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昨シーズンオフ、ドラゴンズの3人の若手投手に期待が寄せられていた。誰もがこの3人にチームの未来を見ていた。1人足らない…。
鈴木翔太は今、苦しんでいる。柳裕也、小笠原慎之介は開幕からローテを掴み、現時点でその椅子を掴み続けている。昨年5勝をマークした鈴木翔太も当然その椅子に座ってくれるだろう。そう期待していた。
鈴木翔太は「キャンプ後半から感じていた。思った以上にストレートが走ってこない…。オープン戦前から焦りはありました。今も自分の真っ直ぐではない」と話す。
4月28日、ナゴヤ球場ウエスタンリーグ、ソフトバンク戦。先発マウンドに立ったのは鈴木翔太だった。1軍はこの日からゴールデンウィークの9連戦。先発の数が1人足らない状況。
実はこの日の登板は、1軍9連戦の9戦目、5月6日の甲子園球場、阪神戦の切符がかかっていた。結果は3回0/3 8安打6失点 課題の四死球が4個、1軍切符は支配下登録されたばかりのライデル・マルティネスに渡った。
鈴木翔太は「四球が指摘されてしまうんですが、ストレートなんです。球速ではなくキレが出てこない。特に低めのゾーンのストレートが全然走ってくれなくて…」。
「ファールがとれないんです。だから空振りも取れない。カウントが整わず追い込めない。苦しいカウントになり、四球を与えてしまう。悪循環ですね」。
なぜストレートのキレが出ないのか、原因の一つは今年試みたマイナーチェンジにあるという。
鈴木翔太は左足をインステップ気味に踏み出す。左足の内転筋に壁を作るイメージで上半身に力を伝える。去年はこれが成功していた。しかし欠点もある。踏み出した所からラインが内よりになる分、どうしても制球に無理が生じる。
「歩幅の6歩半は変えていません。真っ直ぐ踏み出すフォームは、どうしても壁ができない感じがして。力が上手く上半身に伝えられない。そうこうしていたら、今度は無意識のうちにアウトステップになってきてしまって…」。
苦悩のメカニズムを明かしてくれた。しかし逆を言えば、トンネルの出口は一つしかない。光の指す方向は見えている。ストレートの改善だ。
鈴木翔太は「僕の場合、精密なコントロールはない。真っ直ぐのキレが戻れば、ファールが増える。同時に空振りもついてくる。カウントも有利に運べる」。
「だいたい変化球のキレも、ストレートに比例してくるんです。インステップに戻す選択肢は今のところないです。真っ直ぐを磨くしかないと思っています」。
柳、小笠原がローテで回る中、鈴木翔太の目にはどう映っているのか。「考えないです。悔しさはありますが、それを見ても僕のピッチングは良くならないですからね」
“日本刀のようなキレ”。去年そう比喩された鈴木翔太のストレート。再び空気を切り裂く直球が1軍に戻るその日まで、鈴木翔太は鍛冶職人のように毎日鉄を打つ。
森 貴俊
1976年愛知県出身。東海ラジオ放送スポーツアナウンサー。ドラゴンズ戦中心のガッツナイターをはじめJリーグ、マラソン等スポーツ実況を担当。原点回帰を胸に、再び強き竜の到来を熱望する43歳。日々体力の衰えを感じるがドラゴンズへの喜怒哀楽は衰え知らず。今年もマイクの前で本気で泣いて怒って笑います!
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