出生。育ちは埼玉で現在は東京都町田市に居住。早稲田大学在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れた。卒業後は損害保険会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。現在はサッカーやバスケ、アマチュア野球など多彩なボールゲームの現場に足を運んでいる。Twitter(@augustoparty)
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