【広島好き】キュリオスと野球と背番号「11」

日本橋のランチタイム、唐揚げを頬張りながらサラリーマン達が盛り上がっていた。

「ヤクルトはさー、ブルペンキャッチャーを戻すほど足りないし、巨人も生え抜き野手がけっこうヤバくないか。俺、実は『どすこい』に期待してるけど！」

「話題があるだけいいじゃん。西武のスレッドなんてさ、この時期ほぼ更新されないぜ…」。

1・2月は意識しなければなかなか入ってこなかった野球の話題が、勝手に入ってくるようになってきた。開幕まで“もういくつ寝れば”になったのだと実感が湧いてくる。

オープン戦の観戦にはなかなか行けなかった。野球に行けない時間をごまかす、といってはなんだが、映画を見たりライブに行ったり、エンターテインメントにふれる時間が増えるのは毎年のこと。

つい最近は、シルク・ド・ソレイユの30周年を飾る「キュリオス」を見に行った。キュリオスは、「11:11」の1分間の物語。欧米では11時11分が“願いが叶う時間”と言われているらしい。お台場に特設されたテントの中は、POPやグッズ、会場のいたるところに11が並んでいた。

その数字に囲まれ、もう頭の中はすっかり野球脳になってしまった。カープ好きとしては、福井優也の入籍日の「11.11」が真っ先に浮かぶ。日本球界からいなくなってしまった二刀流の「11」、逆に戻って来た巨人の「11」も頭をよぎる。数字のパワーはすごい。

そんな中でも、最も強く思い浮かべてしまう1人の投手がいる。楽天イーグルスの背番号「11」、岸孝之だ。

【楽天好き】みたいな内容になりそうだが、そうではない。わたしは岸の事を何にも知らない。唯一知っていること、それは「カープに勝ったことがない」ということだけ。

◆カープに勝ったことがない岸孝之

3月18日のオープン戦、静岡県は草薙球場、カープの先発は大瀬良大地、楽天は岸だった。岸の好投はもちろん、オコエ瑠偉の好守備、ディレイドスチールなど、足でかき乱され、4-5で負けてしまった。

9回に見事な追い上げはあったものの、前日に続き2連敗という結果でトボトボと肩を落とす。昨年の3月も先発・岸に負けた事を思い出しながら家路についた。

オープン戦は公式記録にはならないし、シーズンと比べあまり覚えていないことが多い。だが、カープが岸に負けるということに慣れていないため、オープン戦といえどもインパクトがかなり強い。

岸は西武ライオンズ時代に10球団、そして昨年楽天イーグルに移籍して古巣に勝利し、11球団に勝利している。全球団勝利に王手である。残る1球団が、広島東洋カープ。

岸が初めてカープと対戦したのは、2009年の5月25日。カープは現・巨人の大竹寛が勝利投手で岸が負け投手。

その時の西武には、メジャーに行く前の中島裕之、巨人に行く前の片岡治大がいたし、何よりも岸は2007年の入団から2年連続で2桁勝利をしており、5月の時点ですでに6勝0敗と絶好調だった。

次は翌年の2010年5月24日、エリック・スタルツという、3者連続被本塁打というインパクトを残し、1年で広島を去った左腕の2勝目だったが、それまで7勝もしていた岸は2敗目。

2012年5月30日には、「赤ハンカチ」齊藤悠葵がプロ最後の勝ち星となる、その年の2勝目を掴んだ。岸はその年、11勝をあげているのに、カープは長年のBクラス真っ最中だったのにも関わらず。

そして、2013年6月8日、2015年6月11日、楽天に入団した昨年6月11日。岸vs.カープの過去6試合、岸に勝ち星がつくことは一度もなかった。

今年12年目の岸孝之、11年間の勝利数はなんと111勝だ。11年で111勝できる投手なんてなかなかいない上に、その111勝の中にカープが1勝分も入っていないということは何とも誇らしいことだ。

背番号「11」が11年で111勝。勝利球団が11球団。キャンプの目標は「特にありません」とクールな岸だが、クールな表情の奥底ではもしかしたら大記録への想いをメラメラと燃やしているかもしれない。

11:11どころか、こんなにも1が並んだら、願い事が叶うパワーはとんでもないんじゃなかろうかと不安になってくる。

プロ野球史上たった17人しかいない12球団勝利という大記録の更新を、カープがどうか阻止してくれますようにと、「11:11」にお願いするしかない。