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「世界最高峰のバレーボールリーグ」を目指し、当たり前のことを確実に遂行する。SVリーグ 競技運営グループ 高田一慶ダイレクター
バレーボールコラム by 大島 和人FIVB本部の会議に出席する高田一慶ダイレクター
大同生命SV.LEAGUE(SVリーグ)は2024年10月に男子10チーム、女子14チームで開幕する。昨季までのV.LEAGUE(Vリーグ)がエンターテイメントとして、地域に根ざした存在として、大きく進化したものになる。
リーグ本体も当然ながら大きく変容している。大河正明チェアマンはプロバスケットボール「Bリーグ」の元チェアマンで、Jリーグでも手腕を振るった人物だ。他にも他競技の経験を持つ改革人材が続々とバレー界に足を踏み入れている。
一方で長くバレーボールを、Vリーグを支えてきた人材も新リーグを引き続いて支えていく。高田一慶氏はバレーボール界に足を踏み入れて18年目で、これまで競技運営を中心に事業、プロモーション、スポンサー営業など様々な担当を歴任してきたオールラウンダーだ。2024年7月からは「競技運営グループ」に戻り、新リーグの立ち上げにまつわる変化にも対応している。
今回のインタビューではVリーグに長く関わり、バレーボール界を広く知る高田氏に、SVリーグ開幕に向けた変化の背景、準備、期待を語ってもらった。
―― 高田さんは2007年に日本バレーボールリーグ機構に入っていて、リーグの中でも「古株」です
正直ここまで長くいるとは思ってもみなかったです。 入ったのはVリーグが日本バレーボール協会から独立して1、2年経ったタイミングでした。
元々はバレーボールでなく野球をやっていて、「何かスポーツに関わりたい」と思っていました。社会学部のマスコミュニケーション学に行ったら、マスコミのバイトがいっぱいあって、サンケイスポーツの大阪運動部に4年いました。
スポーツとのいろいろな係わり方を教えてもらって、大阪体育大学と早稲田大学の大学院修士課程でスポーツマネジメントを学びました。インターンで日本トップリーグ連携機構に入り、修士課程を出るときに、いくつか競技団体の方から話をいただいて、Vリーグを選びました。
いつかアカデミックの世界に戻って、教える側に立ちたいと当時は考えていました。とはいえ、スポーツマネジメントは机の上だけでなく、現場を知るのが一番だと思ったんです。バレーボールがプロ化をしてくプロセスを体験したら、それは誰にもない強みになるとも考えました。
―― それから17年が経ちました
そうです(笑)。今でこそ、SVリーグは30人ほどいますが、当時のVリーグは職員が4人だったと記憶しています。昔は1人が広報も、事業もやる感じで、私が入ったころは企業チームが中心の時代でした。時の会長が改革を唱え、リーグの事業化を目指して近づけていくけれど、実際は一進一退を繰り返してきたのが、今までのバレーボール界だと思っています。
実は2018年の新リーグ化のときに言っていたことと、大河チェアマンが今、言っていることに大きな差はありません。ただ、今回はライセンス制度をピシッと引いて、新しく体制を作ってガバナンスを強化した。「決めたらやり切る」のが、今回の改革だと考えています。
いろいろありますが、まずはリーグをうまく回すためのレギュレーション整備です。試合をやるにはアリーナを確保して、カーディング(対戦カードや日程、会場)を決める必要があります。審判も派遣する必要があるし、チャレンジシステムや競技に関わるツールを選定して用意をすることも必要です。
もう1つは、10月11日の開幕戦(サントリーサンバーズ大阪vs.大阪ブルテオン)、チャンピオンシップファイナルのような、リーグ主管でやる試合の運営も我々の担当です。
―― 難易度の高い業務はありますか?
開幕に備えレギュレーション整備に力を入れる
まず、今シーズンから国際大会に合わせたコートレイアウトを採用したので、これまでとベンチの位置が逆になります。すると、今までと逆にしたので、審判の動きが変わってきます。セカンドレフェリーが選手交代に対応していたのが、ベンチがファーストレフェリーの側にいってしまうから、もう1人必要…という話になります。
スタッツを取る仕組みも新しくなるのですが、審判の動きと連動しますし、クラブに新しい仕組みを理解してもらわないといけません。回線の準備も必要になります。新しく始めることにはヒューマンエラーも起こりがちですし、システムエラーも多分あるでしょう。
それが起こったときに、どうトラブルシュートしていくのかを想定して、事前に落とし込んでおく必要があります。トラブルがあったら元に戻る、つまり、テクノロジーを使わず運用するしかないのですが、(試合そのものに影響が出ないために)どう「トラブった感」が出ないように処理していくかに頭を悩ませています。
―― バレーボールはサッカーやバスケットボールと違って、「代表のシーズン」「クラブのシーズン」がはっきり別れています。とはいえ、条件のいい会場は、他のイベントで埋まることも多く、試合数や日程、会場の調整は難しかったと思いますが?
