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高橋汰地
誰がチャンスを作ったか。パスは誰から誰へ、キックを蹴ったタイミングと、追っ手の走り出しも、映像を戻して確認したくなる。
そんなトライシーンがいくつも見られた。
9月15日(日)に秩父宮ラグビー場でおこなわれた『アサヒスーパードライ パシフィックネーションズカップ2024』の準決勝で、日本代表(プールB/1位)が快勝した。
プールAで2位となったサモア代表から7トライを奪い、49-27と快勝した。
J SPORTS オンデマンド番組情報
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ラグビー アサヒスーパードライ パシフィックネーションズカップ2024 決勝 (09/21)
配信期間 : 2024年9月21日午後6:35 ~
先制トライは前半6分にCTBディラン・ライリーが挙げた。
相手ボールのラインアウトをLOワーナー・ディアンズがカットして始まった攻撃。右に展開し、FB李承信が転がしたグラバーキックを背番号13がつかみ、インゴールに入った。
立川理道
この日の日本の布陣は、SOに立川理道、FBに李。2人の司令塔がいることでボールがよく動いた。
そして、全員が同じスペースを見て動けた。
いくつもあったトライの中でベストトライは後半4分のものだったか。アタックの始まりは、自陣ゴール前のターンオーバーだった。
相手ボールを奪い取ったのはCTBニコラス・マクカラン。コミュニケーション能力が高く、周囲と連係して動く選手だ。この日も、攻守に幅広く動いていた。
マクカランのボール奪取を号砲に、全員で攻めに転じたから90メートル近くを攻め切れた。
SH藤原忍からのパスを受けたFB李が、ディフェンスの裏にグラバーキックを転がす。WTB長田智希がチェイスしてボールを手にする。ハードタックルを受けながらもつないだ。
下川甲嗣
そのパスを受けたのは、キックを蹴った李だ。ワンプレーで終わらず、勤勉に走り続けていた。
李は、サポートのFL下川甲嗣へパスを送る。背番号7はスピードに乗って走り、追いすがるディフェンダーのタックルをハンドオフで落とすスキルも見せてインゴールに入った。
このトライは長い距離を、ブレイクダウンを作ることなく攻め切ったが、この日の日本代表は敵陣深くに攻め込んだ時のスコア率が高かった。
チャンスを作っても得点できなかったこれまでの課題がこの日は見られなかった。好機にプレーの精度が高く、コミュニケーションが取れていた。
アサヒスーパードライ ラグビーパシフィックネーションズカップ 2024
【ハイライト動画】サモア vs. 日本
35-13とリードを広げた先のトライ(後半6分)も効果的だったが、試合の流れの中で大きかったのは前半終了間際のトライだったか。
21点を先行した後、13点を返されて得点差は縮まっていた。
それを28-13とした。
このトライには、現在の日本代表が掲げる超速と、日本ラグビーの巧みさが散りばめられていた。
李承信
トライスコアラーはFB李。左ラインアウトから始まった攻撃を、最終的に6フェーズ目で左中間に攻め切った。
灼熱の中、疲れも出る時間帯。しかし、果敢にボールを動かした。
CTBライリーをタテに走らせてクラッシュした後、順目に大きく展開して右サイドへ。そこからの振り戻しのアタックでFWのボールキャリアーが何人も前へ出た。
一人ひとりが持ち味を出す。パワフルに出る者。ステップを踏んで前へ出る者。そして、すべてのブレイクダウンの質が高いから相手防御が減っていった。
日本の技を出たのはラストパスだ。SO立川は、ためを作った後、柔らかな軌道で李に放った。
人数で大きく上回っていたから、相手はインターセプトを狙っていたかもしれない。あるいは、苦し紛れの詰めのディフェンスか。しかし、僅かな間(ま)が効いて、ディフェンダーの足は止まった。そして、その頭上を楕円球が越えていった。
試合後のエディー・ジョーンズ ヘッドコーチは満面に笑みを浮かべていた。「チームをステップアップさせる試合だった」と評価し、特に「風上の前半、よくゲームをコントロールした」と愛でた。
カナダ、アメリカと、実力的に戦いやすい相手との対戦が続き、そこで成功体験を得てこの試合を迎えられたことも大きかったように思う。
9月21日(土)の決勝の相手、フィジーは強敵も、サモア戦でさらに高めた自分たちのスタイルと、体感したハードヒットが必ず生きる。
次戦を楽しみに思わせる80分だった。
文: 田村 一博
田村一博
前ラグビーマガジン編集長。鹿児島県立鹿児島中央高校→早稲田大学。早大GWラグビークラブでラグビーを始める。ポジションはHO。1989年、ベースボール・マガジン社に入社。ラグビーマガジン編集部に配属される。1993年から4年間の週刊ベースボール編集部勤務を経て、1997年からラグビーマガジン編集長に就く。2024年1月に退任し、現在は編集者、ライターとして活動。
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