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会見に臨むエディ・ジョーンズHC
7月23日(火)、東京・日本ラグビー協会で、6月から7月にかけて行われた男子15人制日本代表活動の総括ブリーフィングが実施された。登壇者は日本代表チームの永友洋司ディレクターとエディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ)の2人だった。
永友洋司チームディレクター
冒頭、永友チームディレクターは「試合の結果に関しては、勝利することが最大の目標だったが、その目標に対して我々が望むべき結果ではなかった。ただ、2027年オーストラリアワールドカップに向けて、エディーHC、コーチ陣はよくやってくれている。KPIを出して評価していかないといけないが、エディーが目指すべき方向性は間違っていないと私自身は評価している」と話した。
続いて、ジョーンズHCは「厳しいスタートだったが、チームの方向性については前向きに捉えているし、時間が必要だと思っている。チームを作るには時間がかかる。現在(選手の総キャップ)、200キャップあるが、そのうちの90近くはリーチマイケル。チームとしてまだ始まったばかりだし、それでもチームは十分に力を発揮したと思う」。
「素晴らしい若手選手も育ってきている。FB(フルバック)矢崎由高(早稲田大学2年)が、大学時代に世界のトップクラスのチームとテストマッチを3試合も戦ったことを見れば、その成果はおわかりいただけるだろう」。
「今後30回、40回とテストマッチをこなしたときに、彼がどれだけの力を発揮できるか。彼がどれほどの選手になれるか考えると恐ろしいほど。それに、若いFW(フォワード)陣もいる。イタリア代表戦では少し苦戦したが、彼らにとってはいい勉強になった。彼らも時間とともに成長していくはずだ」。
「結果には失望しているが、チームの方向性には失望していない。時間がかかることはわかっているし、この期間は難しい時間だった。2023年のワールドカップの後、若くないチームであることはわかっていたし、チームを変えなければならないこともわかっていた。チームを変えるということは、若い選手たちを連れてくるということであり、彼らには時間が必要で、指導が必要で、忍耐が必要」と話した。
特にイタリア代表では若いFW陣はいいレッスンになったようだ。「イタリア代表はあまりにも素晴らしく、フロントローがタフすぎるし、彼らのスクラムの組み方に対応できなかった」。
「(日本代表の)フロントローは若い。原田衛は3キャップ。竹内柊平は6キャップ。茂原隆由は3キャップ。それぞれ、50キャップを持つイタリアのフロントローの経験には対応できなかった。だから、それは選手たちが受けるレッスンで、それこそが自分たちが学ぶ唯一の方法」。
「彼らは勇気とタフネスを発揮し、相手がちょっと良すぎるような試合でも粘り強く戦っていた。魔法の粉を吹いたからといって、突然すべてが変わるわけではない。ハードワークが必要だ。どこに向かっているのかというビジョンが必要だ」とジョーンズHCは語った。
イタリア戦後のエディ・ジョーンズHC
ジョーンズHCは、昨年12月に就任すると同時に「超速」ラグビーを掲げた。選手たちのその理解度を聞かれて、「各試合の最初の20分間を見ると、大体において、私たちがどのようにプレーしたいかに対する、選手の理解度は非常に高い」。
「でも、残念ながらプレッシャーがあると古い習慣に戻ってしまうので、やはりできることは、より良い習慣を作ること。これはトレーニングでやっていることで、PNC(パシフィック・ネーションズ・カップ)でもやるつもり」。
「ジャパンで議論の余地のないことの1つは、世界のトップチームに勝つためには、超速ラグビーで集団的なスピードでプレーしなければならないということ。だから、私たちはその道を進み続けなければならない」と先を見据えた。
もう少しメンバーを固定して戦っても良かったのでは?という質問をすると、指揮官は「4年計画だ。最初の1年は才能がどこにあるのか、誰が選手として進歩し続ける適性を持っているのかを見極めたいし、今年は日本にどんなタレントがいるのかを見極めたい」。
「2年目、3年目となれば、もう少し組み合わせを検討するし、4年目はもちろんベストの33人がほしい。しかし、今年はいろいろな組み合わせを見て、選手たちに自分の力を発揮するチャンスを与えていきたい」と答えた。
次の戦いはPNC
6月から7月の活動を踏まえて、PNCに向けての修正点を聞かれると、「ゲームのスタッツを見ると、テストマッチでは7~8つのスタッツで、それに基づいて99%の結果を予測する。我々はキャリーメーターに優れている。アタックは素晴らしい。キッキングゲームを追加する必要があるが、それはほとんど経験を積めばできるようになる」。
「ジョージア代表戦でカードが出たが、我々の規律、ペナルティの数はかなり良かった。一貫してできなかったのは、ボールをターンオーバーされた回数。イタリア代表戦では、イタリア代表の18回に対して、我々は27回もターンオーバーされた。そしてそれが、試合を制する差となった。ラインアウトで7回ターンオーバーされた」。
「その他の重要な点はハンドリングエラーで、イタリア代表戦では9回もボールを相手に渡してしまった。もし、ターンオーバーレートを減らすことができれば、試合に勝つためにもっといいポジションにつけるだろう」。
「それから、もう1つはゴールラインアタックも改善する。相手のゴールラインまで行くと、15人のディフェンダーがいる。流動性が必要だし、もっと動きが必要だ。そのためにはかなり革新的でなければならない」と話した。
8月末から始まるPNCの目標を聞かれてジョーンズHCは「優勝すること。しかし、私たちが見たいのは、チームが進歩し続けること、チームのアイデンティティを持ってプレーし続けこと」。
「そして、セレクションの面でも、私たちにとって重要な時期になる。シーズン終盤には欧州ツアーがある。日本代表にとって大きな試合が3つ(オールブラックス、フランス、イングランド戦)もある。だから(大事な試合に対して)それに少しでも近づけるようにしたい」と先を見据えた。
トゥールーズに移籍したSH(スクラムハーフ)齋藤直人はPNCに招集せず、少しケガのあるというキャプテンFL(フランカー)リーチマイケルもPNCには参加しない予定だという。
強豪に勝つにはどのくらいの時間が必要かと聞かれ、ジョーンズHCは「それはわからない。このような若いチームを作るときに一般的に言えることは、チーム一丸でハードワークすると、どこか試合でブレイクスルーを起こす」。
「私の経験では、2012年のウェールズ代表戦がそうだった。あの試合は突破口となる試合だった。計画なんて立てることができない。ただ、ハードワークを続けて、信念を貫き、適切な選手を選び、その突破口を開くだけです。その時は必ずくると思う」と前を向いた。
選手、コーチ陣は3週間ほどオフを経て、再び宮崎で合宿を行い、8月25日(日本時間26日)のPNC初戦のカナダ代表戦に備える。ターンオーバーの回数、そしてゴール前のアタックの改善をし、PNCでは全勝で優勝することができるか。
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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