国内シーズンをやれる期間に、レギュラーラウンドの44試合をはめ込みました。さらに天皇杯・皇后杯もあります。チャンピオンシップまではめ込むと、土・日がすべて埋まってしまいます。各クラブに「会場を取ってください」とお願いするわけですが、取れない週が当然出てきて、きれいにははまりません。我々でそこを調整するパズルみたいなことをしています。
―― Jリーグは通称「日程くん」というソフトがあって、条件を入力すると自動的に答えが出る仕組みを導入しています
大河チェアマンが推進していて、私も話は聞いています。今季は特に端境期でした。今の時期は、もう来シーズン(2025-26シーズン)の会場を取り始めているのですが、今季は新しいリーグが始まるタイミングで、4月になるまで男子も女子も参加チームが決まらず、試合数が分からなかった。
会場を多めに抑えてもらったのですが、うまくはまらなかったところもあります。来季以降はカーディングもやりやすくなるはずです。
―― SVリーグになって、競技面で「ここが新しくなる」というポイントはどこですか?
登録ルールです。従来は外国籍選手が1名、アジア枠選手が1名しかチームに登録できなかったので、出られる外国籍選手は最大2名でした。2024-25シーズンからは外国籍選手のベンチ入り登録は人数の制限がなくなります。ただし、コート上の選手は、外国籍選手が2名、アジア枠選手は1名というルールです。
これは力のある外国籍選手が日本に来てくれるきっかけにもなっています。一方でルールを運用、試合を運営する側から見ると、オン・ザ・コートの人数をコントロールする必要が出ます。
同時にコートに立てる外国籍選手は2名、アジア枠を含めても3名ですが、今まで登録とオン・ザ・コートの人数が一緒だったので、審判はそこを見る必要がなかった。今後はそこをチェックする必要が出ます。
―― そのルール改正の狙いを教えて下さい
日本人選手が、普段から外国籍選手の多くいる中で練習し、世界レベルを普段から経験できるところが大きいと考えています。試合では日本人選手の活躍する機会も作って、いいとこ取りをしようというルールです。
2028-29シーズンからはアジア枠を除く外国籍選手は3人に増えます。外国籍選手を上回るような日本人選手が、出場機会を自らもぎ取っていくことで、より強化につながると思うのですが…。私はバレー競技をやったことがないので、偉そうには言えないです(苦笑)。
―― 高田さんの立場で、SVリーグをこうしたいという夢はありますか?
当然、「世界最高峰のリーグ」という目標があります。一方で「当たり前のことを確実に遂行する」のが、競技運営グループです。スポーツはゲームが商品ですが、そこのクオリティはコントロールできません。
応援しているチームが大敗することもあるし、そもそも応援しているチームが二分されているわけですから、全員が満足できるクオリティはありません、だけど「そこ以外」をいかに輝かせるが僕らの仕事です。その大前提が安心安全です。選手を守るし、お客さんも守る環境を作っていくことを、まず絶対やらないといけません。
―― 2007年からバレーボール界にいらっしゃる高田さんから見て、大河さんがリーグに入って、7月にはチェアマンとなり、SVリーグへ切り替わる中で「ここは違う」という部分はありますか?
サッカー、バスケットボールから来られた方と意識の差はすごく感じます。ガバナンスの効いた組織で育った人たちなので、彼らもギャップを感じていると思います。
サッカーやバスケットボールの進め方と、これまでのVリーグの進め方の「良い」「悪い」は別にして、良いと感じる部分は彼らから学んでいます。大切なことは、「議論すべきことは議論を深める」ことと、「スピード感をもって決めること」を両立させることだと思うので。
―― 新リーグが成長していく予感は持っていますか?
はい、持っています。逆にこれが今まで通りの失敗に終わったら、もう2度とドラスティックに変えることはできなくなる…、そのくらいの覚悟でやっています。
文・取材:大島和人
大島 和人
1976年神奈川県で出生。育ちは埼玉で現在は東京都町田市に居住。早稲田大学在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れた。卒業後は損害保険会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。現在はサッカーやバスケ、アマチュア野球など多彩なボールゲームの現場に足を運んでいる。Twitter(@augustoparty)
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