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ワーナー・ディアンズ
80分間、圧倒し続けられたらもっとよかった。
しかし、アウェーでのテストマッチだ。そう簡単に勝てることなんてない。今回もそうだった。
8月25日にバンクーバーでおこなわれたアサヒスーパードライ パシフィックネーションズカップ 2024のカナダ×日本は、現地のファンが喜ぶシーンも多くある試合展開となった。
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ファイナルスコアは55-28。日本の完勝と言っていい数字が並ぶ。
試合開始のキックオフから4 分後には先制トライを奪い、前半31分までに38-0とリードを広げ、38-7でハーフタイムを迎えた。
後半はお互いに3トライずつを挙げ、得点は21-17とカナダが上回った。
ミスや反則から攻め込まれてトライラインを越えられ、チャンスを逃すことも多くあった。
日本はキックオフ直後から、『超速ラグビー』を実行した。自陣から攻め、ボールを左右に大きく動かしながら、前へ、前へ。相手の反則を誘い、あっという間に敵陣深く攻め込んだ。
ラインアウトからのアタックを仕上げたのは、この日が初キャップだったWTBマロ・ツイタマだった。
7分にもラインアウトから攻め、LOワーナー・ディアンズインゴールに入った。
ブレイクダウンのクオリティーが高く、高速アタックを重ねられる序盤。日本は相手に関係なく、自分たちのスタイルを発揮できる。
それは、この試合でも実証された。
14-0とリードした後、ハンドリングミスなどが重なり、停滞した時間帯があったものの、日本は20分過ぎからの約10分で3トライを追加した。
ターンオーバーから一気に攻め切ったトライもあれば、連係をとって攻め切ったシーンもあった。
後半29分からピッチに立った立川理道主将は、ベンチから見た前半について、こう話した。
「前半は一人ひとりの役割も明確で、相手のフィジカリティーに対してしっかりと前に出ることができていました。自分たちのやりたいラグビーができたと思います」
【ハイライト動画】カナダ vs. 日本|アサヒスーパードライ ラグビーパシフィックネーションズカップ 2024
テストマッチ初先発で、軽快な球さばきでテンポを作ったSH藤原忍は、FWの働きを称えた。
パワフルで大きなFWを持つカナダとの一戦に向け、チームはフィジカル面の強化に注力してきた。
「FWがしっかり前に出てくれた。そのお陰で自分の持ち味も出せたと思いますし、(SO李)承信とのコミュニケーションもうまくとれました」と体感を言葉にした。
ハーフタイム前にハンドリングエラーから1トライを返された日本は、後半に多くのミス反則をした。
結果、攻め込まれ、攻め切れない。前半の貯金が効いて勝敗自体に影響はなかったものの、今季ここまでのテストマッチでも見られた後半の脆さがこの試合でも出た。
藤原は「前半の終盤に集中が切れてミスが多くなってしまい、我慢しきれずに反則してしまったシーンもあった」という。
攻める意識が強い分、ミスにつけ込まれたときの対応に苦しんだ。少ないフェーズで得点されることもあった。
エディー・ジョーンズ ヘッドコーチ(以下、HC)は、「前半に関しては我々が目指しているラグビーがうまくできていたと思います。フィジカル面(の強さ)も見せられましたし、ボールを動かし続けることもできていた」と、自分たちのスタイルを遂行できたときのパフォーマンスを評価した。
問題はどの試合でも、全開で攻めることによる疲れと集中力の低下。相手が対応策を施してきた際の対処だ。
後半について指揮官は、「若い選手が多いこともあり、前のめりになるシーンが多く、ボールコントロールができないシーンが多く見られた」と振り返った。
手放しで喜べる試合ではなかったが、勝利がチームを前進させるいちばんのエナジーになることも事実だ。
現体制初のテストマッチ勝利について、ゲームキャプテンを務めたHO坂手淳史は、「ミスが増えて相手に流れを渡すこともありましたが、若いチームにとってこの勝利がいい勢いになれば。と思います。反省しながら次へ、いい準備をして進んでいきたい。あの試合(このカナダ戦)から流れが変わったよね、と言えたらいいですね」と、多くの経験を持つ者として落ち着いていた。
ジョーンズHCが繰り返し言うように、毎試合成長は続けている。
勝利がそのスピードを高めるか、9月7日に熊谷(埼玉)でおこなわれるアメリカ戦で確かめたい。
文: 田村 一博
田村一博
前ラグビーマガジン編集長。鹿児島県立鹿児島中央高校→早稲田大学。早大GWラグビークラブでラグビーを始める。ポジションはHO。1989年、ベースボール・マガジン社に入社。ラグビーマガジン編集部に配属される。1993年から4年間の週刊ベースボール編集部勤務を経て、1997年からラグビーマガジン編集長に就く。2024年1月に退任し、現在は編集者、ライターとして活動。
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